五十嵐大介『そらトびタマシイ』

そらトびタマシイ (アフタヌーンKCデラックス)そらトびタマシイ (アフタヌーンKCデラックス)
(2002/08/23)
五十嵐 大介

商品詳細を見る


 五十嵐大介著『そらトびタマシイ』(講談社アフタヌーンKCデラックス/920円)読了。

 著者が1990年代末から2002年にかけて発表した4つの中編を中心とした、ファンタジー作品集。
 『遠野物語』を意識して描かれたオールカラーの掌編「産土」と、93年アフタヌーン四季賞の大賞を受賞した幻のデビュー作「未だ冬」も併載されている。

 「未だ冬」だけは習作の域を出ていないが、ほかの作品はみなすごい。
 とくに、中心となる4つの中編――「そらトびタマシイ」「すなかけ」「熊殺し神盗み太郎の涙」「Le Pain et le chat」――は、いずれも甲乙つけがたい傑作揃いだ。

 五十嵐にとって初の連載となった『はなしっぱなし』は宮沢賢治を彷彿とさせる連作幻想掌編であったが、本書の4つの中編は、『はなしっぱなし』所収の諸作をさらにふくらませてスケールアップした感じ。グロテスクと美の間を往還する“イマジネーションの奔流”に、身をまかせるような心地よさが味わえる。

 マンガの域を超えた精緻な描き込み、自然への畏敬を根底に置いた怪奇と幻想のストーリー、読み終えたあとにずしりと胸に残る哀切さ……日本にだけとどめておいてはもったいないほどの才能のほとばしりがある。これはもはやアートであり文学だ。

 『魔女』や連載中の『海獣の子供』を含めて、これまで読んだ五十嵐作品のうち、私は本書がいちばん好きだ。

 五十嵐大介に、『遠野物語』のオールカラー完全劇画化をやらせてみたい。きっと、ものすごいものができるはずだ。


関連記事

トラックバック

コメント

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

ブクログ・MY本棚

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
43位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
30位
アクセスランキングを見る>>