『ヤクザマネー』

ヤクザマネーヤクザマネー
(2008/07/01)
NHK「ヤクザマネー」取材班

商品詳細を見る


 NHK「ヤクザマネー」取材班著『ヤクザマネー』(講談社/1575円)読了。
 2007年11月に放映されたNHKスペシャル「ヤクザマネー ~社会を蝕む闇の資金~」を、番組に登場しなかった舞台裏も含めて単行本化したものだ。

 取材班が、NHKスペシャル「ワーキングプア」を手がけた人たちであるというあたりが、なにやら象徴的。この格差社会の底辺に位置するワーキングプアを通して平成日本を切り取ったスタッフが、こんどは格差社会の頂点にいる裏社会の住人に光を当てたというわけだ。

 本書が扱う「ヤクザマネー」とは、株の世界に飛びかうヤクザ由来の巨額資金のことである。

 1980年代には先端的な少数派だった「経済ヤクザ」が、いまや主流派となった。博打とか、飲食店から取る「みかじめ料」などでしのぐヤクザは時代から取り残された「負け組」で、潤沢な資金と豊富な情報によって株式市場を手玉に取るヤクザこそ「勝ち組」なのである。

 著者たちは、「NHKスペシャル」らしい手間ひまをかけた取材によって、株式市場を蝕む「ヤクザマネー」の実態にじわじわと迫っていく。

 圧巻は、ヤクザ社会とは無縁であったベンチャー企業経営者や元銀行家、元証券マンなどが、ヤクザマネーに群がり、彼らと「共生」している様子が暴かれるところ。

 従来の「企業舎弟」は、もともとヤクザ社会の住人であった者たちがあえて「破門」されるなどして、ヤクザ社会と一般社会を結ぶ役割を担うものである。つまり、ブラックからグレーに身を塗り替えた存在だ。
 しかし、現在ヤクザマネーを市場にばらまく役割を担っている者たちはそうではない。彼らはもともと普通の市民として銀行や証券会社などで働いてきた人たちで、「企業舎弟」とは逆に、ホワイトからグレーへと身を塗り替えた存在なのだ。
 そして彼らは、ヤクザと共生する存在という意味で「共生者」と呼ばれる。

 もともと普通の市民であったがゆえに、警察にも「共生者」についての情報の蓄積はない。彼らが隠れ蓑となっているばかりに、株式市場におけるヤクザマネーの流通経路は非常に見えにくくなっているのだ。

 ヤクザの一人が言う次の言葉が印象的だ。

 「証券市場は、国が用意した賭博場だ。しかも、我々はインサイダー情報を持って、そこに入っていくわけだから、イカサマだよね。イカサマ賭博っていうのは、昔から我々の専売特許なわけよ。だから証券市場っていうのは、新しいシノギであるけれども、昔から慣れ親しんでいる分野と同じなのかもしれない」



 気になるのは、今秋以来の市場の大暴落が、本書に登場する人々の運命をどう激変させたか、ということ。
 株のプロである「共生者」の一人が、ヤクザから「先生」と呼ばれて持ち上げられている様子が、本書には登場する。だが、暴落でヤクザに大損害を与えたなら、もうそんな厚遇は終わりだろう。

「組の金をワヤにしてからに、このオトシマエどうつけるつもりや、おお!」

 ヤクザマネーを操り甘い蜜を吸っているつもりでいた「共生者」たちは、そのとき初めてヤクザの本当の恐ろしさを思い知ったにちがいない。


↑元番組の一部を用いたニュース映像

関連記事

トラックバック

コメント

ぼのさん

町田康の小説は何冊か読んでいますが、どれもたいへん面白いです。「パンクな笑い」に満ちた、誰にも真似の出来ない小説ですね。

オススメはやはりデビュー作の「くっすん大黒」でしょうか。何度読んでも笑えます。

辻仁成も、「海峡の光」とか好きですよ。
  • 2008-12-25│14:44 |
  • 前原 URL│
  • [edit]
こんにちは♪
前原さん、こんにちは

日記の内容と関係ない質問で
すみません

図書館で雑誌プレジデント借りたんですよ
「歴史・時代小説厳選100冊」って
特集があり、
町田康の「パンク侍、斬られて候」って
作品が載ってて、
タイトルがインパクトあり
内容も江戸時代のカルト集団と
独りで立ち向かう侍の話と
書いてあり、面白そうだなと思いました

前原さんは町田康作品、
読んだことありますか?
どういう印象ですか?

私は、同じミュージシャンで
芥川賞作家でも町田作品の方が
辻仁成よりはいいのではないかと
何故か思ってます、ハハ

それでは、また♪

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

ブクログ・MY本棚

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
27位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
22位
アクセスランキングを見る>>