中村圭志『信じない人のための〈法華経〉講座』

信じない人のための「法華経」講座 (文春新書)信じない人のための「法華経」講座 (文春新書)
(2008/09)
中村 圭志

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 中村圭志著『信じない人のための〈法華経〉講座』(文春新書/756円)読了。

 著者は編集者・翻訳家だが、宗教に造詣が深く、『信じない人のための〈宗教〉講義』という著書もある。「日ごろ『宗教』と『非宗教』の間をとりもとうと考えている」(本書「はじめに」)人なのだそうだ。
 
 本書は、『信じない人のための〈宗教〉講義』のいわば姉妹編。「諸経の王」とも呼ばれる法華経について、わかりやすい言葉で書かれた概説書である。
 ただし、すでに山ほどある「法華経入門」とは一線を画するものとなっている。「一般の宗教入門書に繰り返し書かれている平均的主張に対してあえて挑戦するようなことも書いて」(「はじめに」)あるからだ。

 何より、著者は法華経信者でもなければ(たぶん)他宗教の信徒でもなく、宗教学者でもないので、まったくニュートラルな視点から法華経をとらえて“面白がって”おり、だからこそ斬新な内容になっているのだ。

 つまり本書は、無宗教の教養人である著者が、純粋に知的興味から独学で法華経を研究し、「信じない人」の視点から法華経の全体像をとらえ直したものなのである。

 いわゆる「昭和軽薄体」を彷彿とさせるくだけた文体で書かれているあたりも、これまでの生真面目な法華経入門とは異質だ。たとえば、こんな具合――。

 修行などしている資質もゆとりもない迷える一般市民に対しても、法華経は気前よくゴール達成(成仏のこと/引用者注)の保証を与えます。彼らにとっては有難い話だったでしょうが、大乗の菩薩であれ、小乗の声聞であれ、まじめに修行をしている人々は、「おいおい安売りしてくれるじゃねーか」と、それこそ目をむいて怒ったかもしれません(常不軽のように迫害されたとしても不思議はありませんね)
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 神話的大ボラ話がモロに出ているのは見宝塔品第十一です。そこではまず、巨大な宝塔が大地より涌出します。まるでSF映画の一シーンのようです。宝塔の高さは「五百由旬」(最低でも七千キロ以上とのこと)。例によってスケールが巨大ですから、会衆の驚愕ぶりはトレーシー邸のプールからサンダーバード一号が飛び出してきたときの驚きなんてもんじゃありません。太平洋からハワイ島が空中に飛び上がったようなものかな?



 「信じない人のための」とタイトルにあるのは、読者に対するハードルを下げる配慮だろうか。しかし実際には、法華経信者が読んでも面白い内容である。
 むしろ、法華経および仏教全般に関するある程度の基礎知識がないと、著者が随所に仕掛けたユーモアが理解できないと思う。

 ただし、書きぶりにいささかおちゃらけがすぎるところもあり、真面目な法華経信者は「ふざけるな!」と怒り出すかもしれない。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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