池上彰『大衝突』

大衝突―巨大国家群・対決の行方大衝突―巨大国家群・対決の行方
(2008/09)
池上 彰

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 池上彰著『大衝突/巨大国家群・対決の行方』(集英社/1680円)読了。

 米国の凋落、EUの台頭、中国の急速な発展、復活したロシアによる東欧再進出の気配……。大国間のパワー・バランスはいま激変の渦中にある。本書は、先の見えにくい現今の国際情勢を、鮮やかに整理した質の高い概説書である。

 著者は、長年NHKの報道畑を歩んできた(現在はフリー)ジャーナリスト。とくに、ニュースを子ども向けに解説する人気テレビ番組『週刊こどもニュース』のスタッフ兼出演者を、11年間つとめたことで知られる。
 そのことが象徴するように、ジャーナリストとしての著者の身上は徹底したわかりやすさにある。そうした個性は、本書でも十全に発揮されている。歴史・文化・政治・経済といった要因が複雑にからみ合う国際情勢が、高校生にも理解できるほどかみくだいて解説してあるのだ。

 著者は本書で、現在の世界を巨大国家群の「5つの対決」に絞って概観する。中国対日本の「アジアの覇者を掛けた対決」、ロシア対米国・EUの「異質な国との対決」、サウジアラビア対米国の「中東への影響力をめぐる対決」などである。

 「対決」といっても、それは軍事衝突のみを意味するものではない。たとえば、EUと米国の「対決」を展望した章は、ユーロと米ドルのいずれが今後の基軸通貨となるかというテーマを核に論が進められる。

 著者はこの章で、欧州統合運動の歩みを手際よくたどるなど、歴史にも目を向ける。また、経済力競争のみならず、EUと米国の環境政策や社会保障政策の相違などにも触れていく。そこから、EUと米国の「対決」が、グローバルスタンダード制定の主導権争いでもあることが浮き彫りにされていくのだ。

 そして、本書の通奏低音となるのは、「我が国は今後の国際社会をどう歩むべきか?」という真摯な問いかけである。たとえば、中国と米国の「対決」を扱った章には、両国の間に位置する日本の立場への言及が随所にちりばめられている。

 読めば国際ニュースの見方が深まる好著。図版・データも豊富で、理解を助ける。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。54歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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