『風花 kaza-hana』

 
風花 kaza-hana風花 kaza-hana
(2001/08/24)
小泉今日子浅野忠信

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 ケーブルテレビで『風花 kaza-hana』を観た。鳴海章の同名小説を映画化した、相米慎二の遺作(2000年。公開は2001年)。
 
 酩酊状態でコンビニの商品を万引き(ただし、本人は犯意なし)したことから職を追われた文部省のエリート官僚(浅野忠信)と、人生に疲れた場末のピンサロ嬢(小泉今日子)が出会い、女の実家がある北海道へと旅するロードムービー。

 トウの立った風俗嬢を演じる、小泉今日子のうらぶれた雰囲気が素晴らしい。映画の中でタバコ吸いっぱなしなのだが、その吸い方にえもいわれぬ風情がある。小娘にはけっして出せない「疲れた色気」全開。「こんなにいい女優だったっけ」と目を瞠った。アイドル時代より、酸いも甘いもかみ分けた三十路以降の彼女のほうが、私は好きだ。

 北海道ならもっと「絵になる」ロケ地がいくらでもあるだろうに、相米慎二はむしろ「絵になる」場所を避けて撮っているように思える。そもそも、2人が乗る悪趣味極まるピンク色の車からして、「いちばん絵にならない車」をあえて選んだとしか思えない。

 「絵にならない」カットの積み重ねは、クライマックスだけを浮き上がらせるための仕掛けなのだろう。
 クライマックスとは、小泉今日子が雪景色の中で睡眠薬自殺しようとし、浅野がそれを助けるシークェンス。そこだけは、ここぞとばかりに「絵になる」カットが連打されるのだ。

 そのシークェンスは、明らかに「死後の世界」を模して撮られている(だからこそ、浅野は川を越えて小泉を助けにくる)。何やら相米の早すぎる死を暗示してるようで、切ない。

 そして、主人公2人が「もう一度生きよう」と再生に向かうラストのみ、明るい原色に満ちたシーンとなっている。
 「生きることに疲れた男女が死の淵まで歩を進め、最後にそこから『再びの生』へと向かう」プロセスを描いたロードムービー。なんとも地味な映画だが、私は好きだ。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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