北尾トロ『男の隠れ家を持ってみた』

2008年10月11日 09:34

男の隠れ家を持ってみた (新潮文庫 き 28-3)男の隠れ家を持ってみた (新潮文庫 き 28-3)
(2008/05/28)
北尾 トロ

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 北尾トロ著『男の隠れ家を持ってみた』(新潮文庫/380円)読了。
 
 いわゆる「男の隠れ家」(同名の雑誌もありますね)を持った人たちを取材したインタビュー集かと思ったら、そうではなかった。ライターの著者自身が、自宅と仕事場以外に六畳一間風呂なしのアパートを借り、そこで週一程度過ごしてみた「体験」を綴ったエッセイなのである。

 いったいなんのためにそんなことをしたかというと、一つには雑誌の連載企画(この本は『裏モノJapan』の連載の文庫本化)である。
 もう一つには、父親が亡くなった年齢である48歳にもうすぐ届くことなどから、いわゆる「中年クライシス」の状態にあった著者が、「隠れ家」を持つ経験を自分を見つめ直す機会としたのである。

 で、本書には自宅と仕事場と隠れ家を行き来した10ヶ月の模様が綴られるのだが、あまり面白くない。なにしろ著者自身が「はじめに」で、「連載はつらかった。(中略)10回も続いたのが不思議なくらいだ」と書いているほどで、ドラマティックな出来事など何も起こらないからである。

 つげ義春のマンガにも、主人公(つげの分身)が妻に内緒で月5000円の激安アパートを借り、そこに通ってただボンヤリすることを愉しむという短編があった。これはなかなか面白い作品だったが、要するにこの手の体験は「短編一つ程度の小ネタ」であって、一冊の本にするほどのものではないのだ。

 北尾トロは好きなライターだが、正直言って、これは私が読んだ彼の本でいちばんつまらなかった。
 同業者で世代も近い私には著者の心情がよくわかる面もあるのだが(私にも「隠れ家願望」があるし)、それでも企画倒れの失敗作だと思う。


コメント

  1. 小野不一 | URL | F4qIJJbY

    今度、本人に会ったら伝えておきます(笑)。

    私も一つだけ書いてます。

    http://d.hatena.ne.jp/sessendo/20010621/p1

  2. 前原 | URL | -

    小野さん

    こんばんは。
    ああ、そうか。「古本屋つながり」でお知り合いなのですね。

    北尾さんの本で好きなものもいろいろありますよ。
    よろしくお伝えください。

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