やまがたすみこ『サマー・シェイド』

サマー・シェイドサマー・シェイド
(2007/12/12)
やまがたすみこ

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 やまがたすみこの『サマー・シェイド』の紙ジャケ盤(ヴィヴィド・サウンド/2625円)を買った。

 やまがたすみこは、おもに1970年代に活躍したシンガー・ソングライターである。78年にアレンジャーの井上鑑と結婚して第一線からしりぞいた(2004年にインディーズで四半世紀ぶりのアルバムを発表)ため、表舞台での活躍期間はほんの数年間であったが、いまなお根強いファンがいる。

 私はとくにファンというわけではないが、自分が意識的に音楽を聴き始めたころによくラジオでかかっていた「夏の光に」という曲だけは大好きだった。で、その曲が入っているアルバムを買ったというしだい。

 このアルバムは1976年発売。ジャケットの憂いを帯びた美しいポートレイトも印象に残っている。考えてみれば当時彼女はまだ19歳だったわけだが、それにしては老けている大人っぽい。当時中1くらいだった私には、20代後半くらいの「大人の女」に見えた。

 やまがたすみこは、1973年のデビュー当時には、生ギターを抱えて歌う健全無垢な「カレッジフォーク」スタイルのシンガーであった(森山良子や本田路津子の系譜につらなる存在)。清楚なルックスと透き通った歌声で人気を集めたという。

 だが、この『サマー・シェイド』から大きく方向転換。外部の作詞家・作曲家の楽曲提供も受け、いわゆる「シティー・ポップ」路線のアルバムを出すようになったのだ。 

 やまがたすみこのファンは、キャリア前半のカレッジフォーク路線を愛する者と、後半のシティー・ポップ路線を愛する者とにほぼ二分される。両方等しく好きだという人はあまりいないのだ。前者にとっては、シティー・ポップ路線のアルバムはやまがたすみこの流行迎合と映るようである。

 私はといえば、フォーク時代のやまがたすみこには微塵も興味がない。「夏の光に」を歌う「きれいなおねえさん」(少年時代の私から見て)としての彼女が好きなのである。

 で、私もこの『サマー・シェイド』を全編聴くのは今回が初めてなのだが、うーん……。全体に「古いタイプのニューミュージック」という感じで、いまの時点で聴いてそれほど面白い音楽ではないなあ。

 ただ、「和風ボサノヴァの到達点」ともいうべき「夏の光に」はいま聴いてもやはり名曲だし、「雨の日曜日」という曲もすごくよかった。マリア・マルダーの「真夜中のオアシス」を彷彿とさせる「琥珀色のスウィング」も佳曲(歌詞にもマリア・マルダーの名が出てくるし、歌唱スタイルもマルダーに似せている)。この3曲のためだけにも、買って損はなかった。



 何より素晴らしいのは、やまがたすみこの透明で伸びやかなハイトーン・ヴォイス。まさに「鈴を鳴らすような声」で、J-POP史上最高の美声の持ち主ではないかと思う。


↑参考までに、純朴可憐なフォーク時代のやまがたすみこ

  
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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