久住昌之・谷口ジロー『孤独のグルメ』

2008年10月06日 07:57

孤独のグルメ 【新装版】孤独のグルメ 【新装版】
(2008/04/22)
久住 昌之

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 久住昌之原作・谷口ジロー作画の『孤独のグルメ』の「新装版」(扶桑社/1200円)が出ていたので、購入。
 このマンガは文庫版でもっているのだが、大きな絵で読みたい作品だし、今年になって『SPA!』に発表された10年ぶりの新作一編と、作者2人と川上弘美(作家)のてい談も収録されているので、買ったしだい。

 → ウィキペディア『孤独のグルメ』

 面白いマンガだが、未読の人にはその面白さを説明しにくいマンガでもある。
 主人公の独身中年男・井之頭五郎が、仕事の合間に一人で外食する様子が、1回につき8ページで描かれる。ただそれだけのマンガなのだから。

 「グルメ」という言葉を冠してはいるものの、高級レストランや料亭のたぐいは出てこない。出張先の大阪で屋台のたこ焼きを食うだけの回や、デパートの屋上でうどんを食うだけの回、回転寿司を食うだけの回、果てはコンビニで食品を買って夜食をとるだけの回まである。もはや「B級グルメ」とすら呼びにくい。

 にもかかわらず、出てくる食べものはどれもものすごくうまそうなのである。そして、独身中年男の侘びしい食生活を描いただけに思えるこのマンガが、なぜかやたらと面白く、何度も読み返しては愉しんでしまうのだ。

 この作品のファンだという川上弘美は、巻末のてい談で、「(井之頭五郎には)『事件屋稼業』の人と『かっこいいスキヤキ』の人が、少しずつ混じっている」と評している。

 この言葉は、『孤独のグルメ』の魅力を的確に言い当てている。
 『かっこいいスキヤキ』とは、久住昌之が泉靖紀(マンガ家)と組んで「泉昌之」名義で手がけた単行本。『孤独のグルメ』の原型のような作品「夜行」が収録されている。
 一方の『事件屋稼業』は、谷口ジローが関川夏央と組んで作った、哀歓あふれるハードボイルド劇画。独身中年私立探偵・深町丈太郎の物語である。

 泉昌之の「夜行」などの一連の作品は、フィルムノワールのギャングみたいな格好をしたハードボイルドな男が、駅弁とか食堂のチキンライスなどというなんでもない食事にやたらとこだわる様子を描いたもの。ハードボイルドな雰囲気と、あまりに些末な内容のギャップが笑いを誘う作品なのだった。

 「夜行」などの作品を、谷口ジローの緻密な絵でリアル度を数段アップさせ、ギャグの要素をペーソスに置き換えたのが、この『孤独のグルメ』なのである。
 まさにキャスティングの妙。久住と谷口が組んだからこそ面白いマンガであり、ほかのマンガ家の絵では面白さ半減以下だったろう。




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