『麦の穂をゆらす風』

麦の穂をゆらす風 プレミアム・エディション麦の穂をゆらす風 プレミアム・エディション
(2007/04/25)
キリアン・マーフィーポードリック・ディレーニー

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 ケーブルテレビで録画しておいた『麦の穂をゆらす風』を観た。英国の名匠ケン・ローチが、アイルランド独立戦争とその後のアイルランド内戦を描いた大作。2006年のカンヌ映画祭でパルム・ドールを得た作品。

 労働者階級、庶民の視点から英国社会を描きつづけてきたケン・ローチのことだから、この映画にもヒーローはいない。独立を目指し闘う庶民群像の中に、戦争の悲劇を描いているのだ。歴史を鳥瞰するのではなく、地を這うような目線で「虫瞰」する作品。

 ハリウッド映画なら波瀾万丈の戦争スペクタクルとして描いたであろう素材を、ケン・ローチはドキュメンタリー・タッチでごく淡々と描く。
 密告者に堕してしまった幼なじみの同志を主人公が射殺するシーンがあって、そこが中盤のクライマックスなのだが、そのシーンでさえ演出はそっけない。そんなふうに、淡々とした渋さが好ましい映画。

 ていねいに作られた素晴らしい映画だが、しかし「もう一度観たい」とは思えなかった。あまりにも重苦しい物語なのである。
 とくに後半、独立を目指してともに闘った者たち――幼なじみや兄弟まで――が内戦に引き裂かれて殺し合う展開は、観ていてつらかった。 

 暴力と悲しみが全編に満ち、どこにも救いがない映画。
 とってつけたような「救い」を物語の中に用意しなかったところが、ケン・ローチらしいとも言えるけれど……。
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コメント

marieさま

はじめまして。
あいにくその日は予定があって私は参加できませんが、お知らせくださってありがとうございます。

貴イベントに注目いたします。
  • 2008-10-03│08:12 |
  • 前原 URL│
  • [edit]
ケン・ローチ「ブレッド&ローズ」映画会
はじめまして。ケン・ローチ監督の作品がお好きなようなので書き込みをさせていただきます。
2008年10月26日(日)16時~、Dining Bar Salji(橋本駅より徒歩2分)で、ケン・ローチ監督の「ブレッド&ローズ」(Bread & Roses)を鑑賞して、意見交流をする会があります。まだ見たことがない方はもちろん、一度見たことのある方も一緒に鑑賞して、意見交換しませんか!参加は無料です!
映画上映後は、イギリス人と日本人の活動家から、なぜ/どのように活動に関わるようになったのかに関するスピーチもあります。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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