中村淳彦『名前のない女たち』

2008年08月27日 11:07

名前のない女たち (宝島社文庫)名前のない女たち (宝島社文庫)
(2004/06)
中村 淳彦

商品詳細を見る


 中村淳彦著『名前のない女たち/企画AV女優20人の人生』(宝島社文庫)読了。
 副題のとおり、「企画AV女優」20人を1章1名ずつ取り上げたインタビュー集である。
 

 AV女優には、顔と名前で魅力をアピールする単体女優と、女優の魅力ではなく作品の内容(企画)で売るタイプの作品(企画もの)に出演する企画女優との2種類がある。一般にAV女優という場合は単体女優を指す場合が多いが、2000年頃から企画女優の中にも単体女優並みの人気を持つ例が見られる様になった。これをキカタン女優などと呼ぶ。
 容姿に恵まれない者や実年齢が23歳以上なら単体として扱われにくく、企画物などで別の長所を求められる (ウィキペディアより)



 この手の本では、故・永沢光雄の『AV女優』(現・文春文庫)が評価が高い。あの本は男性誌のカラーグラビアを飾るような単体女優のみを扱っていた。いっぽう、本書はアングラ色の強い企画女優ばかりを取り上げているので、登場する女性たちの語るライフストーリーはいっそう凄絶である。

 永沢光雄の著作はAVファンの枠を超えて多くの識者に絶賛され、永沢は作家への道を歩み始めていた(その矢先に惜しくも病没)。類書である本書は、永沢作品と比べると文章に滋味が乏しいが、女優たちの語る半生自体が劇的なので、最後まで興味深く読める。 

 とくにすごいのが、冒頭を飾る結城杏奈へのインタビュー。彼女は家族ぐるみのホームレスだったという。8人の子どもたちを置いて父親が蒸発。病弱で敬虔なカトリック教徒だった母親は子どもたちを連れて全国各地の教会を頼り歩き、その果てに公園でホームレス暮らしを始めたのだった。

 9人家族の公園ホームレス生活。『ホームレス中学生』も真っ青である。そしてその後も、レイプで初体験・イジメ・援交・自殺未遂・兄との近親相姦・母親の作った3000万円の借金を返済するためのAV界入り・精神病院への入院……と、すさまじい体験が矢継ぎ早に口から飛び出す。

「あのな、わたし話し方も変やろ。ちっちゃい頃にな。いろんな土地を転々としたから言葉が混じっちゃってな」



 ……などと、凄惨な経験をあっけらかんと話す明るさが妙に切ない。
 結城杏奈の半生(といっても、インタビュー時まだ19歳)だけでも、ケータイ小説よりすさまじい。それでもまだ本書の20分の1。なんとも濃ゆい本である。

 もっとも、結城杏奈の人生ドラマがあまりにすごいので、残り19人は割を食って見劣りがするのだが、それぞれにキョーレツではある。

 やはりというべきか、どこか尋常ではない、壊れた感じの女性が多い。本書を読んだあとに永沢の『AV女優』を読み返したら、そこに登場する女優たちが「フツー」に見えてきたほどだ。
 たとえば、食事しながらのインタビューに、「お腹がすいているんだけど、噛むのが面倒くさいから食べたくない」と言う女優は、固い食べものが嫌いで煎餅を食べたことがない(!)という。ううむ……。


コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    http://mmaehara.blog56.fc2.com/tb.php/1436-3d1c4a00
    この記事へのトラックバック