矢野顕子『LOVE LIFE』 |
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2006-08-24 Thu 23:53
昨日のエントリを書くにあたって矢野顕子のアルバムをいくつか聴き直したのだが、1991年の名盤『LOVE LIFE』を久しぶりに聴いてみて、ちょっとビックリ。 このアルバム全体が、「自分のもとから去っていく坂本龍一に向けたトーチ・ソング(失恋や片思いの哀しみを表現した歌)」で構成されていたのである(!)。ずっと愛聴してきたのに、いまごろそのことに気づいた。 アルバム終盤の2曲、「愛はたくさん」と「LOVE LIFE」が「そういう曲」であることは、ファンの間では周知のことであった。
とか、
などというストレートな「トーチ・ソング」になっていたから。 だが、この2曲だけではなかった。ほかの曲も、歌詞をよく読んでみれば“隠れトーチ・ソング”になっているのである。たとえば――。
アルバム中最もアップテンポで、表面上は楽しさに満ちた「湖のふもとでねこと暮らしている」さえ、歌詞の中の「あなた」を坂本龍一と考えれば、じつはトーチ・ソングであることがわかる。
「犬」とは坂本の愛人で、「わたし」と暮らしている「ねこ」とは少女時代の坂本美雨(坂本との間に生まれた長女。現・歌手)のことであろうか。 そう考えると、この歌の牧歌的な楽しさの底に秘められた矢野顕子の哀しみに、胸をつかれる思いがする。 また、名曲「いいこ いいこ(GOOD GIRL)」の次のような歌詞(これは糸井重里作詞だけど)。
これを、一般的な主婦の気持ちを表現した曲としてのみ私は聴いてきたけれど、じつは、坂本にとってただの「おかあさん」になってしまった矢野顕子の哀しみが反映されていたのではないか。 矢野顕子は、アルバム1枚を費やして、去りゆく坂本龍一へのトーチ・ソングを歌い上げていたのである。坂本本人を含めて、わかる人にだけわかる形で……。 そのことに気づかず、たんに楽しい曲として「BAKABON」や「湖のふもとで猫と暮らしている」を聴いてきた私は、ファンとして不覚であった。 アルバムうしろのクレジットを見てみれば、献辞が「MY LOVE TO RYUICHI――」で始まっている。 にもかかわらず、当の坂本はもう、プロデューサーとしてもミュージシャンとしても参加していないのだった。 『LOVE LIFE』は、ポップス史上最も切なく美しいトーチ・ソング・アルバムである。 その切実さにおいては、中島みゆきもカーリー・サイモンの『トーチ』(ジャズのトーチ・ソングを集めたアルバム。ジェイムス・テイラーとの離婚直後に発表された)も目じゃない。失恋直後もしくは片恋中の人は、ぜひ一聴されたし。 |
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