『僕らのミライへ逆回転』

Be Kind RewindBe Kind Rewind
(2008/01/22)
Original Soundtrack

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 渋谷のショウゲート試写室で、『僕らのミライへ逆回転』の試写を観た。晩夏公開予定のアメリカ映画。

 公式サイト→  http://www.gyakukaiten.jp/

 原題は「BE KIND REWIND」(=「巻き戻してご返却ください」の意)。
 少し前に町山智浩氏がブログで紹介しているのを読んで、「おお、これはメチャメチャ面白そうだ!」と試写を楽しみにしていた映画である。

 ジャック・ブラック主演のコメディで、監督は『エターナル・サンシャイン』のミシェル・ゴンドリー。この組み合わせだけでもワクワクするではないか。

 ニュージャージーの古びたレンタルビデオ屋「BE KIND REWIND」が舞台。このDVD時代にVHSのビデオしか置いていない、冴えない店だ。
 店の店員マイクを演じるのがモス・デフ(ラッパー兼俳優)で、その幼なじみのトラブル・メーカー、ジェリーがジャック・ブラック。

 ある日、発電所で感電して身体に強力な磁気を帯びたジェリーが、店のビデオをすべて消去してしまうという事件が起きる。
 2人はその窮地をしのぐため、とんでもない弥縫策を考える。消えてしまった旧作・名作を、自作自演で“リメイク”してビデオに収め、それをレンタルすることにしたのだ。

 2人が“主演”するチープな手作りリメイク映画は、意外にも常連客にバカウケ。口コミで評判を呼び、寂れた店は時ならぬ大繁盛、客が長蛇の列をなす。

 だが、こすっからいハリウッドのビジネスマンが噂を聞きつけ、著作権侵害を理由に手作りビデオの廃棄と巨額の損害賠償を求めてくる。その新たな窮地を乗り越えるため、2人が考えた打開策とは……。

 ……と、いうような映画。ダンボールや稚拙なイラストなどの手作りSFXを駆使した「リメイク」のプロセスが、馬鹿馬鹿しくもおかしい。

 町山氏が紹介していた裏話によれば、ゴンドリーはこの映画の中で『バック・トゥ・ザ・フューチャー』も“リメイク”させる予定だったが、監督のロバート・ゼメキスに許可をもらえなかったのだという。
 ハハア、なるほど。『僕らのミライへ逆回転』という邦題には、そのことへの皮肉が隠されているわけか。「わかる人にだけわかる」隠し味にニヤリ。

 ジャック・ブラック主演のコメディとしては、あの傑作『スクール・オブ・ロック』に勝るとも劣らない出来だ。

 この映画をアメリカ人の二線級が監督したなら、『ナッティ・プロフェッサー』みたいなたんなるB級「おバカ映画」に終わったことだろう。
 だが、そこはフランス出身の鬼才ゴンドリーのこと、そんな単純な作品にはしない。「おバカ映画」としても十分楽しめる一方で、二重三重の深みを用意しているのだ。

 ネタバレになるので詳述できないが、終盤に自然な転調があって、ラストはなんと感涙の大団円を迎える。そして、そのラストから改めて映画全体を振り返ったとき、ジェリーとマイクが悪戦苦闘して手作りリメイクをしていく過程の数々が、新たな輝きをもって観る者の心に迫ってくる。

 これは、かつてない角度から作られた「メタ映画」(映画作りそのものをテーマにした映画)であり、「映画本来の楽しさとは何か?」を観客に問いかける作品なのである。
 「メタ映画」というとゴダールの小難しい作品などがまず思い浮かぶが、この映画はそれをB級コメディの形式でやったところが斬新だ。 

 「映画への愛」を通奏低音とした、愛すべきおバカ映画。
 くわえて、ジャズ・ピアニストのファッツ・ウォーラーがストーリーの重要な鍵となるため、「音楽への愛」にも満ちている。音楽にも造詣の深いゴンドリーの映画らしく、サントラの選曲も抜群のセンス。
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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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