南條範夫『駿河城御前試合』

駿河城御前試合 (徳間文庫)駿河城御前試合 (徳間文庫)
(2005/10)
南條 範夫

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 南條範夫著『駿河城御前試合』(徳間文庫)読了。

 山口貴由のマンガ『シグルイ』があまりに面白いので、原作を読んでみた。この人の小説を読むのはこれが初めて。

 狂気にとらわれた駿河大納言徳川忠長によって行なわれた、「駿府御前試合」。それは、江戸の泰平の世にもかかわらず、真剣によって行なわれた凄惨無比の十一番勝負であった(史実じゃないと思うけど)。本作は、その勝負の一つひとつと後日談を描いた、全12話の連作短編である。

 『シグルイ』の原作にあたるのは、そのうちの第1話「無明逆流れ」のみ(ただし、後日談にあたる最終話にも『シグルイ』の主人公が再び登場する)。山口貴由は、わずか30数ページの短編をふくらませて大長編にしてみせたのだ(※)。

※小説をマンガ化・映画化する場合、長編を短くまとめるとハンパなダイジェストになってつまらなくなりがちだが、短編をふくらませると傑作が生まれる確率が高いようだ。

 よって、『シグルイ』の面白さの過半は山口の独創によるのだが、この小説も負けず劣らず面白い。読み始めたらとまらない、上質のエンターテインメントである。

 12編のストーリーとキャラに、それぞれタイプの異なる趣向・アイデアが凝らされているところがよい。各編の主人公のキャラが立ちまくり。

 たとえば、「風車十字打ち」は、駿府城に隠密として送り込まれた2人の忍者が、身分を隠したまま御前試合で戦うという風変わりな「忍者もの」になっている。
 かと思えば、「被虐の受太刀」という一編は、好みの美女や美青年に刀で傷つけられると無上の快感を覚えるドMの剣豪(!)が、想いを寄せる美女に御前試合の場を借りて斬られようとするストーリー。こんなぶっ飛んだ話、よく考えつくものだ。
 
 「平田弘史の劇画みたいな小説だなあ」という感想を抱いたが、実際は順序が逆で、平田のほうが南條から強い影響を受けているのだろう。

 奇想とどぎつい展開で読者をぐいぐい引っぱる強烈な磁力は、山田風太郎と甲乙つけがたい。
 南條範夫ってこんなに面白い小説を書く人だったんだ。ほかの作品も読んでみよう。
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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