戸梶圭太『未確認家族』

未確認家族 (新潮文庫)未確認家族 (新潮文庫)
(2004/12)
戸梶 圭太

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 戸梶圭太著『未確認家族』(新潮文庫)読了。
 「トカジ本」を読むのもこれで4冊目だ。本作はトカジ流「家族小説」である。

 主人公たちの冷え切った夫婦仲、一人息子の不登校、妻が通うスポーツクラブの若いインストラクターが妻に寄せる思慕……などという基本設定は、夜10時台にやるテレビドラマのようにありふれている。

 だが、そこは戸梶のこと、ふつうの家族小説になどするわけがない。テレビにあふれる微温的ホームドラマの世界を、「悪意の毒」で黒く塗りつぶしたような作品になっている。
 妻は元ヤンキー、夫はひそかに通勤電車の中で痴漢をくり返している。夫婦それぞれの「過去」が、ある日この家族に牙をむく……そんな、破格の「犯罪ホームドラマ」なのだ。

 現代日本の家族の淀みを濃縮したような物語だが、とはいえ、社会派な味わいなど微塵もない。むしろ、昔の筒井康隆をもっとチープにしたような、スラップスティックな展開と黒い笑いに満ちた小説なのである。

 文庫本の帯につけられた惹句が秀逸だ。いわく――。

 

 こいつらに“心の闇”などない。ただ、馬鹿なだけだ。


 
 「安っぽいなあ」「クダラナイなあ」と半ば呆れつつ、読み始めたら止まらない。そして、いつもどおりあっという間に読み終わる。「読むジャンクフード」トカジの面目躍如たる作品。

 なお、文庫の解説を中江有里が書いているのだが、これがなかなか面白い(いろんな意味で)。
 新聞書評も書く小泉今日子など、文筆の仕事もする女性タレントが何人かいるが、中江有里はその中ではけっこういいと思う。
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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