『The Essential Emerson, Lake & Palmer』

The Essential Emerson, Lake & PalmerThe Essential Emerson, Lake & Palmer
(2007/01/30)
Lake & Palmer Emerson

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 なんとなくむしょうにELP(エマーソン、レイク&パーマー)が聴きたくなって、『The Essential Emerson, Lake & Palmer』(輸入盤)を購入。

 ELPは私が少年時代に大好きだったプログレッシヴ・ロック・グループ。LP時代にずいぶん聴きこんだものだけど、思えばCDでは一枚も所有していなかった。

 ベスト盤だけでもずいぶんたくさんの種類が出ているグループだが、収録曲目を見比べてこれを選んだ。
 いやー、これはお買い得のある秀逸なベスト盤だ。2枚組に代表曲がぎっしりだし、組曲形式で長い「タルカス」「悪の教典♯9第一印象」「永遠の謎」がそれぞれ全編収録されている。さらに、私の好きなファースト・アルバムから、全6曲中5曲までが収録されているのもうれしい。

 唯一の難点は、代表作の一つ『展覧会の絵』が収録されていないこと(ただし、同アルバムに収録された「ナットロッカー」は入っている)だが、これは聴きたくなったら別個に入手すればよい。

 ELPの最高傑作といえば、『タルカス』か『展覧会の絵』、もしくはギーガーがジャケットを手がけた『恐怖の頭脳改革』あたりを挙げるのが一般的である。でも、私はファースト・アルバムがいちばん好きだったし、今回ベストで聴き直してもその評価は揺るがなかった。

 たとえば、このベストにも収録されている「石をとれ」(※)の美しさは比類ない。詩的で美しく、それでいて弱々しくはなく雄大・壮麗で、まぎれもないロックなのである。

 ※この邦題だとまるでプロテストソングだが、原題は「Take A Pebble」で、石といっても「小石」 。「小石を拾って海に投げ、広がる波紋を見つめて心の内側を覗き込みたまえ」といった内省的な歌詞。

 また、「ナイフ・エッジ」の、音を鉈でバサバサ削っていくような無骨な美しさにもうっとりする。「円空の鉈彫り」を思わせるロック。
 ELPはもともとギターレスの編成だが、「ナイフ・エッジ」はシンセサイザーすら使われておらず、オルガンが核になっている。ギターもシンセも使っていないにもかかわらず、この曲は重厚な「ハード・ロック」なのである。
 「クラシックとロックの融合」の先駆でもあったELPだが、この「ナイフ・エッジ」も元はクラシック。チェコの作曲家ヤナーチェクの「シンフォニエッタ」が原曲だ。それをこんなに無骨なロックに昇華させてしまうあたりが、ELPのすごさである。

 『タルカス』と『展覧会の絵』しか聴いたことがないという人は、ぜひファーストを聴いてほしい。

 ELPといえば、バカテク・キーボーディストのキース・エマーソンが、1970年代前半当時としては「新しい音」だったシンセをド派手に弾きまくることが売りだった。
 しかし皮肉なことに、新しさの刻印であったシンセの音が、いまとなっては古色蒼然として聴こえる。だが、ファースト・アルバムの段階ではまだほとんどシンセが使われていなかった。ファーストの音がいまでも古びていないのはそのためでもある。

 
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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