『いつか眠りにつく前に』

 渋谷のショウゲート試写室で、『いつか眠りにつく前に』の試写を観た。来年2月公開のアメリカ映画。
 
 公式サイト→ http://www.itsunemu.jp/

 スーザン・マイノットの同名小説の映画化で、脚本も彼女が監督と共同で書いている。

 死の床にある老いた母が、混濁する意識の中で、「ハリス」という男の名をくり返す。見守る二人の娘たちは、その名に心あたりがない。
 目覚めた母に、娘は尋ねる。
「ねえママ、ハリスって誰?」
「ハリスは私の最初のあやまちよ。最初のあやまちは、ファースト・キスみたいに忘れられないものなの」
「?」
「ハリスと私が、バディを殺したの」

 謎めいた母の言葉に、困惑する娘たち。映画は、母と娘たちの「現在」と、母の若き日の「あやまち」の記憶を交互に描いていく。それは、アメリカが最も豊かだった1950年代の、裕福な家に起きた「愛をめぐる悲劇」だった。

 母・アン役がヴァネッサ・レッドグレイヴ、その若き日を演じるのがクレア・デインズ、彼女の親友ライラ役がメリル・ストリープ、ライラの母親役がグレン・クローズ……大物女優のゴージャスな競演が見物だ。

 メリル・ストリープの出演場面は、死の床にあるアンを見舞って数十年ぶりに再会する、というワンシークェンスのみ(彼女の若き日を、実の娘であるメイミー・ガマーが好演)。
 だが、短い出演にもかかわらず、強烈な印象を残す。彼女とアンが再会を果たす場面の素晴らしさは際立っているのだ。遠い日の悲劇を乗り越えて互いを許し合う、若き日の親友同士。ここに、この映画のコアがある。

 1950年代の記憶を描く部分は、海辺の瀟洒な別荘での豪華な結婚式が舞台になっていたりして、一歩間違えばハーレクイン・ロマンス、という感じのクサさを漂わせている。それでもハーレクイン・ロマンス的紋切り型になっていないのは、繊細な心理描写ゆえだ。

 古き佳きハリウッド映画を思わせる、正統派の感動作。
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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