祝! 『マンハッタン・オプ』復刊

マンハッタン・オプI (ソフトバンク文庫 ヤ 1-3) (ソフトバンク文庫 ヤ 1-3)マンハッタン・オプI (ソフトバンク文庫 ヤ 1-3) (ソフトバンク文庫 ヤ 1-3)
(2007/10/18)
矢作 俊彦

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 矢作俊彦の名作『マンハッタン・オプ』が、ソフトバンク文庫から全4巻で復刊された。長らく古書で探すしかない状態だったので、まことに慶賀に堪えない。

 これは、1980年代初頭にFM東京(いまの「TOKYO FM」)で放送されたラジオドラマを、台本を書いた矢作自らが連作短編小説に構成し直したもの。
 私は、元のラジオドラマも熱心に聴いていた。日下武史の渋い演技(朗読)と、渋い選曲の音楽で構成された極上のラジオドラマであった。当時高校生で、全身全霊で大人ぶりたい年頃だった私には、あのラジオドラマは「大人の世界」そのものに思えた。

 それをノヴェライズした本シリーズもまことに素晴らしく、私は旧文庫版(なぜか角川文庫と光文社文庫に分かれて、計5冊刊行されていた)を何度読み返したかわからない。私は、これこそ矢作俊彦の最高傑作だと思っている(矢作ファンには異論のある人もいようが)。それどころか、国産ハードボイルド・ミステリの到達点ですらあると思う。谷口ジローの挿画とカバー絵も絶品である。

 「ハードボイルドなんか好きじゃない。チャンドラーが好きなだけだ」とは矢作の名言だが、この『マンハッタン・オプ』は、日本人作家によるチャンドラーへのオマージュとして出色の作品。

 マンハッタンに住む名無しのオプ(探偵)を主人公に、各編が見事なストーリーをもつミステリが展開される。文体は洗練を極め、ユーモアとウイットが横溢。各編のタイトルがジャズのスタンダードの曲名になっているあたりもオシャレだ。

 もっとも、矢作本人は正統派ハードボイルドのパロディとしてこの作品を書いたのだという。
 パロディとして読んでも優れているし、パロディ性を意識せずに正統派ハードボイルドとして読んでも優れているという、矢作にしかできない離れ業をやってのけているのである。

 未読の若い読者は、復刊を機にぜひ読んでみていただきたい。

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コメント

ユズさん

おお、「今日と明日が出合う時」の「クロスオーバーイレブン」。私もよく聴いていました。あの番組で初めて知ったアーティストもたくさんいます。たしかに、あの番組の雰囲気はハードボイルドでした。
同世代ゆえに共通体験がいろいろあるのですねえ。


  • 2009-03-02│13:08 |
  • 前原 URL│
  • [edit]
リアルに聞いた同性代として
中学生の頃FM愛知で23:45から放送していて、角川文庫で読んだのの今でも記憶している。たった今「傷だらけの天使」を読み終え、検索したらヒットして書き込みました。ハードボイルドといえば同じくFM-NHKでクロスオーバーイレブンという番組をやっていて、伊部などそうそうたるメンバーがナレーションしていたのも、思い出す。今でも角川版は実家に残っています。
私も最高傑作に一票。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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