『幸福な食卓』

幸福な食卓 プレミアム・エディション [DVD]幸福な食卓 プレミアム・エディション [DVD]
(2007/06/22)
北乃きい.勝地 涼.平岡祐太.さくら.羽場裕一.石田ゆり子

商品詳細を見る


 『幸福な食卓』をDVDで観た。今年1月公開の邦画。瀬尾まいこの同名小説の映画化である。

 「父さんは、父さんをやめようと思う」と父親が宣言するファーストシーンの印象から、大島弓子の名作短編「毎日が夏休み」のような物語なのかと思ったが、そうではなかった。
 わりとオーソドックスな家族再生の物語であり、長女の初恋を軸にした青春映画でもある。

 映画史に残るような作品でも、年間ベストワンに選ばれるような作品でもないが、それでも、長く心に残りそうな愛すべき佳品である。ドビュッシーやラヴェルが書いたピアノ曲の小品のような映画。シンプルで、静謐で、上品なのだ。

 北乃きいと勝地涼が演じる恋人たちの、なんとさわやかなこと。「ファーストキスが人生の一大事」だった時代を思い出して、懐かしい気分になった。瀬尾まいこの原作も読んでみようと思う。

 なお、瀬尾まいこは、このように映画化作品もあるほど人気作家となったいまも国語教師をつづけているのだそうだ。『朝日新聞』のインタビューでも次のように述べている。

「私の本業は中学校の国語の先生です。子どもの頃から先生になるのが夢でした。土日を利用して書いています。小説を書くのは仕事と思っていません。私は楽しくなくなったら、書かんでもええだろうと思っています」

 『墨攻』の酒見賢一も、いまなお住宅設備会社に勤務しながら小説を執筆している。
 2人とも、まことに賢明だと思う。
 本の売れない昨今、賞の一つや二つ取ったところで小説だけで食っていける可能性は高くないし、ちゃんと別の正業を持っていたほうが、小説で“食うための妥協”をせずにすむからだ。
 これからは、瀬尾や酒見のような兼業小説家も増えていくことだろう。 

P.S.森見登美彦も、(ウィキペディアによれば)「現在は図書館勤めの傍ら、執筆活動に励んでいる」のだそうだ。

 
関連記事

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

幸福な食卓 瀬尾まいこ

父を辞めると宣言した父、家出中なのに料理を届けに来る母、元天才児の兄。 そして佐和子には、次第にその存在が大きくなるボーイフレンド大...

コメント

コメントを残す

Secret


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。54歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

ブクログ・MY本棚

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
23位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
18位
アクセスランキングを見る>>