『ここに幸あり』

 京橋テアトル試写室で、『ここに幸あり』の試写を観た。
 名匠オタール・イオセリアーニの、『月曜日に乾杯!』 以来4年ぶりの新作。12月1日公開予定。

 公式サイト→ http://sachiari.jp/

 公式サイトに、各界著名人の推薦コメントが載っている。その中で、私の好きな矢野顕子とアン・サリーもそれぞれ称賛を寄せていたので、「これは観てみたい」と楽しみにしていた作品。

 期待どおり、なかなかよかった。ヘンな言い方に聞こえるかもしれないが、矢野顕子やアン・サリーの音楽が好きな人ならきっと気に入るであろう映画だ。

 舞台は現代のパリ。大臣のヴァンサンは、失言でやり玉にあがって突然罷免されてしまう。
 権威と富と住む場所を一度に失って「ただの人」になったヴァンサンのもとから、愛人はさっさと去っていく。別れた妻を訪ねてみても、冷たくあしらわれるばかり。ヴァンサンはすっかり意気消沈して、老いた母が暮らす故郷の街に帰る。

 だが、そこで懐かしい友たちと酒を酌み交わし、ギターを奏で、心優しき女性たちに出会ううち、彼の心は癒され、大臣だったころには忘れていた心からの幸福感を味わうのだった。

 ……と、そのように骨子だけを紹介してみると、教訓話めいたクサイ映画に思われるかもしれない。

 まあ、たしかに「お金や権威をもつことが幸福なのではない。人生にはもっとたいせつなものがある」ということをテーマにした映画ではあるのだが、そのテーマの伝え方が少しも説教臭くなくて、軽妙洒脱なのである。

 なにより、全編にちりばめられたあたたかいユーモアが素晴らしい。それは、日本のお笑い番組にまま見られるような、とげとげしく空虚な笑いではない。誰も傷つけない笑い。人生を大らかに肯定する笑い。そのような笑いに満ちた、ハッピーでノンシャランな「人間讃歌」である。 
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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