『やじきた道中 てれすこ』

 東銀座の松竹試写室で『やじきた道中 てれすこ』の試写を観た。
 11月公開の邦画で、監督は平山秀幸。

公式サイト→ http://www.telesco-movie.com/
 
 平山監督の前作『しゃべれども しゃべれども』は現代の落語界を舞台にした青春映画の快作だったが、この新作は古典落語と「やじきた道中記」(十返舎一九の『東海道中膝栗毛』)をブレンドした時代劇だ。落語の「てれすこ」「淀五郎」「狸賽(たぬさい)」「浮世床」「野ざらし」などのネタが、ストーリーの中に巧みに織り込まれている。

 また、「足抜け」した花魁をやじきた(弥次郎兵衛と喜多八)コンビの旅の仲間にくわえることでラブストーリーとしての色合いを加味したり、喜多八を売れない歌舞伎役者に設定することで物語にふくらみを持たせたりと、おなじみの「やじきた道中記」に新たな生命が吹き込まれている。

 「コメディ」というよりは、あえて「人情喜劇」と呼びたい感じの仕上がり。古き佳き日本映画のなつかしい味わいがある。

 その一方で、小粋な洒落っ気も全編に横溢。たとえば、オープニングに主演3人をキャラ化したアニメが用いられ、そのバックにガーシュウィンの「ラプソディー・イン・ブルー」を邦楽にアレンジ(尺八などが用いられている)して流すあたり、すこぶるオシャレ。

 ヒロインの花魁・お喜乃を演じる小泉今日子がよい。彼女ももう四十路だが、いい感じに熟れていて年を重ねていて、いまなおチャーミングだ。ヘンに若作りしないナチュラルな感じが好ましい。

 古典落語をベースにした時代劇といえば、川島雄三の傑作『幕末太陽傳』(1957年)がまず思い浮かぶ。それから半世紀の時を経て登場した本作も、『幕末太陽傳』を十二分に意識して作られている。

 『幕末太陽傳』は、主演のフランキー堺が伝法な江戸弁を駆使して鮮やかな印象を残したが、本作の中村勘三郎(弥次郎兵衛役)もそれに劣らぬ快演。歯切れのよい江戸弁が耳に心地よい。

 ベタなギャグも多いのだが、そのベタさ加減も含めて「なつかしい」印象の映画。
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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