団鬼六『真剣師小池重明』ほか

 

 団鬼六著『真剣師小池重明』(イースト・プレス)、『生き方下手』(文藝春秋)読了。

 この間読んだ『快楽なくして何が人生』がわりと面白かったので、まだ読んでいない団鬼六のエッセイ集をまとめて図書館で借りてきた。そのついでに、自伝小説集『生き方下手』と、ノンフィクション小説『真剣師小池重明』も借りてきたしだい。

 『生き方下手』もまあまあ面白かったが、エピソードの多くがすでにエッセイで書かれているものなので、その分面白さが半減。

 もう一冊の『真剣師小池重明』は、メチャメチャ面白かった。
 元本は12年前に出たものだが、将棋の世界が舞台になっているので、将棋にはまるっきり門外漢である私にはつまらないだろうと思い、これまで読んでいなかったのである。

 「真剣師」とは、将棋のアマ強豪の世界で、腕に覚えのある者を相手に「賭け将棋」をして食っている将棋ギャンブラーのこと。
 小池重明は、一流のプロ棋士を打ち負かすほどの将棋の天才でありながら、破滅型の性格から無頼の人生を歩み、生涯プロ棋士になることなく死んでいった、伝説の真剣師だ。

 文壇きっての将棋通であり、一時期は将棋雑誌も主宰していた団鬼六は、晩年の小池と深いかかわりをもった。その団が、独自取材もくわえて小池の生涯を克明に追ったのが、この本である。

 将棋のことをまったく知らない(小学生時代にやったことがあるだけ)私が読んでも、巻措くあたわざるほど面白く、一気に読ませる。それは団の筆力ゆえでもあるが、何より、小池重明という男の破天荒な人間像がすこぶる魅力的なのである。
 小池がどういう男か、単行本カバーの紹介文を引用してみよう。

 

 ◆賭け将棋にめっぽう強く、「新宿の殺し屋」「プロキラー」とも呼ばれた。
 ◆連続二期アマ名人となり、特例でプロ棋界入りの話も出たが、寸借詐欺事件を起こし、アマ・プロ棋界から追放された。
 ◆女性関係にだらしなく、人妻との駆け落ち歴も三回。
 ◆葬儀屋、運転手、土方稼業など職を転々とし、放浪癖と逃避癖は生涯抜けることがなかった。
 ◆子どものころは貧民窟とバクチ場のなかで育った。



 「破滅型の天才」という存在は、ただでさえ人を惹きつけるものだ。くわえて、小池はやることなすことメチャメチャなのに、どこか愛嬌があって憎めない男なのである。

 将棋の好きな人ならさらに面白く読めるはず。未読の人はぜひ。
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将棋指しが遊び人だった頃のおはなし:真剣師 小池重明

真剣師 小池重明作者: 団 鬼六出版社/メーカー: イースト・プレス発売日: 2011/05/28メディア: 単行本 団鬼六も死んじゃいましたね……。 で、団鬼六の代表的将棋小説の本書。 知的スポーツではなく、娯楽のプロであった古き時代の、将棋指しがよく描かれている。

コメント

田中さん

そのテレビ番組は未見ですが、この本は劇画化もされているようですね。

私は、むしろ映画化してみたい気がしました。和田誠の『麻雀放浪記』みたいな映画にできないものか、と。

「真剣師」自体がもう滅び去った職業で、いまはもういないそうですね。
  • 2007-08-25│05:34 |
  • 前原 URL│
  • [edit]
真剣師
この小池重明さんの本は私も読みました。

おっしゃられるとおり、とても面白かったです。

彼を知ったのは1時間のTV番組でした。
生き様を軽く紹介した冒頭の1-2分で僕は引き込まれてしまいました。

その番組では棋士の羽生さんもインタビューに答えていて「不思議な将棋だった」と言っておられたように記憶しています。

才能がありながら、落ちていかざる得ない人生というのは、普通の人では実現できないって意味ではファンタジーであり、憧れなんですよね。
本当にまねはできないのですけども。
  • 2007-08-24│01:43 |
  • 田中およよNo2 URL
  • [edit]

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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