永島慎二遺稿集『ある道化師の一日』

ある道化師の一日―永島慎二遺稿集ある道化師の一日―永島慎二遺稿集
(2007/08)
永島 慎二

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 永島慎二遺稿集『ある道化師の一日』(小学館クリエイティブ/1995円)がアマゾンから届いた。

 これはもともと、2005年に永島慎二が亡くなったあと、ご遺族が私家版・非売品として作られたもの。その内容があまりによいので「一般に売らないのはもったいない」という声が上がり、普及版として刊行されるに至ったのである。

 私は、夏目房之介さんのブログのこのエントリで本書のことを知り、一般書籍として刊行されたらぜひとも手に入れたいと思っていた。

 夏目さんは次のように書かれていた。

 

 見てびっくりした。まるっきりプロの編集による、ちゃんとした遺稿集であり、しかも年表とか写真とか貴重な材料満載の素晴らしい本なのだ。箱入り、ハードカバー、背布張り、200ページ余。カラーページ30ページ余。届けてくれた編集者と、同時に叫んだ。
「もったいない!」
 この本、そのままちゃんと市販できる本になる。永島ファンだけでなく、研究者にとっても資料になる貴重なものだ。



 この普及版は箱入りではなく普通のソフトカバーだが、私家版にはない川本三郎さんのエッセイ、あだち充らによる追悼マンガ、夏目さんの書き下ろし解説をくわえて、さらに充実した内容になっている。カラーページも多く、ファンの私も初めて見る貴重な絵や写真などがたくさん収録されている。

 書名になった「ある道化師の一日」とは、永島が1999年に発表した、生涯最後のマンガ作品のタイトル(つまり、晩年はマンガ家としては引退状態だったのだ)。わずか6ページの掌編で、この遺稿集にもそっくり収録されている。老いた道化師と愛犬の静かな一日を淡々と描いた、ただそれだけの作品。なのに、しみじみと心に迫る。

 永島慎二は、道化師をこよなく愛したマンガ家である。本書のカバーも道化師の絵だし、巻頭カラーページには道化師を描いた油絵が何点も掲載されている。
 「ある道化師の一日」という書名には、永島慎二というマンガ家を一人の道化師に擬し、その一生を「一日」に見立てる含意があるのだろう。

 収録されているのは、短編マンガ・エッセイ・油絵・木版画・エッチング・日記・手紙・年賀状などの多彩な作品群。さらには、趣味で作った自作のパイプや将棋の駒、篆刻(自作の遊印=ハンコ)のたぐいまでが紹介されている。

 永島慎二の生涯と、アーティストとしての全貌が一望できる一冊。これで2000円を切る価格は絶対安い。永島ファンならマストバイだ。

 重厚な油絵から小さなカットに至るまで、収録された一つひとつが絵としてまことに素晴らしく、マンガ家というより一人の「絵描き」として希有な才能の持ち主だったことを、改めて認識させられた。
 どの絵にも共通して、やさしさとあたたかさ、なつかしさ、そして胸をつく寂寥感があふれている。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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