日本映画ベスト25



 「トカトントン」さんのリクエストに応えて、私の「日本映画ベスト25」を選んでみた。思いつくままに、「一監督一作品」の原則で。順不同です。うーむ、我ながら一貫性がない。

『太陽を盗んだ男』(長谷川和彦)

『キッズ・リターン』(北野武)

『きらきらひかる』(松岡錠司)
 往時の輝きをすっかり失っていた薬師丸ひろ子を、松岡錠司がその才能で蘇生させた傑作。原作はいまをときめく江國香織。ホモセクシャルの男とアルコール依存症の女の奇妙な結婚生活を、乾いた抒情とペーソスの中に描いている。いわば“ねじれたラブストーリー”であり、そのねじれ具合が面白い。
 優等生的な役柄が多かった薬師丸ひろ子が、ここでは情緒不安定なアル中女を見事に演じている。こわれた感じのキャラなのに、なぜか非常にキュートなのだ。 

『幕末太陽傳』(川島雄三)

『スワロウテイル』(岩井俊二)

『誰も知らない』(是枝裕和) → レビュー

『ゆきゆきて、神軍』(原一男)

『下妻物語』(中島哲也) → レビュー

『用心棒』(黒澤明)
 映画『ボディガード』に、ケヴィン・コスナーとホイットニー・ヒューストンがこの映画を観に行く場面があった。で、コスナー演ずる主人公は、この映画を「いままでに62回観た」と言う(!)。まあ、それくらい面白い、極上の娯楽活劇ではある。

『キューポラのある街』(浦山桐郎)
 この映画については関川夏央氏が素晴らしい作品論をものしている(『東京からきたナグネ』所収)ので、興味ある向きは一読されたし。その中で、関川氏は言う。
「(この作品は)いわゆる日活純愛路線上のプログラム・ピクチュアとして企画されたのだが、もっともすぐれたリアリズム映画として完成し、フランソワ・トリュフォーらヌーベル・バーグの作家らにも大きな影響を与えることになった」
 浦山桐郎のデビュー作にして代表作。

『復讐するは我にあり』(今村昌平) → 関連エントリ

『竜二』(川島透)
 川島透の映画というより、脚本・主演の二役をこなした夭折の天才・金子正次の名を映画史に刻みつけた傑作。

『戦場のメリークリスマス』(大島渚)
 
『時をかける少女』(大林宣彦)
 たしか同時上映の薬師丸ひろ子の映画の「ついでに観た」のだと思うが、いまではこちらのほうが圧倒的に心に残っている。

『仁義なき戦い 頂上作戦』(深作欣二)
 暴力的で猥雑な映画なのに、ラストシーンは詩的な静謐さに満ちている。シリーズ最高傑作。

『切腹』(小林正樹)
 平田弘史の劇画みたいな映画。いや、もうちょっと端正か。

『伽椰子のために』(小栗康平) ※「椰」は実際にはニンベン
 まだ少女だったころの南果歩の、はかない透明感が圧倒的に素晴らしい。

『ジョゼと虎と魚たち』(犬童一心) → レビュー

『遠雷』(根岸吉太郎)
 私の通っていた高校のそばでトマトハウスのシーンを撮影していた、というささやかな思い出の作品。その思い入れを差し引いても傑作。

『ヨコハマBJブルース』(工藤栄一)
 私はこれが松田優作主演作のベストワン。和製ハードボイルドの最高傑作。
 「ミステリー」として見たらストーリーが粗いが、んなこたぁどーでもよくて、全編に漂うムードをこそ味わう映画。優作演ずる主人公は、売れないロック・シンガー兼私立探偵(!)。で、舞台はもちろん横浜。これだけで十分。

『斬る』(三隅研次)
 雷蔵目当てのオバハンどもに囲まれつつ、リバイバル上映を観て感動した一作。ストイックな美学につらぬかれた映画。

『A2』(森達也) → レビュー
 
『細雪』(市川崑)
 中年過ぎた大女優たちが演じる四姉妹が、あでやかな女盛りに見える「映画のマジック」。とくに吉永小百合は、当時すでに40近かったのに、ちゃんと結婚前の「娘」に見えるところがスゴイ。「あれが行ってしまうんや……」と石坂浩二がつぶやくラストがサイコー。

『ガキ帝国』(井筒和幸)
 『パッチギ!』よりはるかにリアルでドライな、『パッチギ!』の原点。

『十九歳の地図』(柳町光男)
 中上健次の小説の映画化といえば『青春の殺人者』『赫い髪の女』など傑作揃いだが、私はこれがベスト。青春のおぞましさ・汚らしさまで描き尽くした、情け容赦のない青春映画。


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コメント

>デヘヘラーさん

ただのコミック編では芸がないので、「短編マンガ・ベスト25」を考えてみますね。しばしお待ちを。

>ぼのさん

「戦メリ」という略語ができたほど、大ブームになった作品ですよね。去年だったか、「Gyao」でやっていたので再見しましたが、やっぱりいい映画でした。キョージュの演技はひどいけど(笑)。

>吉祥寺さん

ごぶさたです。
「バタアシ金魚」も一度選んで、「あ、松岡錠司が2本になっちゃう」と気づいて落としたのです。

一貫性はないけど、私の中ではそれぞれ強い思い入れがある作品ばかりなのです。たとえば、「キューポラのある街」は、助監督をやった人と個人的につきあいがあったりとか(亡くなられましたが)。
  • 2007-07-23│12:59 |
  • 前原 URL│
  • [edit]
こんにちは、最近ブログを変えました吉祥寺拓也です。
このラインナップすごく納得ですよ!!
一貫性ということであれば、60年代生まれのエイティーズで映画好きな人間が選んでるって感じがすごくします。
われわれ世代でリアルタイムで観てないっていうのは、「キューポラ」と「用心棒」と「幕末太陽傳」くらいじゃないですか? なんとゆーか「80年代中心だけど、懐かしさだけじゃなくて最近もきっちりチェック」みたいな一貫性を感じます。

どれもこれも私もベスト25に入れたいものばかりです。
一般に松岡監督とくれば、てっきり「バタ足金魚」の高岡早紀が来るんじゃないかと思いまいしたが、やっぱり薬師丸ひろ子ですよね。大人薬師丸ひろ子では私もアレが一等賞です。トヨエツのキスシーンがまた・・・。
  • 2007-07-23│12:12 |
  • 吉祥寺拓也 URL│
  • [edit]
選べこなしませんね(笑)
思い入れの強いのは「キッズリターン」ですね。

中学1年の時、母と弟と私がかなり離れた
映画館に行ったんですよ。
弟はシブシブ母と一緒に「細雪」をみたんですが
私だけひとりで「戦場のメリークリスマス」を
みた覚えがあります。たけし、坂本さん目当てで(笑)

でも市川崑監督も好きです。
ビデオで昔あった「木枯らし紋次郎」みたとき
カメラワークがすごいなと思いました。
もちろん”金田一シリーズ”も好きです。
  • 2007-07-23│04:41 |
  • ぼの URL│
  • [edit]
ありがとうございました。
たしかに一貫性がない。(笑)

今度は絶対わたしのできない
コミック編をお願いします。
もちろん、お時間のある時で結構ですが。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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