日本のロック・アルバム ベスト25



 「日本のロック・アルバム ベスト25」を選ぶ遊びが、ミクシィで流行っているらしい(私自身はミクシィをやっていないが)。その遊びが、ミクシィからブログに波及しつつあるところ。

 「トカトントン」さんが選んでいたのが楽しそうだったので、私も参加してみよう。

 4年ほど前に「ロック・アルバム・ベスト10/邦楽編」というのをブログでやったことがあるので、それに15枚プラスする形で(安直!)。
 まず、前に選んだベスト10を挙げてみる(順不同)。 

サンハウス『クレイジー・ダイヤモンズ』
 「めんたいロック」の元祖サンハウスは、1983年夏、一時的に再結成され日比谷野音でコンサートを行った。これはその際に収録されたライヴ盤。
 サンハウス時代の代表曲に、シーナ&ザ・ロケッツのレパートリーをくわえた構成。ドライでスピーディーなロックンロールが機銃掃射のように繰り出される。
 ここには余分なものがいっさいない。メッセージ性も芸術性もない。ただ、ロックのビートが本来もっている原初的な快感だけがたっぷりとある。純度100%のピュア・ロックンロール。

ジョニー、ルイス&チャー『OiRA』
 ジョニー、ルイス&チャーとはのちのピンククラウドのこと。JL&C名義でライヴ盤含め3枚のアルバムを残しているが、それらはいずれも傑作。中でも、この『OiRA』は最もパワフルな作品で、非の打ちどころのないカッコよさ。
 バンド名は、かつてジェフ・ベックが組んでいた最強のロック・トリオ「ベック、ボガート&アピス」を意識したネーミング。また、『OiRA』というタイトルも、ベックの名作『Ola(オラ)』と日本語の「オイラ」のもじりだ。
 クリームやBB&A、あるいはジミヘンに通じる、ブルース・ベースの男臭いハード・ロックである。収録時間の短さだけが珠にキズ。

JAGATARA『裸の王様』
 都市の闇から生まれたファンク。ドライアイスに手を触れたときのように、冷たくて熱い。負のエナジーに満ちた、夜に聴くべき危険な音楽。
 フル・アルバムなのに4曲しか入っていない。つまり1曲が10分前後の長さ。しかしまったく冗漫ではなく、リズムのうねりが生み出す緊張感・高揚感が最初から最後まで持続する。

シオン『SIREN(サイレン)』
 シオンは歌に「生きざま」がそのまま現れるニール・ヤング系のアーティストで、私はどちらかというとこの手のロックは苦手なのだけれど、個人的な思い出で選んだ。駆け出しライターだったころ、このアルバムのプロモーションのための地方回りに取材で同行したのだ。
 ただし、そうした思い入れを差し引いても、これは傑作だ。
 なにより、詞が素晴らしい。巻き舌の英単語をちりばめて事足れりとする凡百の日本語ロックとは、まったく次元が違う。自分の日常生活をそのまま歌にしているだけなのに、聴く者の心を鷲づかみにする迫力がある。
 バック・バンド「NOIS」との息もピッタリで、初期のフォーク・ロック的イメージを振り切ったノリのよいバンド・サウンドを聴かせてくれる。「奇跡のバランス」「ブーメラン」など名曲目白押し。

Cocco『ブーゲンビリア』
 Coccoはこのファースト・アルバムでいきなり頂点を極めてしまったと思う。その後のアルバムもそれぞれよいが、これに比べたらかなり見劣りがする。
 とにかく、曲が粒揃いだ。
 コクトー・ツインズも真っ青の耽美的でドラマティックな名曲「遺書。」、パンクの疾走感とオルタナ・ロックのハードネスを兼ね備えた「走る体」、フォーク・ロック的で清冽な佳曲「やわらかな傷跡」、スケールの大きな美しいバラード「星の生まれる日。」など、捨て曲は1曲もなし。
 伸びやかなヴォーカルも、すでにこのファーストの時点で完成されている。
 食わず嫌いでいるおじさんロック・ファンは、是非一聴を。

 あと5枚は、以下のとおり。

ルースターズ『FOUR PIECES』
 解散することを決めてからレコーディングに入ったという、ルースターズのラスト・アルバム。いわば彼らにとっての『アビイ・ロード』。
 このアルバムのためだけに集った強力なリズム隊をバックに、花田裕之と下山淳が互いの持てる力を振り絞った渾身作。楽曲はどれも力強さと美しさを兼ね備え、それでいて「終焉」の哀切さに満ちている。

パンタ&ハル『マラッカ』
 もう一つの傑作『クリスタルナハト』とどちらを選ぶか迷った末に、鼻差でこっち。パンタのいつものラディカリズムは後景にしりぞき、ロマンティシズムが前面に出たアルバム。

ゼルダ『空色帽子の日』
リザード『LIZARD』
布袋寅泰『GUITARHYTHM』

 さて、このときはかなりゴリゴリの「ロック」に絞ってセレクトしたので、残り15枚はもうちょっとソフトなものまで範囲を広げてみよう。

YMO『テクノデリック』
ザバダック『遠い音楽』
矢野顕子『ごはんができたよ』
キリンジ『3』
一風堂『ラジオ・ファンタジー』
坂本龍一『音楽図鑑』
ナーヴ・カッツェ『Oyzac』
鈴木さえ子『スタジオ・ロマンチスト』
佐野元春『ヴィジターズ』
フリクション『軋轢』
井上鑑『予言者の夢』
スターリン『FOR NEVER』
サンディー『MERCY』
大貫妙子『ロマンティーク』
ナンバーガール『SAPPUKEI』
 ナンバガの最高傑作。大音量の音の塊を聴き手にぶつけてくる攻撃的なサウンドだが、その音の塊が緻密なアンサンブルに裏づけられていて、やかましいのに不思議な透明感がある。
 パンクっぽいともオルタナっぽいとも言えるけれど、むしろ、レッド・ツェッペリンが後期のアルバム『プレゼンス』や『コーダ』で見せた達成を彷彿とさせる。美しい音の塊によって、“もう一つの現実”を構築してみせる音。語の本来の意味で「ハード・ロック」という言葉がふさわしい音。“現実と戦うための武器”のような音。聴いていると、その音で「心が鎧われる」ようだ。
 とくに、「ZEGEN VS UNDERCOVER」「SASU-YOU」「TATOOあり」の3曲の疾走感は圧倒的。アヒト・イナザワのドラムスがすごい。
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コメント

ぼのさん

坂本龍一は『音楽図鑑』のころがいちばんよかったと思います。精緻に練り上げられているのにポップで聴きやすくて、しかも飽きない。

当時聴いていた「サウンド・ストリート」で、このアルバムの制作過程が報告されていたんですよね。なので、「リアルタイムで聴いたアルバム」という生々しさもあります。
キョージュは、「(このアルバムのために)35曲作って、そのうち25曲をボツにした」なんて話もしておりました。

>一曲目の「チベタンダンス」とかヨカッタなあ。

私は「パラダイス・ロスト」が好きでした。
  • 2007-07-14│05:43 |
  • 前原 URL│
  • [edit]
に、似てる
私もやはり80年代くらいに聴いたモノに
思い入れがありますね。

皆さんのラインナップと半分はだぶります。

面白いのは坂本龍一の「音楽図鑑」を
皆さんあげてる所です。
私もあのアルバムが一番ですね。
一曲目の「チベタンダンス」とかヨカッタなあ。

あと矢野顕子さんと一緒にやった
「ステッピン・イン・トウ・エイジア」も好きな曲です。

あの辺に作った曲に何故か好きなものが多いですね。
  • 2007-07-13│17:31 |
  • ぼの URL│
  • [edit]
デヘヘラーさん

やっぱり自分がいちばん多感だったころのアルバムが中心になりますね。私の場合は80年代。

>リストの中ではナーヴ・カッツェにちょっと驚きました。

そういえば、ナーヴ・カッツェのファーストはムーンライダーズの岡田さんのプロデュースでしたね。
岡田さんは「ナーヴはロック界の岩波文庫だね」と言ったそうで(笑)、なんか言い得て妙で記憶に残っています。
  • 2007-07-13│16:40 |
  • 前原 URL│
  • [edit]
本当だ、4枚ダブっています。
色んな方のリストを見るのが
とても楽しみです。
Coccoも鈴木さえ子(科学と神秘と迷う)
もフリクションもたしかに名盤ですね。
リストの中ではナーヴ・カッツェにちょっと驚きました。
25だから4つしかなかったですが
50選んだら、相当数、重なりますね。
今度は邦画でやりましょう。

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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