アソル・フガード『ツォツィ』

ツォツィ ツォツィ
アソル・フガード (2007/03)
青山出版社

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 アソル・フガード著、金原瑞人・中田香訳『ツォツィ』(青山出版社/1500円)読了。

 先月観た映画『ツォツィ』がすごくよかったので、原作も読んでみた。
 映画では描かれなかった各登場人物のバックグラウンドと内面が詳細に描かれているので、映画を観てからでも愉しめる。

 原作を読むと、“南アフリカ版『罪と罰』”ともいうべきこの物語の構造がより明瞭に見える。1人の犯罪者の「魂の蘇生」を描いているのだ。
 『罪と罰』のラスコーリニコフがインテリであるのとは対照的に、ツォツィは教育らしきものをまったく受けていない。当然文盲であり、赤ん坊を拾ってから自分の心に起きた変化の意味さえ、言葉にすることができない。そこで、犯罪仲間でただ1人大学出の「ボストン」に、その意味を問う。ボストンは答える。
「ツォツィ、おまえが知りたがっているのは神様のことなんだ」
 と……。
 文盲のラスコーリニコフが、褐色のソーニャに出会って魂を救われる物語。ごく正統的な堂々たる文学であり、哀切な青春小説でもある。

 映画が現在を舞台にしているのに対し、1980年に発表されたこの原作の舞台は、アパルトヘイト真っ只中の1960年代初頭だ。
 映画版にはほかにもいくつかの変更点があるが、そのアレンジはいずれも成功している。原作のコアの部分を巧みにすくい取り、より磨きをかけた、「小説の映画化」のお手本のような作品だと思う。 
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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