『雲南の少女 ルオマの初恋』

 東銀座のシネマート試写室で、『雲南の少女 ルオマの初恋』を観た。6月16日公開の中国映画。

 公式サイト→ http://www.ruoma.jp/

 中国雲南省の少数民族・ハニ族の村を舞台にした、詩情豊かな初恋物語。17歳の少女・ルオマが、都会からやってきたカメラマンの青年に寄せる淡い想いを描いている。

 海抜2000メートルの山深い村。一面に広がる見事な棚田がすこぶる美しい。棚田の水面に映える夕陽、墨絵のように雲がかかった山々など、村の風景は我々日本人にとっても懐かしさを感じさせる。

 稲作の村であることも、「懐かしさ」の一因であろうか。「稲魂(いなだま)よ、私たちの田におりてきてください!」とリーダーが声高らかに叫んでから田植えが始まるなど、ハニ族の習俗もていねいに描かれ、興趣尽きない。

 田舎の純朴な少女が、都会からきた青年に恋をする――そんな図式の物語、いまの日本で作ったらどうやっても陳腐なものになるだろう。
 身分の差とか貧富の差とか、互いの「差異」こそがラブストーリーの大きな駆動力になるわけだが、隅々まで均質化され情報も行き渡った日本では、そうした差異はなかなか見出しにくい。

 だが、雲南奥地の村に都会の青年を放り込むと、差異がごく自然に成立する。なにしろ、ルオマの家には電気すら通っておらず、親がわりの祖母は糸車と手動の織機で布を織って生計を立てているのだ。

 ルオマの夢は、都会に嫁いでいく村の女性が教えてくれた、「エレベーター」というものに乗ること。都会の青年に「僕が君をいつかエレベーターに乗せてあげよう」と言われ、たったそれだけのことで顔を輝かせる。そんな純朴さがいじらしい。

 ルオマを演じるリー・ミン自身もハニ族の娘であり、出演当時はまったく演技経験がなかったという。ふつうの女優たちとはコードの異なるピュアな美しさで、観る者に強烈な印象を残す。彼女があこがれる青年が、客観的に見れば軽薄なダメ男であるあたりも、すこぶるリアル。
 派手さはないが、見ごたえある清冽な佳編だ。
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コメント

kemukemuさん

はじめまして。
貴ブログも拝見しました。

日本の稲作のルーツは、ハニ族が住むような中国の高地にあるという説があるようですね。
「ルオマの初恋」に私たちが感じる「なつかしさ」は、ルーツゆえかもしれません。

私が先日読んだ「一神教の闇」という本に、「稲魂」のことがくわしく書かれていて、「ルオマの初恋」のシーンを思い出しました。
ハニ族の世界では、稲魂は「釈迦よりも格上」なのだそうです。
  • 2007-07-22│11:38 |
  • 前原 URL│
  • [edit]
おしらせ
こんばんは。
大道芸観覧レポートという写真ブログをつくっています。
映画「ルオマの初恋」、いい映画でしたね。
私もとりあげました。
よかったら、寄ってみてください。
http://blogs.yahoo.co.jp/kemukemu23611
  • 2007-07-21│22:14 |
  • kemukemu URL
  • [edit]
ぼのさん

そういえば、中国の「超格差社会」ぶりを伝えたNHKスペシャルを、私も先日見ました。「これがホントに同じ国?」と唖然とするほどの格差があるんですね。

だからこそ、中国には「木綿のハンカチーフ」的な物語も現実の中でたくさん生まれているのでしょうね。
  • 2007-04-27│03:47 |
  • 前原 URL│
  • [edit]
中国は広い。
俳優の関口知宏さんが中国全土をを列車で旅する
番組がNHKハイビジョンであるんですよ。
それみてても中国の”都会”と”田舎”の差が
歴然とわかるんです。

日本で流行ってる(笑)格差社会なんてコトバが
チンケに聞こえるくらい貧富の差も激しそうです。

> ルオマの夢は、都会に嫁いでいく村の女性が教えてく>れた、「エレベーター」というものに乗ること。

上記の映画のエピソードにリアル感というか
切なさが伝わって来ますよ。

大田裕美の『木綿のハンカチーフ』の世界ですねえ。

私も子供の頃
初めて生クリームのケーキを食べた時
”世の中にこんな美味しいものがあったのか!!”と
感激した(笑)のを思い出しました。
  • 2007-04-27│02:17 |
  • ぼの URL│
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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