安田喜憲ほか『巨大災害の時代を生き抜く』

巨大災害の時代を生き抜く―ジェオゲノム・プロジェクト 巨大災害の時代を生き抜く―ジェオゲノム・プロジェクト
安田 喜憲 (2005/04)
ウェッジ

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 安田喜憲編著『巨大災害の時代を生き抜く/ジェオゲノム・プロジェクト』(ウェッジ選書/1400円)読了。

 仕事上の必要から読んだものだが、よい本だった。タイトルは一見キワモノ風だが、中身はごくまっとうでアカデミック。
 「環境考古学」の確立者である安田喜憲(国際日本文化センター教授)が中心となって編んだ本。前半は「基調報告」のような位置づけの安田の文章で、後半は松井孝典・樺山紘一と安田のてい談。いずれも質が高く、読みごたえがある。

 「ジェオゲノム(地球遺伝子)」とは安田の造語である。特定の条件を有する湖の底に形成される、木の年輪を思わせる縞模様を指す(ゆえに「年縞」ともいう)。
「春から夏にかけては珪藻が繁殖して白い層が形成され、秋から冬にかけては珪藻が繁殖せず、かわりに湖水に含まれる粘土鉱物が静かに堆積して黒い層をつくる」ために縞模様になるのだそうだ。

 このジェオゲノム、かなり厳密な年代特定ができる。しかも、その内容を分析することで、過去の気候変動や周辺環境の変遷が詳細に解明できるのだという。ジェオゲノムによって、いま、地球環境史は劇的に書きかえられつつあるのだ。

 そして、ジェオゲノムの分析から過去の災害史を詳細に復元することで、未来に起きる巨大災害の予測も可能になるのだという。
 
 そう、本書に書かれているのはあやしげな予言のたぐいではなく、環境考古学の最新の成果に基づく警告なのである。

 安田によれば、地球温暖化の影響は、日本を含むモンスーンアジアに最も早く、最も深刻にあらわれるという。慄然とさせられる内容だが、文明について考えるうえですこぶる示唆に富む。
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コメント

ぼのさん

「パエトーン」ってありましたね。
この本の著者の安田氏が書かれていることですが、けっきょく人間は、未曾有の大災害が起きて人類の危機が眼前に迫らないかぎり、変われない。人間の心とはそれくらい弱いものである、と。
そして、「人類史における文明の転換期は、いずれも地球環境の激変期だった」と。

地球温暖化による危機は、人類が変わるための好機でもあるのかもしれません(うわ、エラソー)。
  • 2007-04-15│14:14 |
  • 前原 URL│
  • [edit]
人間は完璧ではない。
前原さんのこの著書の書評を読んで
山岸涼子さんの『パエトーン』という
ギリシャ神話をモチーフにした作品で
無謀にも太陽に向かって死んでいく青年の話を
思い出しました。

原発、”チェルノブイリ”を意識した作品でした。

”完璧”な存在でない人間が”完全”にコントロールできないモノを扱ってはいけない
というメッセージがあったと思います。

自然というもの対する”畏怖”する心が
(私も含めて)今の人間には欠けているような気がします。

最近あった石川の地震の被害をみたとき
次は、何処でおこってもおかしくないなと感じました。

しかし、私も他のひとも日々の生活に追われて
すぐに忘れてしまう・・・

コワイなと思いますね。
  • 2007-04-14│23:25 |
  • ぼの URL│
  • [edit]

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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