すぎむらしんいち『ディアスポリス』

ディアスポリス-異邦警察 1 (1) ディアスポリス-異邦警察 1 (1)
すぎむら しんいち、リチャード・ウー 他 (2006/09/22)
講談社

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 すぎむらしんしいちが絵を描き、リチャード・ウーなる聞き慣れない名前の人物が脚本を書いているマンガ『ディアスポリス/異邦警察』(『モーニング』連載中)は、いま私が楽しみにしている連載の一つ。
 
 タイトルの「ディアスポリス」とは、「東京に暮らすディアスポラたちを守る私設警察」の謂である。
 「ディアスポラ」――この言葉を私が知ったのは、パンタの曲の歌詞でだったと思う。

ディアスポラ(διασπορά)はギリシャ語で「散らされたもの」という意味の言葉で、特にパレスチナの外で離散して暮らすユダヤ人のことをさす。歴史的に離散した彼らの民族集団的なコミュニティー全体、また一つ一つのコミュニティーのことまでを言うこともあり、ユダヤ人以外の民族でも「政治上の理由などから、本国を離れて暮らす人々のコミュニティー」という意味でこの名称を適用することがある。良く知られている例では、ギリシア人、フェニキア人、アルメニア人、華人などが似た側面を持っている(「ウィキペディア」より)


 このマンガの中では、祖国を離れて東京で暮らす「密入国異邦人」という意味で使われている。

 約15万人いる東京の密入国者・不法就労外国人たちが、自衛のため「密入国者たちの都庁」を作り上げている、という設定がすこぶる魅力的だ。

そこには彼らが決めた法律を遵守する義務や住所の登録、納税の義務があるが、同時に選挙権と最低限の健康の保障とデキのいい外国人登録証とパスポートが与えられる。役所もあれば厚生省の認可しない病院、文部科学省の知らない学校、金融監督庁と無関係の銀行、郵便局……警察……なんでもある


 主人公の久保塚早紀は、その“ウラ都庁”に任命されたたった一人の“警察官”なのである。

 この設定を思いついた時点で作品は8割方成功したも同然だが、くわえて、脚本も絵もよい。ハードボイルド・タッチのストーリーながら、笑いを随所にちりばめた軽妙洒脱なアクション・コメディになっているのだ。

 脚本のリチャード・ウーとは、あの狩撫麻礼の別ペンネームではないかという推測がネット上をにぎわせている。その真偽のほどは不明だが、いかにも狩撫麻礼が書きそうな脚本ではある。

 私にとっては『クローン5』以来のすぎむら作品。
 『クローン5』は尻すぼみにつまらなくなって失速してしまったけれど、今度は最後まで面白くなりそう。『ホテル・カルフォリニア』(「カリフォルニア」に非ず)のような一気呵成の傑作に仕上げてほしいところだ。
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一気呵成

IT社会になって、情報のスピードが格段にアップした。同時に時流という川の流れのスピードもアップしている。川の流れがゆっくりしていた時は、たとえ流れに乗り遅れても、自力で追いつくことが可能であった。時流など考えなくても影響さえしなかったとも言える。 ところ

コメント

吉祥寺さん、こんにちは。

「狩撫麻礼脚本説」のほかには「長崎尚志(浦沢直樹とよく組んでる人)説」もあるみたいですが、私は狩撫説に一票。

もっとも、史村翔と組んだ『右向け左!』のように、すぎむらしんいちには誰の原作でも自分色に染めてしまう強烈な個性があるのですが。
  • 2006-10-15│03:00 |
  • 前原 URL│
  • [edit]
単行本には入っているかはわかんないですが、
イサームが私は好きです。頼りになります。
ところで、狩撫麻礼脚本説って初めて知りましたが、納得ですね。
キャラクターを適当にゴロゴロ転がしながらつくっていく感じとか、ちょっとドライなストーリーとか、すごく似てると思います。
  • 2006-10-14│18:13 |
  • 吉祥寺拓也 URL│
  • [edit]

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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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