「G's Baseball Party」



 トヨタG'sのウェブCM「G's Baseball Party」(特設サイト)のクオリティがスゴイ!

 YouTubeで偶然出合って、スキップしようと思ったけど最後まで見入ってしまった。そして、3回連続で観直してしまった。

 繁華街の路上で突然野球を始める登場人物たちの動きが、女性も含めて全員サマになっているのがスゴイ。「自分、長年野球やってました」という動きになっているのだ。こうなるまでには鬼の猛特訓をしたんだろうなあ。

 著名選手のモノマネがちりばめられていたり、元巨人のクロマティ(!)がさりげなく登場したり、細部まで仕掛けが満載なのも愉しい。

 たった2分半のCMなのに、下手な低予算映画よりもお金と手間ヒマがかかっていそう(わずか数秒登場するだけのクロマティのギャラは、いかほどだったのか?)。さすがはトヨタである。

 これは、何かのCM賞に輝いても不思議はない素晴らしい作品だと思う。

 私がツイッターでもやっていればそこで紹介すればよいのだが、やってないのでここにカキコ。

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ウェイン・クランツ『2ドリンク・ミニマム』


2ドリンク・ミニマム2ドリンク・ミニマム
(2014/10/15)
ウェイン・クランツ

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 ウェイン・クランツの『2ドリンク・ミニマム』を聴いた。

 ニューヨークの小さなジャズ・バーでのギグを収めた、1995年のライヴ・アルバムだ。
 タイトルは、「ライヴを観るお客さんは最低2杯注文してね」の意。バーの入り口に書かれた但し書きをそのまま用いた、洒落の利いたタイトルである。

 ギター、ベース、ドラムスという最小限のトリオ編成。すごくテクニカルなのに「テクをひけらかす感じ」が皆無の、軽やかな演奏を聴かせる。

 ウェイン・クランツのギター・スタイルは、非常にユニークだ。
 テクニック的にどう説明したらよいのか、専門的なことはわからないのだが、ほとんど類を見ないギターである。

 リズム・セクションの上をギターが流れていくのではなく、リズム・セクションと一体化して跳ね回るギター。リード・ギターとリズム・ギターの中間を行くような、パーカッシヴでファンキーなギター。短いリフを変幻自在に展開させていく形で曲が構成されていく。

 ジャンルとしてはハード・フュージョンもしくはジャズ・ロックになるのだろうが、「よくあるフュージョン」的な凡庸さの対極にある、すこぶる独創的な演奏。
 フュージョンというより、むしろポストロック寄り。たとえば、バンアパ(the band apart)のギタリストがインストのソロアルバムを作ったら、こんな感じになるのではないか。



 リズム・セクションとギターの複雑なからみ合いが、なんとも耳に心地よい。そして聴き飽きない。
 ウェイン・クランツ、アルバムは初めて聴いたけど、カッコいいなあ。ほかのアルバムも聴いてみることにしよう。

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田辺剛・カリブsong『サウダージ』


サウダージ (ビームコミックス)サウダージ (ビームコミックス)
(2015/02/25)
田辺 剛

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 カリブsong原作、田辺剛・画の『サウダージ』(ビームコミックス)を、kindle電子書籍で購入。

 原作の「カリブsong」とは、狩撫麻礼の別ペンネーム。
 「ひじかた憂峰」「椿屋の源」「土屋ガロン」など、多くのペンネームを使い分けている狩撫(※)が、また新たな名前を作ったようだ。彼なりの美学に沿ってやっていることなのだろうが、我々読者にとってはめんどくさい話である。

※1990年代のある時期から、「狩撫麻礼」はペンネームに用いず封印している。

 この『サウダージ』は、月刊『コミックビーム』掲載の短編を集めたもの。収録作6編中3編がオリジナル・ストーリーで、残り3編は古典的名作の翻案だ。
 翻案作品は、カフカの「断食芸人」、陶淵明の「桃花源記」、小泉八雲の『怪談』の一編「お貞のはなし」。うしろの2編は舞台を英国(たぶん)に移している。

 オリジナルの3編もそれぞれ古典のような風格を漂わせており、翻案3編と見事に拮抗している。
 狩撫麻礼の原作もよいのだが、それ以上に田辺剛の絵が素晴らしい! 精緻に描き込まれた写実的な絵は、マンガというよりアートの域に達している。1ページ1ページ、1コマ1コマが、それぞれ文学作品の挿絵や装画に使えそうなクオリティなのだ。

 「こんなに手間ヒマをかけて描いていたら、コミック誌の原稿料じゃ割に合わないだろうな」と、身もフタもないことを考えてしまった。それほどスゴイ絵。黒と白、光と影の鮮やかなコントラストが見事だ(「コミックナタリー」のこの記事で数ページ見られる)。

 田辺剛(田邊剛名義の作品も多い)にはオリジナル・ストーリーの作品もあるようだが、名作文学のマンガ化だけに絞っても食っていけそうな人だ。

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クラーク・ストランド『SGIと世界宗教の誕生』


SGIと世界宗教の誕生―アメリカ人ジャーナリストが見た創価学会SGIと世界宗教の誕生―アメリカ人ジャーナリストが見た創価学会
(2011/01)
クラーク ストランド

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 クラーク・ストランド著、今井真理子訳『SGIと世界宗教の誕生――アメリカ人ジャーナリストが見た創価学会』(第三文明社/1290円)読了。

 2011年の刊行時に買って以来、積ん読しておいたもの。必要があって読んでみたら、大変よい本だった。

 著者は米国の仏教誌『トライシクル』の元編集長で、宗教ジャーナリスト。米国におけるさまざまな仏教運動のうち、とくにSGI(創価学会インタナショナル)の活動に関心を抱き、継続的に取材してきた。
 アメリカSGIの幹部やメンバーを取材するのはもちろん、来日して日本の会員や、会長をはじめとする幹部たちにも取材を重ねてきた。

 そうした取材の集大成として、新たな世界宗教としてのSGIを考察したのが本書なのだ。
 著者は、創価学会の“世界宗教性”は牧口初代会長の思想にすでに胚胎されていた、と見ている。

 宗教学者や宗教ジャーナリストが研究・取材対象として教団に接するとき、不可欠なのが「共感的デタッチメント」(共感しつつも一定の距離を置くこと)だと言われる。その点、著者はいささかSGIに近づきすぎている気がしないでもない。

 が、それはさておき、著者のSGI評価にはアメリカ人ならではの視点がちりばめられており、ハッとする指摘が多い。
 たとえば、創価学会の活動の大きな特徴である座談会中心のスタイルが、他の宗教団体や既成仏教団体には見られない革命的なものであった、との指摘。

 いわく、多くの現代人は宗教と生活を「まったく別個のものとして捉えている」のに対し、「牧口初代会長は、この溝を埋めようと『座談会』の伝統を打ち立てた」。座談会は「平等の精神に基づいた民主的な集いであり」、聖職者が信者に説法・説教する従来の礼拝形式とは根本的に異なる、と……。

 座談会は、仏教における新しい信仰形式というだけでなく、宗教全体に新たな信仰実践のあり方を示している。



 それ(座談会方式)は、寺院と檀家を中心とする古い宗教パラダイムを離れる決定的な一歩であった。



 また、SGIにとって重要な「師弟」の概念が、アメリカなどの西洋社会では非常に誤解されやすい、という指摘も興味深い。

 創価学会の文化が、西洋で誤解されてしまう最大の原因も、また「師弟」である。(中略)「弟子」という言葉を宗教に関して使う場合、たいてい否定的な意味になる。(中略)アメリカ人にとって「弟子になること」は、個人としての人格や意志を奪われる精神的な危険を伴う行為なのだ。



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『ジャージー・ボーイズ』


ジャージー・ボーイズ オリジナル・サウンドトラックジャージー・ボーイズ オリジナル・サウンドトラック
(2014/09/10)
サントラ、ジョン・ロイド・ヤング 他

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 『ジャージー・ボーイズ』を映像配信で観た。



 チャーリー・パーカーの伝記映画『バード』を作るなど、音楽にも造詣が深いクリント・イーストウッドが描く、フランキー・ヴァリ&フォー・シーズンズの物語。元はブロードウエイ・ミュージカルだそうだ。

 ギリシア悲劇のように重厚な、“アメリカ悲劇”とも言うべき映画を多く作ってきた近年のイーストウッドだが、本作はアメリカの古き佳き時代を正攻法で描いており、甘やかでノスタルジックだ。最初から最後まで気持ちよく酔える作品。

 それでも、ただ楽しいだけの音楽映画ではない。成功を収めたフォー・シーズンズが崩壊していく後半の哀切な苦さは、イーストウッドらしい。

 過度にマニアックな作りにはなっていない。アメリカン・ポップスの歴史にくわしい人ほど深く楽しめる作品ではあろうが、くわしくなければ楽しめないわけではないのだ。万人向けの音楽映画として、上出来な作品。

 日本でも、坂本九の「上を向いて歩こう」をめぐってこんな映画が作れないものか。

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蛇蔵&海野凪子『日本人なら知っておきたい日本文学』


日本人なら知っておきたい日本文学 ヤマトタケルから兼好まで、人物で読む古典日本人なら知っておきたい日本文学 ヤマトタケルから兼好まで、人物で読む古典
(2011/08/25)
蛇蔵、海野 凪子 他

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 蛇蔵&海野凪子の『日本人なら知っておきたい日本文学――ヤマトタケルから兼好まで、人物で読む古典』(幻冬舎/972円)を購入。

 蛇蔵の『決してマネしないでください。』がすごく面白かったので、旧作を読んでみた。
 このコンビの作品でいちばん売れているのは、『日本人の知らない日本語』シリーズらしい。じつはそっちの1巻も一緒に読んでみた。そこそこ面白かったが、「2巻以降はべつに読まなくてもいいかな」と思った。

 この『日本人なら知っておきたい日本文学』のほうが、私には面白かった。続編が出たら買いたいと思うのだが、とりあえず1冊で打ち止めらしい。

 日本語教師である海野がエッセイを担当し、蛇蔵がマンガを担当している。

 『朝日新聞』掲載の著者インタビューによれば、「この1冊のために読んだ関連書籍や資料は100冊を超える。一コマ描くのに、3冊を読み込んだこともあった」という。
 そのようによく調べて描かれているのに、お勉強の成果をガチガチに詰め込んで難しくするような愚は犯しておらず、ひたすら軽快で楽しい。
 紫式部も安倍晴明も鴨長明も、みんな可愛らしい三頭身キャラになって登場し、絵柄もスッキリ。

 大人が読んでも楽しくてためになる「教養コミック」だが、中高生に読ませたら古典への苦手意識が払拭される効果があるのではないか。学校で副読本に用いたらよいと思う。

 ところで、蛇蔵が女性(しかも女教師風美人)であることを、私は上記のインタビューで初めて知った。
 ううむ、マンガ家はペンネームでは性別がわからんなあ(久保ミツロウや荒川弘が女性だったり)。

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戸部良一・野中郁次郎ほか『国家経営の本質』


国家経営の本質 ―大転換期の知略とリーダーシップ国家経営の本質 ―大転換期の知略とリーダーシップ
(2014/11/22)
戸部 良一、寺本 義也 他

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 戸部良一・野中郁次郎ほか著『国家経営の本質――大転換期の知略とリーダーシップ』(日本経済新聞出版社/2160円)読了。書評用読書。

 かつて『失敗の本質』『戦略の本質』を著した主要メンバーが再び結集し、こんどは「国家経営の本質」をテーマに行った共同研究をまとめた本。

 世界的な激動期であった1980年代に主要国のリーダーであった6人の政治家――サッチャー、レーガン、中曽根康弘、ヘルムート・コール、ゴルバチョフ、鄧小平――を俎上に載せ、彼らがいかにして自らの政治ヴィジョンを実現させていったかを分析。そのうえで、6人に通底する“よき国家経営”のありようを抽出している。

 『プレジデント』とかのオジサン向けビジネス雑誌によくある安手のリーダー論に陥りかねない題材だが、本書はもう少し高尚である。著者たちはそれぞれ、経営学(組織論)と歴史学(政治史、軍事史)の研究者であり、学問的手続きをふまえた立派な学際的研究になっているからだ。

 日本の政治家から中曽根を選んでいるあたりに、拒否反応を覚える向きもあろう。だが、「大統領型首相」と評された中曽根が優れたリーダーシップの持ち主であったことは、人物や思想への好悪を超えて、認めてよいと思う。

 他の5人についても、リーダーシップに的を絞ってまとめられた各章はそれぞれ出来がよく、リーダー論として独立した価値を持つ。
 少し前に取り上げたジョセフ・ナイの『大統領のリーダーシップ』と、読み比べてみるのも一興だろう。

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『ゴーン・ガール』


ゴーン・ガール(初回生産限定) [DVD]ゴーン・ガール(初回生産限定) [DVD]
(2015/04/03)
ベン・アフレック、ロザムンド・パイク 他

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 『ゴーン・ガール』を映像配信で観た。



 これは面白かった。2時間半の長尺をまったく長いと感じさせない。
 序盤から終幕まで不穏な空気が漂いつづけるサイコ・サスペンスでありながら、シニカルな笑いがちりばめられたブラック・コメディでもあるという、重層的な傑作。

 R15指定作品で、それは性描写や殺人描写があるためだろうが、ストーリー自体、未成年にはわからないデリケートなくすぐりに満ちている。まさに「大人のエンタメ」である。

 ありがちなミステリーを思わせる設定から始まりながら、まったく紋切り型に陥らず、観客の予想を最後まで裏切りつづける展開もお見事。

 主人公のベン・アフレックも、ヒロインのロザムンド・パイクも、超ハマリ役。とくにパイクは、観終わったあとに「彼女以外あり得なかった」と感じさせる。ヒッチコックに彼女の映画を撮らせたかった。

 なお、主人公夫婦が2人ともフリーライターで、仕事を失ったことが亀裂のきっかけになるあたりも、私としては大いに身につまされるのであった(笑)。

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一風堂『ESSENCE:THE BEST OF IPPU-DO』


ESSENCE:THE BEST OF IPPU-DOESSENCE:THE BEST OF IPPU-DO
(2010/02/24)
一風堂

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 “私にとっての懐メロ・シリーズ”というわけで、今日は一風堂のベストアルバム『ESSENCE:THE BEST OF IPPU-DO』(ソニー・ミュージックダイレクト)を聴いた。

 一風堂のベストといえば、「すみれ September Love」が大ヒットしていたころに出た『ルナティック・メニュー』というのがあった。本作は、あれよりもはるかによくできたベストになっている。
 収録曲はおよそ倍増していて、CDの限界近くまで詰め込んであるし、選曲も素晴らしい。彼らが残した4枚のオリジナル・アルバムからのセレクトが好バランスだし、オリジナル・アルバムに入っていなかった曲やバージョンもいくつか含まれている。一風堂に対する愛情とリスペクトが感じられる、良質なベストだ。

 一風堂のオリジナル・アルバムはCDでは長らく入手困難で、最近ようやく配信等で手に入るようになった。なので、私も自分が好きな『REAL』や『RADIO FANTASY』を買おうかと思っていたのだが、「このベストがあればいいかな」と思えた。
 『REAL』所収でムチャクチャにカッコいい「FUNK #9 (A present for disco people)」「HEIDELBURG SYMPHONY」など、「なんであの曲を入れないんだ?」と思う曲もあるが、それはほんの2、3曲。ほぼ納得のいく選曲だ。

 私は、「一風堂といえば『すみれ September Love』」と決めつける風潮がキライだ。
 彼らの曲を「すみれ September Love」しか知らない人が多いのは仕方ないにせよ、「一風堂って『すみれ September Love』だけの一発屋でしょ」とか鼻で笑うヤツは許せん。だいたい、そういうヤツは土屋昌巳がどれほど才能あるアーティストか知っているのか。
 それはたとえば、「君に、胸キュン。」一曲だけ聴いてYMOを評価するようなものである。
 「すみれ September Love」は彼らのキャリアの中では異色作であり、むしろ出来の悪い曲だと私は思う。もっとスゴイ曲、カッコイイ曲がたくさんあるのだ。



 とくに、『REAL』と『RADIO FANTASY』は日本のロック史上に残る名盤なので、若いロック・ファンにもぜひ聴いてみてほしい。
 昔の『ロッキング・オン』で、『REAL』について、「このアルバムのギターは世界一の音色だ。小刻みに揺れるリズムギターのなんとカッコイイこと」というレビューがあったが、まったく同感。土屋昌巳は、ギタリストとしてもコンポーザーとしてもプロデューサーとしても素晴らしい。

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原田真二『MAGICAL HEALING』


MAGICAL HEALINGMAGICAL HEALING
(1992/11/20)
原田真二

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 最近は、昔LPレコードでよく聴いたアルバムをCDで再聴することが多い。
 今日は、原田真二の1985年作品『MAGICAL HEALING』を再聴。私はこのアルバムこそ、彼の最高傑作だと思う。本作に迫るのは、「原田真二&クライシス」時代のスケールの大きいロック・アルバムくらいか。

 プリンスやトレバー・ホーンなど、80年代中盤の最も先鋭的なアーティストたちの影響を、巧みに消化。そのうえで、ちゃんと「原田真二の音」にしている手際は、見事というほかはない。
 曲も粒揃い。「捨て曲なし」とはこういうアルバムのことを言うのだ。

 アルバム中最もキャッチーな「ORIENTAL KISS」から、名曲「永遠を感じた夜」へのシークェンスなど、まさに神展開。聴いていて背筋がゾクゾクする。



 ちょうど30年前の作品だから、音作りにはさすがに古臭い部分もある。だが、アルバムとしての価値は少しも減じていない。J-POP(なんて言葉は85年当時にはまだなかったが)史上に燦然と輝く名盤だ。

 このアルバムも長らく入手困難で、中古市場で高値を呼んできたが、2012年に出た『原田真二 35th Anniversary BOX』にBlu-spec仕様で収録され、手に入りやすくなった。

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蛇蔵『決してマネしないでください。』


決してマネしないでください。(1) (モーニング KC)決してマネしないでください。(1) (モーニング KC)
(2014/12/22)
蛇蔵

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 蛇蔵の『決してマネしないでください。』(講談社)1巻を、kindle電子書籍で購入。

 『モーニング』に月イチ連載中の「大人の学習マンガ」である。略称は「決マネ」だそうだ。
 子どものころ、「学研まんが ひみつシリーズ」が大好きだった私。「決マネ」は、「ひみつシリーズ」の面白さをそのままにして大人向けにしたような作品で、じつに楽しい。

 講談社のWebコミックサイト「モアイ」で第1話が丸ごと試し読みできるので、読んでみてほしい。
 
 架空の工科医大の「実験サークル」を舞台に、学生たちと教授が行うさまざまな面白実験が、毎回描かれる。
 ユニークな教授と学生たちのやりとりには、佐々木倫子の名作『動物のお医者さん』を彷彿とさせる部分もある。

 楽しみながら科学知識が得られる学習マンガとして上出来だし、科学史を学ぶ入り口にもなり得るマンガだ。というのも、ストーリーの合間に、科学史上の重要人物のエピソードが巧みに織り込まれているから。
 とくに、ラボアジエやニコラ・テスラ、ゼンメルヴァイス、ジョン・ハンターのエピソードは、箸休めの域を超えて面白い。

 物語のヒロインである「学食のおばさん」(といっても推定25歳)・飯島さんもキュートだし、それ以外の登場人物もキャラが立っている。
 小学生のころに『まんがサイエンス』(あさりよしとお)とかが好きだった人なら、絶対にハマるマンガだ。

■関連エントリ→ 児玉聡・なつたか『マンガで学ぶ生命倫理』レビュー

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増田寛也『地方消滅』


地方消滅 - 東京一極集中が招く人口急減 (中公新書)地方消滅 - 東京一極集中が招く人口急減 (中公新書)
(2014/08/22)
増田 寛也

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 今日は都内某所で取材。ゴーストの仕事なので、お相手はナイショ。


 行き帰りの電車で、増田寛也編著『地方消滅――東京一極集中が招く人口急減』(中公新書/885円)を読了。
 仕事の資料として読んだ。すでに21万部を突破したというベストセラーである。

 編著者の増田氏(前岩手県知事/元総務相)が座長を務める「日本創生会議」の報告書――通称「増田レポート」を書籍化したもの。
 「2040年までに896の自治体が消滅する」という衝撃的な予測で話題をまいた「増田レポート」を、さらにデータを補強し、対談・鼎談を加えるなどして重層的な内容にしている。

 少し前の「限界集落」は集落が人口減で立ち行かなくなって消滅するという話だったが、こちらは集落どころか自治体そのものが消滅するというのだから、さらに深刻だ。

 本書にまとめられた各種データを見ると、それが無根拠な煽りではなく、いまそこにある危機であることがわかる。とくに、「少子高齢化」という語のイメージとは裏腹に、地方ではすでに高齢者も減り始めている、という指摘に驚かされる。

 その危機に立ち向かうために著者たちが提示する処方箋が、「防衛・反転線」の構築――。すなわち、「山間部を含めたすべての地域に人口減抑制のエネルギーをつぎ込むのではなく、地方中核都市に資源を集中し、そこを最後の砦にして再生を図っていく」という方法である。

 目からウロコの指摘を多く含む本だし、資料的価値は高いが、本として面白いものではない。データの羅列に終始している部分が多く、政府が出す白書に近い内容であるからだ。

 最後の対談・鼎談(月刊『中央公論』掲載の再録)のみ、読み物として楽しめるが、ほかは無味乾燥な印象だ。
 本書は「新書大賞2015」にも選ばれたが、新書大賞は本来、もっと「本として面白い」ものに与えられるべきではないか。

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八神純子『コミュニケーション』『ヤガマニア』


コミュニケーション(紙ジャケット)コミュニケーション(紙ジャケット)
(2012/08/08)
八神純子

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 八神純子の『コミュニケーション』(1985)と『ヤガマニア』(1986)を聴いた。
 彼女の長いキャリアの中でひときわ異彩を放つ、アルファ・ムーン・レーベル時代の2枚。

 私は、アルファ・ムーン時代の八神純子にしか関心がない。それ以前/以後の作品もべつに嫌いではないが、自分から積極的に聴こうとは思わない。
 だが、ムーン時代の彼女は、突如覚醒したように先鋭的な音作りに取り組んだ時期であり、いま聴いてもカッコイイ。

 それまでは歌謡曲チックな「ニューミュージック」をもっぱら作っていた八神純子だが、ムーン時代には打ち込みのエレクトロ・サウンドと強烈なビートを大胆に導入した。曲調も、米国の先鋭的ブラック・ミュージックを彷彿とさせるものになった。

 当時の時代の寵児・プリンスの影響もあったのだと思うが、それ以上に、86年に八神が結婚した英国人音楽プロデューサー、ジョン・スタンレーの影響による激変だったのだろう。

 ただし、歌謡曲チックな面もまだ少し残っており、その面と先鋭的サウンドのギャップが、むしろ特異な魅力になっている。

 私は80年代後半に、ムーン時代のベスト盤『CHAPTERII BEST SELECTION』を中古LPで買って、愛聴していた。
 だが、その後ムーン時代の作品は入手困難となり、中古市場で高値を呼んでいたため、オリジナル・アルバムを丸ごと聴く機会はなかった。

 2012年に、八神純子のデビュー35周年を記念してムーン時代の3作(もう1つは『純』)が揃って紙ジャケ仕様で再発され、やっと聴く機会に恵まれたしだい。

 彼女のたくさんのアルバムのうち、紙ジャケ化されたのはムーン時代の3枚だけだ。この時期の作品がマニアックな高評価を受けていることを、象徴している。

 発売から約30年を経てやっと丸ごと聴いたわけだが、2枚とも傑作だと思った。とくに、『コミュニケーション』は捨て曲なしの充実作である。


↑『コミュニケーション』のオープニング・ナンバー「Imagination」。洗練されたエレクトロ・ダンス・チューン。


↑シングルにもなった「カメレオン」。歌詞を英訳してチャカ・カーンに歌わせたいような、ヒップなナンバー。


↑いち早く南アのアパルトヘイトをテーマにした意欲作「ジョハナスバーグ」。「都市のレゲエ」という趣のサウンドもカッコイイ。

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高城剛『2035年の世界』


2035年の世界2035年の世界
(2014/10/23)
高城 剛

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 一昨日は、戸田記念国際平和研究所のオリヴィエ・ウルバン所長を取材。昨日は南アフリカ共和国のモハウ・ペコ駐日大使を取材。
 もちろん通訳を介しての取材なのだが、英語での取材がつづくと、なんだか私自身も英語が堪能であるような錯覚に陥る(笑)。
 ペコ大使は、例の曽野綾子のアパルトヘイト肯定(としか思えない)発言をめぐって、最近メディアによく登場されている。ただし、昨日の取材は曽野問題とはまったく関係がない。


 高城(たかしろ)剛著『2035年の世界』(PHP研究所/1512円)読了。

 著者は、沢尻エリカの元夫として知られている人。昔使っていた「ハイパーメディアクリエイター」という肩書きといい、「なんかうさんくさい人だなあ」という印象を抱いている向きも多いことだろう。
 まあ、私もよく知らない人なのだが(昔『SPA!』で連載していたコラムは愛読していたが)、本書は大変面白かった。

 タイトルのとおり、いまから20年後の近未来をさまざまな角度から予測したコラム集である。
 科学・政治・経済・環境など8つの分野にまたがる未来予測が、全部で100項目。各項目が見開き2ページのコラムとなっている。

 著者は未来学者でも科学者でも経済学者でもないわけで、それらの未来予測にどの程度信憑性があるかといえば、まあ話半分であろう。
 著者自身、「科学書ともノンフィクションとも違う、私的な直感と妄想のなかから、2035年の未来を描いた」書であると、「はじめに」で定義している。

 が、けっして無根拠な与太話ではない。著者自身が研究者などと接するなかで聞いた話や、さまざまな最新情報を集めたうえで、その延長線上に描き出した直観的未来像なのである。
 項目によってはSF小説を読むように楽しめるし、未来を見通すための有益なヒントにも満ちている。

 SFチックな予測の例を引いてみよう。

 僕は、いくつかのパスポートを保有する富裕層が、自国ではなく合法的に「デザイナーズベイビー」を誕生させられることが可能な、「DNAヘイブン」で、子づくりを試みると考えている。その後、「生まれてきたものは仕方がない」と、人権を全面に押し出しながら社会に問う形で、なし崩し的に広がっていく未来を予測しているが、それは2035年より、もう少し先の話になるだろう。



 1990年代にはブランド鞄のニセモノが出回り、2000年代は違法ソフト、2010年代は違法ダウンロードが問題だったように、2030年代には、違法なDNAが地下市場を席巻するようになるだろう。



 「へーっ」と思った情報の例も挙げる。

 開発中であるHCPVと呼ばれる高集光発電システムを使えば、太陽光を2000倍にすることが可能で、サハラ砂漠の2%の敷地で全世界の電力をまかなうことができる。
(中略)
 スペインでは、夜も発電できるシステムが実用化されている。正確にいうと、このシステムは太陽光ではなく太陽熱発電だ。受光部のタンクに溶解塩が入っていて、昼間、太陽が当たると溶解塩が熱を帯び、その熱を利用して夜間も発電を行う。僕は実際に足を運んで観に行ったが、かなり大規模な施設で驚いた。中東マネーと欧州技術の結晶だそうだが、中東としても石油の次を考え、投資する必要があるのだろう。



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たかぎ七彦『アンゴルモア 元寇合戦記』


アンゴルモア 元寇合戦記(1) (角川コミックス・エース)アンゴルモア 元寇合戦記(1) (角川コミックス・エース)
(2015/02/10)
たかぎ 七彦

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 たかぎ七彦の『アンゴルモア 元寇合戦記』 (角川コミックス・エース)1巻を、kindle電子書籍で購入。

 元寇(蒙古襲来)を描いた歴史マンガは珍しいので、題材に興味を抱いて予備知識なしに買ってみたもの。
 ……なのだが、これが大当たりだった。細部までよく調べて描かれているし、エンタメとしての完成度もすこぶる高い。

 主人公の鎌倉武士・朽井迅三郎や、ツンデレキャラのヒロイン・輝日(てるひ)姫など、キャラの立て方もうまい。この作者は読者を楽しませる術を心得ている。



 物語の設定も魅力的だ。
 迅三郎は元々鎌倉幕府の御家人で、源義経が遺した兵法・義経(ぎけい)流の使い手だが、「二月騒動」(北条氏一族の内紛)に巻き込まれて謀反人と見なされ、流人に身をやつした。
 おりしも、対馬国の島主(地頭代)・宗助国は、元寇に備えて「死罪となるような囚人でも構わぬから、戦の役に立ちそうな者共あらば、助命の上この対馬に流してくれ」(読点は引用者補足)と幕府に依頼。腕に覚えありの流人12人が対馬に流されてくる……という設定なのだ。

 そして、対馬を舞台に、元軍対武士(+流人たち)の戦が始まる。
 どこか、“大規模にした『七人の侍』”という趣もあるストーリーである。あちらはたった七人の侍が野武士軍団から村を守る話であり、こちらは少数の対馬軍が多勢の元軍から島を守る話なのだ。

 タイトルの「アンゴルモア」は、ノストラダムスの有名な終末予言に出てくる「大王」の名。モンゴル帝国を意味するという説もある(「アンゴルモア」を「モンゴリア」のアナグラムと解釈して)。
 その説に由来するタイトルではあるが、べつにノストラダムスが出てくるわけではなく、ストレートな本格歴史マンガである。

 戦闘描写はすごい迫力だし、戦略的な駆け引きのディテールも面白い。今月10日に発売されるという2巻も楽しみだ。

■一部が「ComicWalker」のサイトで無料で読める→ アンゴルモア 元寇合戦記

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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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