![]() | 大前研一 日本の論点 2015~16 (2014/11/14) 大前研一 商品詳細を見る |
昨日は都内某所で取材。4人の方に30分ずつインタビューする(テーマは同じ)という、変則的な取材。1人に2時間インタビューするよりも、倍くらい疲れる。
行き帰りの電車で、大前研一著『日本の論点 2015~16』(プレジデント社/1728円)を読了。
『プレジデント』誌の連載「日本のカラクリ」の書籍化で、一昨年にも第1弾が刊行されているという(私は未読)。本書は、2013年後半から14年後半までの1年分からセレクトし、加筆修正を施したものである。
経済・外交など、さまざまな側面から「日本の論点」を取り上げ、問題点と解決への展望を論ずるコラム集。コラムといっても一回分が10ページ程度の長いものであり、読み応えがある。
計25の「論点」が取り上げられている。
ただ、「この一冊で『日本の論点』は整理できる」(惹句の一節)というのは言いすぎ。内容は大前の得意分野に限られているから、多分野の専門家が寄稿する文春の『日本の論点』のような網羅性はないのだ。
それでも、枝葉を大胆に切り落として問題点を抽出する手際は鮮やかで、面白くてためになる本である。「ニュース解説本」として見れば、池上彰の著作よりわかりやすいほどだ。
とくに感心したのは、米国の「シェールガス革命」が日本に与える影響を論じたコラム、ドイツと日本の間にここ20年でついた大きな差(もちろんドイツのほうが上)の理由を分析したコラム、民主党政権下で尖閣問題が炎上した背景を探ったコラム。
各コラムから、付箋を打った一節を引用しておく。
石油権益を守るため、アメリカは国防費の八割を中東に振り向けている。しかしシェールガス革命で中東へのエネルギー依存が低下すれば、その必要もなく、アメリカは軍事予算を削れる。財政赤字のかなりの部分は国防費だから、アメリカの財政収支は大幅に改善される可能性がある。これもドル高要因だ。
(中略)
米軍が中東から大きく手を引いた場合、中東の石油への依存度を高めている中国が、アメリカに代わって関与を深めてくる可能性が高い。
ドイツの占領軍は「ナチスの恐ろしさ」を骨の髄までわかっていたから、アメリカ型の連邦制という統治システムのタガをはめた。日本の占領軍も軍部独裁と全体主義の恐ろしさは理解していたが、江戸時代から続いて日本の隅々まで根付いていた中央集権体制の危険性までは理解が及ばなかった。
自民党外交の特徴は密約ベースの属人的な外交で、時のリーダーが相手国とどのような合意や約束をしたか(意図的に)文書にも残さず、正しい内容を国民に知らせてこなかった。それゆえに政権交代が起きると、外交関係が踏襲されないという大きな問題が依然として存在する。
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