大津波と原発 (2011/05/17) 内田 樹、中沢新一 他 商品詳細を見る |
内田樹・中沢新一・平川克美著『大津波と原発』(朝日新聞出版/777円)読了。
東日本大震災から3週間後の4月5日に、ユーストリーム配信の番組「ラジオデイズ」のために行われた鼎談をまとめたもの。
120ページ足らずの薄い本で、小冊子に近い。ボリューム面での物足りなさはあるのだが、内容は刺激的である。
顔ぶれを見ればわかるとおり、本書の眼目は大震災をめぐる時事的解説にはない。むしろ、その深層にある思想的意味について考えてみよう、という試みなのだ。
3人のうち、最も示唆に富む発言をくり返しているのが中沢氏で、本書の主役という感じ。
言いかえれば、東日本大震災の思想的意味とは、人類史的スケールで、しかも宗教的側面からも測られるべきものだということだろう。ゆえに、宗教学者・人類学者・思想家である中沢氏の言葉が、いまこそ生彩を放つのだ。
本書の圧巻は、「原子力と『神』」というチャプター。
そこで中沢氏は、原子力という人類にとっての「第七次エネルギー革命」が、「生態圏の完全に外にあるエネルギー源を取りだそうとした」ものであり、「地球生態圏の中に生きていた生き物の体の変成したもの」である石油・石炭などとは次元の異なる意味をもっていたと指摘する。
「原子力は一神教的技術」であり、日本の多神教文化にはもともとそぐわないものだったのだ、と……(そんなふうに断片的に紹介しても、未読の人には意味不明だろうが)。
この鼎談をベースに、中沢氏に東日本大震災の思想的意味を深く掘り下げた大著をものしてもらいたい。
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