![]() | ニッポン欲望列島 (2006/12) 本橋 信宏 商品詳細を見る |
本橋信宏著『ニッポン欲望列島』〈創出版〉、『何が彼女をそうさせたか/東京のある街角、ホテルに向かう人妻たちの素顔』(バジリコ)読了。
この著者の『心を開かせる技術』がわりと面白かったので、ほかの著作も読んでみた。
『ニッポン欲望列島』は、どぎつい書名とは裏腹にしみじみとした読後感を残す、ペーソスに満ちたエッセイ/ノンフィクション集。
月刊『創』の連載をまとめたもので、内容は、著者が取材などで出会った人々の横顔を綴った人生素描が中心。著者がこれまでやってきた取材仕事の舞台裏を明かすものでもあり、『心を開かせる技術』と対をなす著作ともいえる。
登場人物に、AVなどエロ系メディアの関係者が多いために『ニッポン欲望列島』という書名になったのだろうが、けっして煽情的な内容ではない。
たとえば、一時期はAV界の「帝王」と呼ばれたあの村西とおるを主人公とした、「村西とおる親子二代のドラマ」という一編がある。
村西は長男を「お受験界最高峰」の名門小学校(本には明記されていないが、慶應幼稚舎のこと)に合格させ、大きな話題をまいた。前科7犯のAV監督の子がその学校に合格したことは、お受験界の常識をくつがえす奇跡であったのだ。
「奇跡」を起こすまでに、村西とおるは息子をどのように育てたのか? その歩みを本橋が追ったこの一編は、しんみりと読ませる。
もう一冊の『何が彼女をそうさせたか』は、東京・大塚にたくさんある「人妻ホテトル」に著者が客として通いつめ、ホテトル嬢(兼人妻)たちから聞き出した身の上話を1人1章ずつにまとめたもの。
こちらは期待はずれだった。永沢光雄の『AV女優』みたいな味わいを期待したのだけれど、もっと下世話で薄っぺらい。
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