ピーター・D・ウォード『生命と非生命のあいだ』 |
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2008-07-17 Thu 22:25
ピーター・D・ウォード著、長野敬・野村尚子訳『生命と非生命のあいだ/NASAの地球外生命研究』(青土社/2730円)読了。 邦題がよくない。『生物と無生物のあいだ』(福岡伸一)がベストセラーになったので、そのコバンザメを狙ったとしか思えない。 それに、『生命と非生命のあいだ』という邦題は、かつてアイザック・アシモフの科学エッセイにも使われていたのである。『生物と無生物のあいだ』は、当然それを意識したタイトルだろう。つまり、本書の邦題は「パクリのまたパクリ」なわけだ。 ついでに、重箱の隅つつきを一つ。 青土社の本で前にも経験したことがあるのだが、著者と訳者の略歴を本の帯にだけ載せて、カバーにも奥付にも載せないというのはどういう了見なのか。これでは、帯なしの古書で購入したり、図書館でこの本を読んだりした読者には、著者の略歴がわからないということになる。 ……と、内容以前の部分でケチをつけてしまったが、中身は悪くない。むしろ、かなり面白い本だった。 著者は米ワシントン大学教授で、専門は生物学、地球・宇宙科学。新しい科学領域「宇宙生物学」の、主要人物の一人と目される研究者である。 「宇宙生物学」というと、「宇宙人はいるのか?」というSF的なテーマに取り組む荒唐無稽な学問のように思われるかもしれない。たしかに、地球外生命の存在可能性を検討し、探査することも、宇宙生物学の柱の一つではある。だが、それだけではない。 地球外生命の可能性を探ることは、とりもなおさず、地球の生命がどのように誕生したかという謎に迫ることでもある。 たとえば、「生命の起源」をめぐる仮説の一つに、「最初の生命は宇宙からやってきた」とする「パンスペルミア説(宇宙播種説)」がある。地球に飛来した隕石に含まれる有機物が生命の起源となったのではないか、などとする仮説だ。この「パンスペルミア説」の正否を探ることもまた、宇宙生物学の主要テーマの一つなのである。 そのように、宇宙生物学とは、生物学・天文学・化学・地学など、地球と宇宙を探求する諸科学を学際的に結び、「生命とは何か?」という古くからある巨大な問いに新たな角度から答えようとするものなのである。 著者は、NASA(米国立航空宇宙局)の宇宙探査チームの一員でもある。本書は、NASAの地球外生命研究をふまえ、宇宙生物学の最先端を紹介したものである。そして同時に、我々の生命観をしたたかに揺さぶる、壮大な思考実験の書でもある。 「何を生命とし何を非生命とするかについて、生物学の主流が現在の狭い見方からこの問題を不適切に扱ってきた」と著者は言う。 「狭い見方」とは、地球上の生命の特徴を、生命であるための絶対条件のように思い込むことを指す。宇宙には、「化学と代謝のもっとも基本的な特質において異なる多数の生命タイプがあるに違いない」と著者は言うのだ。 そして、どんな生命様式があり得るかが、いきいきと論じられていく。 “太陽系のほかの惑星に、いかなる生命が存在し得るか?”、“人工生命の合成は可能か?”など、興趣尽きない問いが次々と立てられ、答えが明快に示される。それらは思考実験ではあるが、たんなる空想ではなく、最先端の研究成果をふまえた現実味のある仮説なのだ。 宇宙生物学の視点から生命を定義し直した、哲学的な深みをもつ科学ノンフィクション。 |
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