祝! 『マンハッタン・オプ』復刊

マンハッタン・オプI (ソフトバンク文庫 ヤ 1-3) (ソフトバンク文庫 ヤ 1-3)マンハッタン・オプI (ソフトバンク文庫 ヤ 1-3) (ソフトバンク文庫 ヤ 1-3)
(2007/10/18)
矢作 俊彦

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 矢作俊彦の名作『マンハッタン・オプ』が、ソフトバンク文庫から全4巻で復刊された。長らく古書で探すしかない状態だったので、まことに慶賀に堪えない。

 これは、1980年代初頭にFM東京(いまの「TOKYO FM」)で放送されたラジオドラマを、台本を書いた矢作自らが連作短編小説に構成し直したもの。
 私は、元のラジオドラマも熱心に聴いていた。日下武史の渋い演技(朗読)と、渋い選曲の音楽で構成された極上のラジオドラマであった。当時高校生で、全身全霊で大人ぶりたい年頃だった私には、あのラジオドラマは「大人の世界」そのものに思えた。

 それをノヴェライズした本シリーズもまことに素晴らしく、私は旧文庫版(なぜか角川文庫と光文社文庫に分かれて、計5冊刊行されていた)を何度読み返したかわからない。私は、これこそ矢作俊彦の最高傑作だと思っている(矢作ファンには異論のある人もいようが)。それどころか、国産ハードボイルド・ミステリの到達点ですらあると思う。谷口ジローの挿画とカバー絵も絶品である。

 「ハードボイルドなんか好きじゃない。チャンドラーが好きなだけだ」とは矢作の名言だが、この『マンハッタン・オプ』は、日本人作家によるチャンドラーへのオマージュとして出色の作品。

 マンハッタンに住む名無しのオプ(探偵)を主人公に、各編が見事なストーリーをもつミステリが展開される。文体は洗練を極め、ユーモアとウイットが横溢。各編のタイトルがジャズのスタンダードの曲名になっているあたりもオシャレだ。

 もっとも、矢作本人は正統派ハードボイルドのパロディとしてこの作品を書いたのだという。
 パロディとして読んでも優れているし、パロディ性を意識せずに正統派ハードボイルドとして読んでも優れているという、矢作にしかできない離れ業をやってのけているのである。

 未読の若い読者は、復刊を機にぜひ読んでみていただきたい。

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ダイエットの真似事

 ダイエットの真似事を始めてみた。

 といっても、これまで昼と晩に2杯ずつ食べていたごはんを1杯ずつにするとか、間食をやめるという程度のことである。

 それと、 『いつまでもデブと思うなよ』でも紹介されていた「ミネラル豆乳ダイエット」(これは、以前取材したこともある赤星たみこさんが創始者)もやっている。野菜ジュースと豆乳を混ぜたものだけで朝食をすます、というもの。

 私は野菜ジュースも豆乳も好きで前から飲んでいたのだが、さすがに混ぜて飲んだことはなかった。やってみたら、意外においしい。

 たったそれだけのことなのだが、食事と食事の合間にけっこう空腹を感じる。で、昼食と夕食に何を食べてもおいしい。「ただのごはん」や「ただの味噌汁」が、すごくおいしく感じるのだ。

 花輪和一の傑作『刑務所の中』に、主人公の受刑者(花輪自身)が、「マーガリンをつけたパン」とか「牛乳」とか「しょうゆをかけたごはん」とか、なんでもないものを「脳が溶けるほど」うまく感じる、という場面がある。
 そのあとのモノローグ――。

 

 シャバでは身の回りにうまいものだらけなのに、グルメに狂うバカヤツラどもはもっとうまいものもっとうまいものと走り回っているうち舌がバカになってしまったんだな



 なんとなく、私もそんな気分である。「『東京ミシュラン』? ケッ!」という感じ(笑)。

   
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トニー・ウィリアムス『ライフタイム~ザ・コレクション』

Lifetime: The Collection Lifetime: The Collection
(1992/11/06)
株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント

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「渋いジャズ・ロックが聴きたい」シリーズ第2弾として、トニー・ウィリアムスの『ライフタイム~ザ・コレクション』を購入。

 ジャズにくわしくない私は、トニー・ウィリアムス(故人)といえば、「ハービー・ハンコックのV.S.O.P.クインテットでドラムスを叩いていた人」くらいの認識しかなかった。なので、正統派のジャズ(「ストレート・アヘッド」と言うんですかね?)ばかりをやっているのかと思っていたのである。

 だが、この『ライフタイム~ザ・コレクション』はバリバリのジャズ・ロックで、ものすごくカッコイイのである。

 ギターはプログレ畑の名手アラン・ホールズワース。このギターがまた流麗で素晴らしいのだが、プログレのテイストはあまりない。
 むしろ、ジェフ・ベックの『ブロウ・バイ・ブロウ』とかコージー・パウエルの『オーバー・ザ・トップ』あたりを彷彿とさせる、骨太で男臭いジャズ・ロックになっている。

 ドラマーのリーダー・アルバムだから、当然ドラムスが音の核になってはいるのだが、さりとて、音のバランスを崩してまでテクニックをひけらかすような「俺が俺が」という自己顕示はない。BGMとしても極上の心地よい音楽である。

 このアルバムは、1975年の『ビリーヴ・イット』と、76年の『ミリオンダラー・レッグス』を2枚丸ごと収録したカップリング盤である。前半6曲が『ビリーヴ・イット』収録曲だ。

 2作では、かなり音の感触が異なる。『ビリーヴ・イット』は、緊張感がピーンと張りつめたクールでスペイシーなジャズ・ロックになっている。対して、『ミリオンダラー・レッグス』はややファンキーでお気楽な音。いい曲もあるけど、スカみたいな(音楽ジャンルのスカではなく、ハズレのスカ)ヴォーカル入りナンバーが入っていたりして、前半の緊張感が台無し。

 『ビリーヴ・イット』収録の6曲のほうが、圧倒的に出来がよい。後半の7曲が余分に思えてくるくらい。この『ビリーヴ・イット』路線で、もっとアルバムを出して欲しかったなあ。

 ジェフ・ベックの『ブロウ・バイ・ブロウ』『ワイアード』『ゼア・アンド・バック』あたりが好きな人で、未聴の人には絶対オススメ。

 
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町田宗鳳・島薗進編『人間改造論』

人間改造論―生命操作は幸福をもたらすのか?人間改造論―生命操作は幸福をもたらすのか?
(2007/09/20)
鎌田 東二; 粟屋剛; 上田紀行; 加藤眞三; 八木久美子

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 町田宗鳳・島薗進編『人間改造論』(新曜社/1800円)読了。

 生命操作技術の発展とともに、それを用いることが倫理的に許されるか否かが問われる局面が増え、そこから「生命倫理学」が生まれた。昨今注目を浴びている「人クローン胚」の再生医療への応用を例にとれば、“胎児の前段階である胚に、クローン技術による操作をくわえることが許されるのか?”という重い問いが立ちはだかっている。

 そのような倫理的難関に立ち向かうべく、医学と宗教学、法学、哲学など多様な分野の研究者による学際的取り組みが増えてきた。本書も、そうした試みの一つから生まれたものである。「脳死・臓器移植に関する比較宗教学的研究」に共同研究者として参加したメンバーが、そこでの議論をふまえ、さまざまなテーマについて論じた小論集なのだ。

 研究の出発点となった脳死・臓器移植のみならず、生命操作の枠には収まらない事柄に至るまで、幅広いテーマが取り上げられている。

 たとえば、収められた全7編の小論のうち、上田紀行(文化人類学者)の「心のエンハンスメント」は、自己啓発セミナーに代表される人工的な人格改造法について論じている(「エンハンスメント」とは「改造」の意)。
 また、肝臓病治療の第一線で活躍する医師である加藤眞三は、医療が「人間改造」としての側面を強めつつある現状に警鐘を鳴らしている。

 生命操作を核とした広義の「人間改造」について、「どこまで許容できるのか。許容できないとすればどこに問題があるのか。歯止めをかけるとすれば、その根拠は何なのか」を問う一書なのである。

 執筆者の学問的背景は「通常の意味での生命倫理学を大きくはみ出して」多様だが、宗教に造詣の深い論者が多い。「人間改造」の是非について、宗教的視野から深く掘り下げていることが、本書の特長となっている。

 たとえば、鎌田東二(宗教哲学者)はその小論の中で、キリスト教と生命操作の親和性を指摘する。「人間に特権的な位置と力を与える聖書的生命観」ゆえに、仏教などよりも「遺伝子操作やクローニングを受容しやすい思考形態を生み出した」というのだ。生命倫理のありようが宗教文化によって多様であることを、本書の各論は改めて教えてくれる。

 本書は、「人間改造」をめぐるさまざまな論点について、議論の基礎的視座を提供するものである。そして同時に、自明のものと受けとめられがちな「人間の尊厳」「生命の尊厳」という理念について、改めてその内実をとらえ直す試みでもある。 
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「理想の体制」を夢想する

 以下、ただの愚痴と夢想です。

 昨日、今日と2日連続でパソコン関係のトラブルに巻き込まれた。クソ忙しいときにかぎってこうである。

 昨日は、メールのトラブル。朝イチ恒例のメールチェックをしたところ、何かとてつもなく容量の大きいメールが入っているような案配で、メールがいっこうに受信完了しない。
 マイクロソフトのサポートに電話したところ、「アウトルックエクスプレスは無償製品なのでサポート対象外です」と言われる(仕事のメールも全部Gメールに乗り換えようかと思う)。

 で、プロバイダのサポートに電話したところ、サーバーに届いている自分宛てのメールを確認できるサービスを教えてくれた。
 サーバーをチェックしたらアヤシげなスパムが何通かあったので、それを削除したところ、あっさり復旧。しかし、そこまでに数時間を無駄にしていた。

 今日は、朝にパソコンを立ち上げたところ、「いますぐアクティヴ化しないと、あと一日で無効になります」というノートンのアラートが……。有効期限はまだ先なのに、無効になるという脅しを受ける理由がよくわからない。

 で、「アクティヴ化」に必要な「プロダクトキー」を、あちこち探して入力したのだが、受け付けない。仕方なくノートンのサポートに電話。さんざん待たされたのち、正しいプロダクトキーを教えてもらい、無事復旧。そこまでにまた3時間を浪費。

 「あーあ」とため息。
 でもまあ、ふだんパソコンから受けている「便利さの恩恵」と秤にかければ、ごくたまに起きるこういうトラブルから受ける不利益など何ほどのこともない……と思うことにする。

 パソコン関係の高いスキルをもった「IT秘書」が常駐していればいいのにな、と思う(願わくば美女)。
 ついでに、スケジュールをビシっと管理する有能なマネージャーと、有能な営業マンが一人ずつ。
 それと、テープ起こしなどの雑事を一手に引き受けてくれる、文句を言わない有能な助手も一人。
 以上4人のスタッフを私につけてくれれば、いまの数倍の質量の仕事をこなしてみせよう。 

 ……仕事に戻ります(笑)。
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ASIAN KUNG-FU GENERATION「アフターダーク」

アフターダークアフターダーク
(2007/11/07)
ASIAN KUNG-FU GENERATION

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  アジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)の新曲「アフターダーク」を、遅ればせながら聴いた。「ワールドアパート」の流れを汲む疾走チューン。

 曲もいいけど、それ以上にPV(→こちらをクリック)の出来が素晴らしい。わずか3分余の短い曲なのに、上質の短編映画のように見ごたえがある。  朝起きたら、背中に翼が生えていた若いサラリーマンの物語。三島由紀夫の美しい掌編「翼」を彷彿とさせる。

 

 この忠実な勤め人の黙りがちな青年は、異様な肩凝りに悩まされながら、何の役にも立たない巨きな翼を背負って勤め先へ通った。(中略)この翼さえなかったら彼の人生は、少くとも七割方は軽やかになったかもしれないのに。翼は地上を歩くのには適していない(「翼」)



P.S. 
「アフターダーク」のPVにサラリーマン役で主演している俳優は、宮崎あおいの実兄・宮崎将なのだそうだ。ううむ。映画『ユリイカ』のあの少年が、もうこんなに大人になったのかー。
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小玉ユキ『光の海』『羽衣ミシン』

光の海 (フラワーコミックス)光の海 (フラワーコミックス)
(2007/01/26)
小玉 ユキ



 コミックスの帯に「『あたしこのマンガ、大好きです。』 吉田秋生 推薦!」という惹句が躍っていて、思わず手に取った小玉ユキの『羽衣ミシン』(小学館/410円)。読んでみたら、すごくよかった。
 で、同じく小玉ユキの『光の海』(小学館/410円)も、これまたよかった。

 小玉ユキのマンガ家デビューは2000年だそうだが、今年1月に刊行された『光の海』が初のコミックスである。8月末に出た『羽衣ミシン』が、第2弾。

 小玉ユキ公式サイト→ http://www012.upp.so-net.ne.jp/kodamayuki/
 
  『光の海』は、日常生活の中に人と人魚が共存している世界が舞台の連作短編。
  『羽衣ミシン』は、民話の「鶴の恩返し」をベースにしたラブストーリー。一羽の白鳥を助けた大学生のアパートに、白鳥が化身した美しい娘が訪れ、“押しかけ妻”になるという物語である。

羽衣ミシン (フラワーコミックス)羽衣ミシン (フラワーコミックス)
(2007/08/24)
小玉 ユキ



 つまりは、2作ともファンタジー。ただし、基本設定はファンタジーでも、ディテールはごく日常的な普通の青春マンガの趣で、そのギャップが面白い。いわば、“マジック・リアリズムの手法で描かれた青春マンガ”なのである。

 たとえば、『光の海』所収の短編の中では、人魚たちは「条例で保護された」希少な海洋性哺乳類で、そのくせ人の言葉を解する。解するどころか、なぜか人魚も関西弁で話したりする(笑)。
 表題作「光の海」で、主人公の青年僧侶と美しい人魚の娘がかわすやりとりを引こう。

 

「人魚は死んだら周りの魚たちに食べられて、それで終わりや。何も残らへんしどこにも行かへん……人間は死んだら何に食われるのん? 鳥とか?」(中略)
「何にも食われません」
「…ふうん、食われへんの。なんかちょっとむなしいなあ。かわいそうになあ」



 『羽衣ミシン』もしかり。
 木下順二の名作戯曲『夕鶴』は、やはり「鶴の恩返し」をベースにしながらも、現代の日本人に生き方を問う物語になっていた。『羽衣ミシン』も、ちゃんと「いまどきのラブストーリー」になっている。

 私は、2冊のうち『光の海』のほうを断然気に入った。吉田秋生の青春マンガをファンタジー仕立てにしたような好編揃いなのだ。絵柄も、シンプルかつハイセンスで好ましい(小玉ユキはイラストレーターとしても十分食っていける)。

 その吉田秋生が推薦の辞を寄せているのは『羽衣ミシン』のほうなのだが、こちらは吉田秋生というよりはやや大島弓子テイストという感じ。
 白鳥の化身であるヒロイン・美羽がカワイクて「萌え」なのだが、『光の海』の各編に比べると、話がちょっと甘すぎるかな。
 
 ともあれ、小玉ユキは要注目の新しい才能である。 
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『ナチョ・リブレ/覆面の神様』

ナチョ・リブレ 覆面の神様 スペシャル・コレクターズ・エディションナチョ・リブレ 覆面の神様 スペシャル・コレクターズ・エディション
(2007/11/22)
ジャック・ブラック、アナ・デ・ラ・レゲラ 他

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 DVDで『ナチョ・リブレ/覆面の神様』を観た。貧しい修道院の調理係が、院の孤児たちにおいしいものを食べさせたいと(というより、新しくやってきた美しいシスターのために)、ひそかに覆面レスラーとなってリングに立つ、というコメディ。

 主演ジャック・ブラック、脚本マイク・ホワイトという、傑作『スクール・オブ・ロック』の黄金コンビの作品なので大いに期待したのだが、かなりガッカリ。『スクール・オブ・ロック』の面白さに遠く及ばない。 ギャグがベタすぎて爆笑というより苦笑の連続だし、シナリオも雑なのだ。

 たとえば、“女性にいいところを見せようと、デートの最中、チンピラ役の知人にからんでもらう段取り芝居を仕組んだものの……”というシーンがある。吉本新喜劇じゃあるまいし、こんなベタベタな展開、まさか21世紀のハリウッド映画で見るとは思わなかった。

 とはいえ、私自身がプロレスにまるで興味がないから、プロレス・ファンにしかわからないギャグや微妙なくすぐりを全部素通りしてしまったのかもしれない。 『スクール・オブ・ロック』にしても、ロック・ファンにしかわからないくすぐりがかなり盛り込まれていて、だからこそ私にはいっそう面白かったわけだから。

 ジャック・ブラックの熱演だけは相変わらず素晴らしいのだが……。
 
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岡田斗司夫『いつまでもデブと思うなよ』

いつまでもデブと思うなよ (新潮新書 227) いつまでもデブと思うなよ (新潮新書 227)
岡田斗司夫 (2007/08/16)
新潮社



 岡田斗司夫著『いつまでもデブと思うなよ』(新潮新書/700円)読了。
 いわずと知れた大ベストセラーである。いま、書店でもたいてい平積みになっている。

 仕事がらみで読んだのだが、読みながら「私もダイエットしてみようかな」という気持ちが湧き上がってきたりして……。

 現状62㎏なのでデブというほどではないが、じつは腹などがメタボってきているのだ。30代前半までは、平均52㎏程度だった。「10年で10㎏増」はけっこうバカにならない変化である。

 私は以前、ゴーストライターとしての仕事でダイエット本を何冊も手がけたことがある(しかも、自分がいちばんやせていた時期にw)。そんな事情から、世の平均的男性諸氏に比べたら、たくさんのダイエット本を読んでいるのだ。

 その私から見ても、本書は「ダイエット本」として抜群のクオリティである。いろんな意味で「コロンブスの卵」というか、「ううむ、その手があったか!」と唸らされるような内容。各出版社でダイエット本を手がけてきた編集者たちは、きっとくやしがっていると思う。

 ダイエットのノウハウとしては、とくに画期的なことを言っているわけではない。一番の売りになっている「レコーディング・ダイエット」にしても、「食べたものを記録することの効用」それ自体は、これまでのダイエット本にもしばしば書かれていた。それ以外の細かいノウハウも、独創的というほどではない。

 ただし、それを本の中で展開させるやり方が抜群にうまいのである。ハウツー本でありながら、読んで面白いエッセイにもなっている。さらには、「ダイエット文化論」としても読める。

 要は、「これまでダイエット本など読んだことがなかった」層が抵抗なく手に取れるように、幾重にも工夫がなされたダイエット本なのである。

 男性向けとはっきり銘打ってはいないものの、タイトルも含めて男性寄りにターゲットしているのは明らかで、その点もうまいと思う。男性用のダイエット本は、ないわけではないが、女性向けに比べたらはるかに少ない。ゆえに競争相手が少ない。
 あえて新書でダイエット本を出したのも、「ダイエット本を読んだことがない層」を取り込むための著者の戦略だろう。

   
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『迷子の警察音楽隊』

 京橋の映画美学校第二試写室で、『迷子の警察音楽隊』の試写を観た。12月22日公開の、イスラエル/フランス合作映画。
 カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門で三賞を獲得し、東京国際映画祭でも最優秀作品賞(サクラグランプリ)を受賞。その他、各国で受けた映画賞を合わせると計24冠(!)になったという、話題の傑作である。

 公式サイト→ http://www.maigo-band.jp/main.html

 時は1990年代初頭――。エジプトはアレキサンドリアの警察音楽隊8名が、文化交流のため、隣国イスラエルに赴く。
 ところが、なぜか空港に出迎えはない。やむなく自力で目的地にたどりつこうとした一行は、地名を一字間違えて、ホテルすらない辺境の町に迷い込んでしまう。

 音楽隊の隊長・トゥフィークと、町の食堂の美しい女主人・ディナのやりとりがおかしい。
「マダム、このへんにアラブ文化センターはありませんか?」
「文化センター? この町には文化さえないわ」
 1日に1本しかないバスも、もう終わってしまったという。

 途方に暮れる8人だったが、ディナの好意で、食堂・ディナの家・常連客の家の三方に分かれて翌朝まで泊めてもらうことになった。
 だが、言葉も宗教も違い、互いに相容れないアラブ人とユダヤ人。一夜の宿は、気まずさと不協和音の波乱含みだ。

 それでも、音楽という世界共通語が架け橋となって、彼らはしだいに打ち解けていく。そのような、“民衆レベルの文化交流”の物語である。

 イスラエルとエジプトは、隣国となってからの年月の半分を戦争状態で送り、残り半分も「冷たい和平」の状態にあった。したがって、これは「政治的」に描こうとすればいくらでもそうできる題材だ。
 が、脚本・監督のエラン・コリリンはそうしなかった。政治性はスパイス程度にとどめ、文明間対話などというお堅いテーマは底に沈め、ユーモアとペーソスを映画の主調音にしているのだ。その上で、ディナとトゥフィークの一夜の恋などのドラマを盛り込んで、心あたたまる映画に仕上げている。

 エラン・コリリンは1973年生まれの若手で、これが長編デビュー作だという。とてもそうは思えないほど、抜群にうまい映画である。
 不自然な説明ゼリフは一切なく、伝えたいことは登場人物の表情などで過不足なく伝えている。また、不要な場面もなく、すべてのシーンが物語の流れの中でたいせつな役割を果たしている。
 プレスシートには「アキ・カウリマスキのようなユーモアとジム・ジャームッシュの映像感覚をあわせもつ新鋭監督」との言葉があるが、納得。

 低予算で作られたことが一目瞭然な映画だが、少しも安っぽくないし、退屈しない。低予算でも、アイデアとセンスさえあればこんなにもいい映画が作れるのだ。
 
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門倉貴史『ワーキングプア』

 

 門倉貴史著『ワーキングプア/いくら働いても報われない時代がくる』(宝島社新書/720円)読了。

 最近矢継ぎ早に著作を出している若手エコノミストが書いた、「ワーキングプア問題入門」という感じの本。たいへん手際よくまとまっていて、問題の全体像を鳥瞰するには手頃な一冊である。

 ただ、各章の終りに掲載されている「ドキュメント『ワーキングプア』」なるインタビュー記事が拙劣。タイトルのとおり、さまざまなタイプの「ワーキングプア」の人へのインタビューをまとめたものなのだが、取材が浅くてまったく読みごたえがない。

 先日読んだ、「NHKスペシャル」をまとめた『ワーキングプア/日本を蝕む病』の場合、一人のワーキングプアに数ヶ月もかけて取材を行なっている。それに対して本書のインタビューは、1時間くらい話を聞いただけで記事をまとめているのが見え見えだ(もちろん、予算潤沢な「NHKスペシャル」だからこそ厚い取材が可能なわけだが)。

 しかも、「あとがき」の謝辞から察するに、インタビューとまとめは編集者もしくはライターが行なったらしく、本文に比べて文章の質が低い。
 ページ数の半分くらいを全10本のインタビュー記事が占めているのだが、このコーナーは全部なくして、門倉の分析をもっと深めたほうがよかった。

 インタビュー部分を飛ばして読むべき本。そうすると1時間で読めて、有益である。
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『幸福な食卓』

幸福な食卓 プレミアム・エディション [DVD]幸福な食卓 プレミアム・エディション [DVD]
(2007/06/22)
北乃きい.勝地 涼.平岡祐太.さくら.羽場裕一.石田ゆり子

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 『幸福な食卓』をDVDで観た。今年1月公開の邦画。瀬尾まいこの同名小説の映画化である。

 「父さんは、父さんをやめようと思う」と父親が宣言するファーストシーンの印象から、大島弓子の名作短編「毎日が夏休み」のような物語なのかと思ったが、そうではなかった。
 わりとオーソドックスな家族再生の物語であり、長女の初恋を軸にした青春映画でもある。

 映画史に残るような作品でも、年間ベストワンに選ばれるような作品でもないが、それでも、長く心に残りそうな愛すべき佳品である。ドビュッシーやラヴェルが書いたピアノ曲の小品のような映画。シンプルで、静謐で、上品なのだ。

 北乃きいと勝地涼が演じる恋人たちの、なんとさわやかなこと。「ファーストキスが人生の一大事」だった時代を思い出して、懐かしい気分になった。瀬尾まいこの原作も読んでみようと思う。

 なお、瀬尾まいこは、このように映画化作品もあるほど人気作家となったいまも国語教師をつづけているのだそうだ。『朝日新聞』のインタビューでも次のように述べている。

「私の本業は中学校の国語の先生です。子どもの頃から先生になるのが夢でした。土日を利用して書いています。小説を書くのは仕事と思っていません。私は楽しくなくなったら、書かんでもええだろうと思っています」

 『墨攻』の酒見賢一も、いまなお住宅設備会社に勤務しながら小説を執筆している。
 2人とも、まことに賢明だと思う。
 本の売れない昨今、賞の一つや二つ取ったところで小説だけで食っていける可能性は高くないし、ちゃんと別の正業を持っていたほうが、小説で“食うための妥協”をせずにすむからだ。
 これからは、瀬尾や酒見のような兼業小説家も増えていくことだろう。 

P.S.森見登美彦も、(ウィキペディアによれば)「現在は図書館勤めの傍ら、執筆活動に励んでいる」のだそうだ。

 
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トーリ・エイモス『テイルズ・オブ・ライブラリアン』



 「本国では人気絶大なのに、日本ではあまり人気がない」というアーティストは少なくない。代表的なのがザ・フーで、英米ではローリング・ストーンズと並び称される超大物なのに、日本ではストーンズよりはるか格下の扱いを受けている。

 アメリカの女性シンガー・ソングライター、トーリ・エイモスもしかり。本国およびヨーロッパでは絶大な人気を誇るのに、日本では知る人ぞ知る存在にとどまっている。

 かくいう私もつい最近まで聴いたことがなかったのだが、いまとても気に入っている。

 ピアノ弾き語りのスタイルからアンジェラ・アキと比較されることが多いようだが、全然違うと思う。むしろ、私が受けた印象は「アコースティック寄りのケイト・ブッシュ」というもの。

 誰にも似ていない独創的なメロディー・ライン、文学的香気漂う歌詞、聖性と官能性がせめぎあう作品世界、美声なのにどこか狂気を孕んだヴォーカル、美人なのにどこか病的な凄みを帯びたルックス……トーリ・エイモスとケイト・ブッシュには、ざっと挙げただけでもそれだけの共通項を感じる。

 そんなわけで、ケイト・ブッシュが好きな私は、自然の流れでトーリ・エイモスも好きになったのである。

 トーリのベスト・アルバム『テイルズ・オブ・ライブラリアン』をヘビロ中。いや、これは強烈な名曲揃いである。彼女自身のこれまでの半生が投影された、生々しくも切実な歌の数々……。
 たとえば、「コーンフレーク・ガール」は、かつてコーンフレークのCMに出演したことのあるトーリが、「私はコーンフレーク・ガールにはなれなかった」と歌うもの。
 「ミー・アンド・ア・ガン」は、彼女自身の被レイプ体験を歌にした、血を流すような一曲。アカペラで切々と歌われる悲劇の記憶には、背筋も凍る迫力がある。

 
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姜尚中さんを取材



 昨日は、東大で政治学者の姜尚中さんを取材。姜さんへの取材は5回目くらいか。

 今回は「アジアの中の日本」がテーマなので、関連する姜さんの近著をダーッと読んで臨む。『増補版 日朝関係の克服――最後の冷戦地帯と六者協議』『ニッポン・サバイバル』『姜尚中の政治学入門』(いずれも集英社新書)、『愛国の作法』(朝日新書)、『日本人はどこへ行くのか』(だいわ文庫)の5冊である。

 5冊のうち、目からウロコだったのは『増補版 日朝関係の克服』。“日本は北朝鮮にどう向き合っていくべきか”をテーマに据えた提言の書である。姜さんは、日朝国交正常化こそが、じつは「北朝鮮問題」を終りに導くための有効な手段だと訴える。

 「増補版」とあるように、元本は2003年に出たもの。2003年の時点で日朝国交正常化を提言するのが、いかに勇気のあることだったか。「なぜあんな国と国交を結ぶ必要がある!?」「北朝鮮シンパか!」などというヒステリックな反発を生んだであろうことは、想像に難くない。

 しかし、姜さんは本書で、すぐにも北朝鮮が崩壊するかのような予測には根拠がないこと、国交正常化はけっして「北朝鮮に屈する」ことではないことを、諄々と説いていく。

 週刊誌レベルの北朝鮮脅威論とは次元の違う、政治学者の冷静なまなざしが光る一書。

 ほかの4冊では、『姜尚中の政治学入門』に感動。
 オーソドックスな政治学入門とは異なり、「アメリカ」「暴力」「憲法」「戦後民主主義」「東北アジア」などの7つのキーワードを立て、各一章を割いてそれらのキーワードを解説していくスタイルをとっている。
 つまり、タイトルが示すとおり、「姜尚中の」政治学とはいかなるものかを改めて示したものなのである。入門というには高度な内容だが、姜尚中ファン必読の書だ。 
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『ここに幸あり』

 京橋テアトル試写室で、『ここに幸あり』の試写を観た。
 名匠オタール・イオセリアーニの、『月曜日に乾杯!』 以来4年ぶりの新作。12月1日公開予定。

 公式サイト→ http://sachiari.jp/

 公式サイトに、各界著名人の推薦コメントが載っている。その中で、私の好きな矢野顕子とアン・サリーもそれぞれ称賛を寄せていたので、「これは観てみたい」と楽しみにしていた作品。

 期待どおり、なかなかよかった。ヘンな言い方に聞こえるかもしれないが、矢野顕子やアン・サリーの音楽が好きな人ならきっと気に入るであろう映画だ。

 舞台は現代のパリ。大臣のヴァンサンは、失言でやり玉にあがって突然罷免されてしまう。
 権威と富と住む場所を一度に失って「ただの人」になったヴァンサンのもとから、愛人はさっさと去っていく。別れた妻を訪ねてみても、冷たくあしらわれるばかり。ヴァンサンはすっかり意気消沈して、老いた母が暮らす故郷の街に帰る。

 だが、そこで懐かしい友たちと酒を酌み交わし、ギターを奏で、心優しき女性たちに出会ううち、彼の心は癒され、大臣だったころには忘れていた心からの幸福感を味わうのだった。

 ……と、そのように骨子だけを紹介してみると、教訓話めいたクサイ映画に思われるかもしれない。

 まあ、たしかに「お金や権威をもつことが幸福なのではない。人生にはもっとたいせつなものがある」ということをテーマにした映画ではあるのだが、そのテーマの伝え方が少しも説教臭くなくて、軽妙洒脱なのである。

 なにより、全編にちりばめられたあたたかいユーモアが素晴らしい。それは、日本のお笑い番組にまま見られるような、とげとげしく空虚な笑いではない。誰も傷つけない笑い。人生を大らかに肯定する笑い。そのような笑いに満ちた、ハッピーでノンシャランな「人間讃歌」である。 
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『イッツ・ア・ニューデイ』

 京橋の映画美学校第一試写室で、『イッツ・ア・ニューデイ』の試写を観た。12月公開の邦画。

 公式サイト→ http://www.newday-movie.jp/

 テレビドラマの『逃亡者おりん』(私は未見だが)に主演するなどして注目を浴びている、青山倫子の初主演映画である。
 上品で清潔感のある和風美人で、なかなかよい。なんとなく、「同性にも好かれそうな美人」だという気がする。

 青山が演じるヒロイン・沙織は、フランスの一流大学を出てMBAも取得している有能なビジネスウーマンながら、事故でパートナーを亡くし、派遣社員として働いて息子を育てているシングルマザー。

 沙織と、彼女の派遣先の社員・甲斐との恋を描いたラブストーリーである。
 甲斐は、仕事のストレスから突然心因性の難聴になってしまう。だが、なぜか派遣されてきた沙織の声だけは聞こえる。そのことが2人を結ぶ糸となるのである。この設定はなかなか面白い。

 全体に、映画というよりテレビドラマのようにこぢんまりとまとまった作品(上映時間も1時間10分と短い)。でも、青山倫子がキレイだから許す(最近こればっか)。
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前田知恵さんを取材

NHK テレビ 中国語会話 2007年 07月号 [雑誌] NHK テレビ 中国語会話 2007年 07月号 [雑誌]
(2007/06/18)
日本放送出版協会



 昨日は、渋谷のNHKで女優の前田知恵さんを取材。

 前田さんは、中国で2本の映画に主演するなどして活躍したのち、昨年からは日本で活動している女優。現在はNHK教育テレビの「中国語会話」に出演中だ。 → 所属事務所のプロフ・ページ

 現在まだ26歳だが、これまでの半生が一本のドキュメンタリーになるくらい、ドラマティックで濃密である(じっさい、中国では彼女のドキュメンタリーも作られたらしい)。

 もともと女優になる夢を抱いていた前田さんは、高校生のころ、『さらば、わが愛/覇王別姫』と『宋家の三姉妹』という2本の中国映画に深く感動。「中国で女優になりたい!」と思うようになる。そして、1999年、高校卒業と同時に単身中国に渡るのである。

 そのとき彼女が知っていた中国語は、たったの数語。日本での演技経験もとくになく、女優になれる保証などまったくなかった。
 それでも、「自分が女優になることで、日中友好の架け橋になりたい」との決意を抱いていた彼女は、北京で懸命に中国語と演技を学び、伝統ある「北京電影学院」演劇科に合格。外国人が同科の「本科生」となったのは、彼女が史上初だったという。

 電影学院在学一年目にして、中国映画『紫日』に主演。2本目の主演作品となった『北京の恋――四郎探母』(2004年/原題は『秋雨』)は、先週から日本で公開中だ。
 2005年には、チェン・カイコーの映画『PROMISE 無極』の撮影にあたって、主演の真田広之の通訳もつとめた。その5年前にはわずか数語の中国語しか知らなかった彼女は、通訳をつとめられるほど中国語が堪能になっていたのである。また、チェン・カイコーは、前田さんが中国へ渡る決意をするきっかけとなった、『さらば、わが愛/覇王別姫』の監督でもあった。

 至近距離で見る前田さんは、めちゃめちゃカワイかった。つぶらな瞳が小動物のようで、テレビで見るよりもはるかにチャーミング。
 たんにカワイイだけではない。聡明で、明るく前向きで、気取ったところがなく、接する者に希望を与えるような女優さんであった。

 そもそも、高校生にして「日中の架け橋になりたい」と決意して単身中国に渡るなんて、それだけで只者ではない。同じ女優でも、沢尻某とは雲泥の差だ。日本には、こんなに素晴らしい若者もいるのである(なんかジジムサイ感慨)。

 北京オリンピックもあることだし、来年、前田さんは日本でも必ずやメジャーブレイクするにちがいない。
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古市幸雄『「1日30分」を続けなさい!』



 小沢一郎の突然の民主党代表辞任に仰天。てゆーか唖然。
 安部晋三が総理を辞めたときに鬱病の可能性がさかんに指摘されたが、私は小沢一郎こそ、かなり重いトラウマを抱えて生きている人なのではないかと思う。

 政権が手に入りそうになったり、「いよいよ自分の天下」という状態になるたびに、「でーい!」とちゃぶ台ひっくり返すみたいにすべてをパーにする行動パターンは、フロイトの言う「反復強迫」そのものではないか。あれはもう、「小沢さんのいつものワガママが……」などというレベルの話ではなく、「病理行動」なのだと思う。

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 古市幸雄『「1日30分」を続けなさい!/人生勝利の勉強法55』(マガジンハウス/1300円)読了。

 すでに30万部を超えたという、本年のベストセラーの一つ。
 この前読んだ『四○代からの勉強法』とちょうど同傾向の本。著者がMBAを取得したバリバリのビジネスマンであるあたりも似ているし、内容が徹頭徹尾実用的・具体的である点も共通している。

 “本書は、もともと勉強ができる人ではなく、これまで勉強の習慣がなかった人を対象にして書かれている”という著者の言葉に納得。いかにして勉強を習慣づけるか、いかにしてモチベーションを保つかについてのノウハウが、微に入り細を穿って説かれている。

 よい本だとは思うが、既成の勉強本のエッセンスを器用にまとめ、自分流のアレンジをくわえた、という程度のものであって、とくに画期的な点があるわけではない。

 たとえば、“脳科学から見た上手な勉強の仕方”に触れたくだりは池谷裕二氏の著作の受け売りだし、“勉強効率アップのための食事”についてのくだりも、新谷弘実の『病気にならない生き方』などの受け売りだ(出典が明記されているから盗作ではないが)。
 ほかの人の著作のエッセンスを使って、自分の主張を強化するテクニックに長けた人なのである。

 もちろん、そのことは少しも悪いことではない。が、「この本のおかげで年収が2倍になりました」だとか、「こんな勉強法、いままで誰も教えてくれなかった」などという「読者の声」は、いささか大げさ。

 しかしまあ、勉強へのモチベーション保持には役立つ本であり、価格分の価値はあると思う。
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ブランドX『A History: 1976-1980』

The Plot Thins: a History of Brand XThe Plot Thins: a History of Brand X
(1992/10/01)
Brand X

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 渋いジャズ・ロックが聴きたくなって、ブランドXのベストアルバムをアマゾンで購入。『A History: 1976-1980』という英盤である。

 ブランドXは、フィル・コリンズがジェネシスと並行してやっていたジャズ・ロック・バンド。プログレ風味の、テクニカルで渋いジャズ・ロックを聴かせる。とくに、フィル・コリンズのドラムスとパーシー・ジョーンズのベースというバカテク・コンビのインタープレイが最高なのである。

 このアルバムもじつに素晴らしく、昨日からヘビロしている……のだが、それにしてもこのジャケット・デザインはいったいナンデスカ? スケベで悪趣味なうえに、質の悪いカラーコピーみたいなチープな色調。
 間違って妻が先に荷を開けたら、「こっそりエロDVDでも買ったのか?」といらざる誤解を招くところだ(笑)。

 ちなみに、ブランドXのベスト盤はほかにも出ているのだが、そのうちの一つは下のようなジャケットである。

Macrocosm: Introducing...Brand XMacrocosm: Introducing...Brand X
(2003/07/28)
Brand X

商品詳細を見る


 あ、あのなあ……。
 いったい誰の趣味で、ブランドXのベスト盤はこんなのばかりになっているのか? たぶんフィル・コリンズだな(偏見)。

 くり返すが、ジャケットがアレなだけで、中身は最高なのである。

 ちなみに、ブランドXのオリジナル・アルバムの大半はかの「ヒプノシス」がデザインを手がけており、むしろハイセンスなものが多い。オススメは下の3枚。

  
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三輪裕範『四○歳からの勉強法』



 三輪裕範著『四○歳からの勉強法』(ちくま新書/700円)読了。

 タイトルに惹かれてなんの気なしに購入したものだが、意外な拾い物。オーソドックスで派手さはない本だが、なかなか参考になる。

 著者が伊藤忠に勤める現役バリバリの商社マンであることが、本書の美点に直結している。

 美点の第一は、自身の体験をふまえて、“忙しい本業の合間にできる勉強”に的を絞っているところ。時間に余裕のある人しか実行できないような、「机上の空論」めいた話は出てこないのだ。

 美点の第二は、ヘンな精神論を振りかざすいやらしさがなく、徹頭徹尾実用的で話の脱線もないこと。その点も、いかにも商社マンが書いた勉強法の本という感じ。

 タイトルは『四○歳からの勉強法』だが、内容はとくに中高年限定というわけではない。30代・20代が読んでも十分参考になるはずだ。
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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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