伊藤礼『こぐこぐ自転車』

こぐこぐ自転車 こぐこぐ自転車
伊藤 礼 (2005/12/14)
平凡社

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 伊藤礼著『こぐこぐ自転車』(平凡社/1680円)読了。

 定年を迎えてからスポーツ自転車の魅力に目覚めた著者が、自らの自転車ライフを軽妙に綴ったエッセイ集だ。ノンフィクション作家の高橋秀実が、『読売新聞』の「2006年 読書委員が選ぶベスト3」の一つに挙げて絶賛していたのを見て、手にとった。私も最近スポーツ自転車に乗り始めたことでもあるし……。

 著者の伊藤礼は元大学教授の英文学者/エッセイスト。ユーモアと滋味あふれる文章を書く人である。あの伊藤整の子息だと知って、なるほどと思った。

 高橋秀実は、「笑える頁に折り目をつけて読み進めたら、本がふくらんで閉じなくなってしまったほど」だと書いていた。それはちょっと大げさだと私は思うが、ユーモア・エッセイの佳編であるのはたしか。

 ユーモアの質としては、北杜夫の『どくとるマンボウ』シリーズや穂村弘のエッセイに近い。含羞に満ちた、とぼけた味わいの笑い。ただし、最初から読者を笑わせることを目的としたエッセイ(土屋賢二の諸作とか)に比べると、本書の笑いはもっと上品で薄味である。爆笑よりは微苦笑を誘うユーモアなのだ。
 例として、あとがきの一節を引いておこう。
 

 私が自転車に乗るために北海道とか四国とか山形に行ったりしていると、世間のひとは「お若いですね」などと言ってくれる。家人にたいしても「お宅のダンナはお若くてすてきですね」などとお世辞を言ったりする。家人はそう言われるとまんざらでもないらしいがそれはお目出度いと言うべきだ。本当は彼らは「いまにあの老人は自動車に轢かれてしまうだろう。かわいそうに」と思っているにちがいないのだ。世間というのはそういうものだ。
 本書の書名は、右のようなわけで、本来は『古希老人自転車日記』とでもすべきであった。だが「そういう書名は、たとえば、谷崎潤一郎の『瘋癲老人日記』を連想させて適切ではないし、だいいち、もう少しで死にそうな老人の日記など誰も買ってくれませんよ」などという考え方もあったのでやめにしたのである。
 書名の候補は、『突然目ざめてサイクリスト』、『元気自転車』、『新サイクリスト読本』、『徘徊自転車』、『天国へは自転車で』、など多数あった。


 自転車マニアでなくてもそこそこ楽しめる本だが、マニアならたまらなく面白いことだろう。
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中川翔子と中川勝彦

中川勝彦/リバース~ラストアルバム 中川勝彦/リバース~ラストアルバム
中川勝彦 (1995/10/21)
NECアベニュー


 中川翔子(いわゆる「しょこたん」)って、あの中川勝彦の遺児だったのかぁ! 今日初めて知ってビックリ。

 中川勝彦は、白血病によって32歳の若さで夭折した美形ロック・シンガー/俳優である。
 おもに1980年代に活躍したが、「早すぎたヴィジュアル系」とでも言おうか、10年遅く生まれていたら、90年代に一連のヴィジュアル系ロッカーとともに人気を博したこと間違いなしの逸材であった。

 私、けっこう好きでした。
 モット・ザ・フープルの「すべての若き野郎ども」を彷彿とさせるロッカ・バラード「Please Understand Me」は名曲だし、スクリッティ・ポリッティの「アブソルート」をパクった「僕たちのマンネリズム」などもよかった。セカンド・アルバム『Double Feature』とサード『ペントハウスの夏』あたりは音楽的にもなかなか凝っていて、愛聴したものだ。

 そうかそうか、あの勝ちゃんの娘なら、筋金入りのオタクになるのも無理はない(って、もちろん親・子とも直接の面識はないのだが…)。
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近藤ようこ『兄帰る』『後には脱兎の如し』


兄帰る (ビッグコミックススペシャル)兄帰る (ビッグコミックススペシャル)
(2006/10/30)
近藤 ようこ

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 近藤ようこの最新作『兄帰る』(小学館/980円)を読んだ。『ビッグコミック』に、昨年から今年にかけてシリーズ連載された作品。

 失踪していた野田家の長男・功一が、交通事故に遭って死体となって帰ってくる。残された家族と元フィアンセ・真樹子の心には、大きな謎だけが残される。
 結婚を間近に控え、幸せいっぱいだったはずの功一は、なぜ突然失踪したのか? そして、無惨な事故死を遂げるまでの3年間、どこで何をしていたのか? 家族3人と真樹子は、功一が残した手紙や写真を手がかりに、その謎を解くための旅を始める……。

 骨子だけを見ると、「近藤ようこ、ミステリに初挑戦か」という感じである。まあ、広い意味ではミステリと言えなくもないが、そこは近藤、『嫌われ松子の一生』のようなドギツい話にはけっしてならない。
 むしろ、宮本輝がときどき書くミステリ・タッチの物語に近い感触。どんでん返しや謎解きの妙よりも、功一の軌跡をたどる4人の心模様をこそ味わうマンガなのだ。

 すごくよかった。近藤ようこの長編の中でも上の部類だと思う。
 で、よかったので、2年前に出た近藤の初エッセイ集『後には脱兎の如し』(晶文社/1800円)にも手を伸ばしてみた。


後には脱兎の如し後には脱兎の如し
(2004/11)
近藤 ようこ

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 こちらも期待以上の内容だった。もともと文学的資質に富む近藤ようこだけに、マンガ家の余技という感じはなく、ちゃんとしたエッセイになっている。

 一言で言うと、「偏屈な岸本葉子」という感じ。「独り身の・自由業者の・40代女性の暮らしぶりを綴ったエッセイ」という点は岸本の諸作と共通なのだが、もっと視点がひねくれていてオタク的なのだ。

 創作の舞台裏が垣間見られるからファンは必読だし、ファンでない人が読んでもそこそこ楽しめると思う。
 とくに、人間観察の鋭さはさすがだ。たとえば、マンガの取材で編集者とともに歌舞伎町のスナックに行った(作品名は明記していないが、『あけがたルージュ』だろう)ことを振り返った、こんなくだり――。

 私は、酔っぱらいながらも観察は怠らなかった。おじさん客にも平等に愛想よく接している女の子(そりゃ仕事だから)が、そのハンサムな編集者を見る時だけ、目がキラリと「本気」の光を発するのを。そして彼がさりげなく受け流すのを。なるほどなあ。世界は暗号に満ちている。私は迷い込んだ異星人のような心持ちだった。自分はそういうものの受信機も送信機も持っていないと思った。いや、暗号を傍受したのだから、簡単なアンテナくらいはあったのか。


 自分の色恋の話が皆無に等しい点を除けば、近藤のマンガそのものの世界が全編に展開されている。
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『硫黄島からの手紙』

栗林忠道 硫黄島からの手紙 栗林忠道 硫黄島からの手紙
栗林 忠道、半藤 一利 他 (2006/08)
文藝春秋

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 『硫黄島からの手紙』を、立川シネマシティで観た。

 太平洋戦争末期の日米の死闘を描いた、クリント・イーストウッド監督の「硫黄島二部作」の後編にあたる。
 前作『父親たちの星条旗』が米軍の視点から描かれていたの対し、こちらは日本軍の視点で描かれている。主要キャストはすべて日本人で、言葉も当然日本語だ。

 テレビ等で流れている予告編は、この映画の中のウェットな部分だけを選り抜いて作った感じである。あの予告編だけ観ると「感涙必至!」という印象だが、実際に観てみると「泣ける」というタイプの映画ではない。『父親たちの星条旗』がそうだったように。

 たとえば、主人公である栗林忠道(硫黄島総指揮官/渡辺謙が熱演)の家族は、ただの一度も登場しない。この映画を日本人監督が撮ったなら、栗林の妻子を大きな比重で描いていたにちがいない。そこが最大の「泣かせのツボ」なのだから。

 通俗的な「泣かせ」をあえて封印し、そのかわりにイーストウッドが比重を置くのは、日本軍の狂気――戦闘としての実効性よりも精神論といびつな“美学”を重んずる狂気――の描写だ。
 「自分たちが一日でも長く持ちこたえることが、本土の国民を守ることになるのだ」と力説し、「玉砕」を禁ずる栗林。だが、兵たちの多くは、陥落が決定づけられた瞬間から玉砕を考え始め、持ちこたえるよりはすぐに散りたいと願う。

 洞窟の中で兵が一人ずつ「天皇陛下万歳!」を叫んで自決していくシーンの、背筋も凍る迫力。そこには、一片の感傷も入る余地がない。アメリカ人が「ハラキリ」に感ずるであろう不気味さを、日本人の我々もまた感ずるのだ。

 この映画は、温和な合理主義者であった栗林(彼には米国生活の経験があった)の「正気」と、典型的帝国軍人たちの「狂気」の対立の物語である。
 だが、イーストウッドの眼目は日本軍の狂気を批判することにはない。彼はもっと高みから、いわば「神の視点」から冷徹に歴史を見据えている。

 『ミスティック・リバー』以降のイーストウッドは、「現代のギリシア悲劇」を作ろうとしているのだと私は感じている。
 ギリシア悲劇の重要な題材の一つが、トロイ戦争であった。イーストウッドが真正面から太平洋戦争を悲劇として描いたのも、必然であったろう。
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呉智英『現代人の論語』

現代人の論語 現代人の論語
呉 智英 (2006/11)
文藝春秋

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 呉智英著『現代人の論語』(文春文庫/505円)読了。
 
 論語を講ずる私塾まで開いている呉智英が、評論家としての長いキャリアの中で初めて論語をテーマに据えた著作。満を持して放った、ライフワークともいうべき一冊である。元本は2003年に出たものだが、さきごろ文庫化されたので初読。

 素晴らしい本であった。「人類史上最初の思想家」としての孔子の人間像が、いきいきと描かれている。
(つづきます)
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『クライム&ダイヤモンド』

クライム&ダイヤモンド ~スペシャル・エディション~ クライム&ダイヤモンド ~スペシャル・エディション~
クリスチャン・スレーター (2004/02/26)
ハピネット・ピクチャーズ


 DVDで『クライム&ダイヤモンド』を観た。2001年のアメリカ映画で、クリス・バー・ヴェルという監督のデビュー作。

 遊び心に満ちた、軽妙洒脱なクライム・アクションである。

 脱獄した偽造詐欺師フィンチが、死人のパスポートを使ってその男になりすます。ところがその死人は、マフィアの2代目が殺人を犯す場面を偶然盗撮し、マフィアから大金を脅し取ろうとして逆に殺されたパパラッチだった。「アイツ、生きていやがった」と早とちりしたマフィアは、フィンチの命を狙う。

 組織が送り込んだ殺し屋に、あっさり捕まるフィンチ。だが、その殺し屋はものすごい映画オタクで、「名作映画並みに面白い話を聞かせてくれたら、見逃してやる」という。命惜しさに、フィンチは自分がかかわった犯罪について語り始める。

 それは、まさに映画のような話だった。マジシャン兼大泥棒によるダイヤモンド強奪の顛末、彼とフィンチの脱獄譚、隠したダイヤモンドをめぐる宝探し、そして、そこにからんでくる、フィンチの命を狙うマフィアとの攻防……。

 『千夜一夜物語』から借りた大枠の中に、おしゃれな犯罪映画3、4本分のネタが詰め込まれている。……と、こう書くとものすごく面白そうに思えるだろうが、実際に観るとそれほどでもない。

 まず、92分の短い映画なのに、いろんな要素を詰め込みすぎで、あまりにもせわしない。脚本も兼ねるバー・ヴェル監督は、デビュー作ゆえに「あれも入れたい、これも入れたい」と欲張りすぎたのだろう。その結果、一度観ただけでは話がよく飲み込めない(2度観るとやっとわかる)映画になってしまっている。

 それに、コメディ的要素も強いわりには、笑える場面やセリフがほとんどない。セリフが弱い。もっと思いきって「笑い」のほうに寄って、コーエン兄弟のコメディみたいにしてしまえばよかったのに……。
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『ワンダフルライフ』

ワンダフルライフ ワンダフルライフ
ARATA (2003/03/28)
バンダイビジュアル

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 DVDで『ワンダフルライフ』を観た。『誰も知らない』の是枝裕和が1998年に撮った第2作。私は初見。海外での評価も高い作品で、ハリウッドでのリメイクも決定しているという。

 舞台となるのは、死者が冥界に赴く前に一時滞在する「煉獄」のような世界。死者たちはそこで過ごす一週間のうちに、人生で「いちばん大切な思い出」を一つ選択する。その思い出を再現した映画の上映会が最終日に開かれ、彼らはその思い出を胸に冥界へ旅立つのだ。

 「煉獄」という言葉は私が勝手に用いているもので、映画には出てこない。映画の中の“一時滞在所”は古びた学校のような建物で、およそ煉獄らしくない。死者たちの思い出選びを手伝うスタッフ(彼らもまた死者である)も、まるで事務員のような趣でその仕事に取り組む。

 着想はいいし、ファンタジーをあえてドキュメンタリー風に撮るという趣向も面白い。また、ドキュメンタリーのように自然な演技を引き出す演出手腕も、相変わらず冴えている。だが、『誰も知らない』の感動と比べてしまうと、一段も二段も落ちる印象。
 
 それに、この手のファンタジー(死者が人生を振り返ることを通じて「生の意味」を問うファンタジー)なら、大島弓子がとうの昔にきわめて上質な作品を手がけているのである。
 大島が短編マンガ(「秋日子かく語りき」と「四月怪談」)で簡潔に表現し尽くしたテーマを、2時間の映画でダラダラとたどたどしく語っている、という印象を受けてしまった。

 ヒロイン役の小田エリカは、つい一昨日に観た『誰がために』に主演していたエリカ(姓なし)と同一人物。芸名を変えているし、髪の長さが違って印象がまったく変わっているので、観ている間は気づかなかった。こちらのショートカットのほうが似合っていてカワイイと思う。
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スポーツ自転車事始め

 『自転車で痩せた人』『じてんしゃ日記』の著者でもあるSF作家の高千穂遙さんを取材して以来、欲しいと思っていたスポーツ自転車。年末進行も終わって一段落したので、先週買ってきた。ロードバイクではなく、「クロスバイク」と呼ばれるタイプのものである。

 テレビドラマ『僕の歩く道』でSMAPの草くんが乗っていたのがロードバイク(「ロードレーサー」ともいう)だが、あのタイプは純レース仕様であるため、小さな段差でもパンクしやすいなど、メンテナンスがたいへんらしい。それに対し、クロスバイクは街乗りにも適したタイプで、初心者向けなのだという。

 高千穂さんの愛車「TREK5500」は数十万円もする高級車だそうだが(忌野清志郎の盗まれた自転車などはさらに高級で、160万円もするものらしい)、私の買ったヤツはほんの数万円である。

 乗り始めてまだ一週間の超・初心者だが、いいっすね、スポーツ自転車。なにより、スピードが出やすいのが快感である。前を行くママチャリがやけにノロノロして見えるし、耳元には「ゴォ~ッ!」という風を切る音が聞こえる。

 そのスピード感が楽しくて、用もないのに遠くまで自転車を飛ばしたりしている。ただ、乗っている間はあまり疲れを感じないのだが、家に帰ってきてからドッと疲れが出る(まだ慣れていないせいもあるのだろうが)。なるほど、「自転車で痩せる」はずである。

 私は、せっかくのクロスバイクに前カゴをつけたりして、マニアが見たら吹き出しそうなことをしている。でも、いいのだ。べつにマニアになるつもりはないし。
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『誰がために』

誰がために 誰がために
浅野忠信 (2006/02/24)
バンダイビジュアル

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 『誰がために』をDVDで観た。昨秋公開された、日向寺太郎という監督のデビュー作である。

 音楽を私の好きな矢野顕子が担当しているので、この映画のサントラ盤はさきに聴いていた。ピアノのみの寂寥感あふれるシンプルな音楽が、映画の雰囲気にぴったりとマッチして素晴らしい効果をあげている。

 一面識もない少年に愛する女性(エリカ)を殺されてしまった、元・報道カメラマンで現・写真館店主(浅野忠信)が主人公だ。
 少年法に守られ、わずかな期間で社会に復帰してくる犯人の少年(小池徹平)。男の心に、少年への復讐心が抑えがたく湧き上がる。そんな男に想いを寄せ、支えようとする幼なじみの女性(池脇千鶴)……。理不尽な殺人をめぐる、ずしりと重い人間ドラマだ。

 「惜しい。傑作まであと一歩」という感想を抱いた。キラリと光る場面も多く、いくつもの美点を具えた映画ではあるのだが……。
 いちばんの難点は、セリフだ。

「写真って、喜びや悲しみを伝えようとして撮るものでしょう。私には伝わったわ、あの写真の少女の悲しみが……」
        *       *       *
「兄貴のオレが言うのもなんだけどさあ、マリのやつ、絶対いい女房になると思うんだよ」


 ……というふうに、気恥ずかしくなるほどクサいセリフや、紋切り型のセリフが多すぎる。「この場面ではきっとこんなセリフをしゃべるだろうな」という観客の予想を寸分も裏切らず、映画は進んでいく。
 浅野忠信という役者は飄々とした自然な演技が売りなのに、この映画のセリフの多くは学生芝居のようにクサいのである。

 ただし、クサいセリフという足枷をはめられながらも、その制約のなかで浅野と池脇千鶴は素晴らしい演技を見せている。
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『いつか読書する日』

いつか読書する日 いつか読書する日
岸部一徳、池辺晋一郎 他 (2006/02/24)
アミューズソフトエンタテインメント

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 『いつか読書する日』をDVDで観た。昨夏に公開された邦画である。

 こんな地味な映画、よく企画段階でボツにならなかったものだ。なにしろ、ともに50歳の男女が主人公のラブストーリーなのである。しかも、ヒロインの美奈子(田中裕子)は、牛乳配達とスーパーのレジ打ちで働いている読書だけが趣味の独り身。相手の高梨(岸部一徳)は市役所職員。主人公の設定がこれほど地味なラブストーリー、少なくとも映画ではほかに思い浮かばない。

 ただし、映画としてはまぎれもない秀作。静謐な詩情につらぬかれた「大人の恋愛映画」だ。「若いモンにはわからない世界」ではあるが、私は最後まで退屈しなかった。
 脇の登場人物一人ひとりにも、血の通った人間としてのリアリティがある。とくに、ヒロインが働くスーパーの人間模様の点描は、じつに面白い。

 美奈子と高梨は高校時代の一時期に恋人同士だったが、ある不幸な出来事が原因で別れる。美奈子は高梨への想いを胸に秘めたまま独身をつらぬき、高梨も、ほかの女性と結婚しつつも美奈子への想いを断ち切れない。

 同じ町で暮らしつづけながら、30年以上もの間、けっして交差することのなかった2つの人生。高梨の家に美奈子が毎朝配達する牛乳だけが、2人をつなぐ細い糸であった。
 だが、末期ガンにおかされた高梨の妻(仁科亜季子)が、偶然から2人の間の秘めた想いに気づく。牛乳を飲まない夫が、なぜか牛乳をとりつづけている理由を知ってしまうのだ。そして、彼女が投じた一石が、2人をふたたび近づけるのだった――。

 40代には40代の、50代には50代のラブストーリーがあってしかるべきだろう。だが実際には、映画・テレビドラマ・小説…どの世界にあっても、広義の若者のラブストーリーばかりが幅をきかせている。50代の恋を正攻法で描いたこの映画は、貴重な例外だ。しかも、このうえなく平凡な市井の男女の恋を、感情の襞に分け入るような繊細な手つきで描いているのだ。

 心に残る場面がたくさんある。

 とくに素晴らしいのは、美奈子が33年ぶりに高梨を下の名前で呼ぶシーン。
 橋の上にたたずむ高梨を、美奈子が呼ぶ。だが、「高梨さん」と呼びかけても彼は気づかない。そこで美奈子はふと思い立って、「槐多(かいた)!」と大声で呼ぶ。つきあっていた少女時代にそう呼んでいたように……。その声に高梨が振り向いた瞬間、2人の心は17歳の夏に戻るのだ。

 田中裕子が、目を瞠る名演。相手の岸部一徳は代りがきくかもしれないが、ヒロインは田中以外にあり得なかっただろう。
 池辺晋一郎の端正な音楽も素晴らしい。
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SOULHEAD『Naked』ほか

Naked Naked
SOULHEAD (2006/03/08)
ソニーミュージックエンタテインメント

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 最近気に入ってます、SOULHEAD(ソウルヘッド)。YOSHIKAとTSUGUMIという姉妹によるラップ/R&Bデュオ。曲もすべて姉妹が自作している。

 私は、映画『ゲロッパ!』のエンディング・テーマに使われた「GET UP!」で、彼女たちのことを知った。「な、なんだ、この日本人離れしたカッコイイ曲は!」とビックリしたものだ(映画はB級だったけど)。

 歌詞は英語と日本語がおおむね半々の割合でミックスされているのだが、両者が微塵の違和感もなく結合している。
 1970年代に「日本語ロック論争」というのがあって、「日本のロック・ミュージシャンは日本語で歌うべきか、英語で歌うべきか」なんてことが熱く議論されたそうだけれど、そんな論争が遠い過去に思えるほど、SOULHEADは英語と日本語の間を自在に往還する。その音楽は、洋楽とJ-POPの壁を軽やかに越えている。

 YOSHIKAとTSUGUMIは歌もうまいし、ハーモニーも(姉妹だけあって)絶妙。一曲丸ごとラップという曲はほとんどなく、曲中に自在にラップが織り込まれるのだが、それがじつにサマになっている。

 曲は、出来不出来の振幅がけっこう大きいが、いい曲はビックリするくらいいい。洋楽が、「一歩でも近づきたい目標」でも「乗り越えるべき対象」でもなく、生まれたときから空気のようにそばにあった世代ならではの音。

 SOULHEADの曲はハードなダンス・チューンから切ないバラードまで多彩だが、私がとくに好きなのは、おしゃれな音なのに聴いているとハッピーになってくる一群のアッパー~ミドル・チューン。たとえば、「BREAK UP」「FOR ALL MY LADIES」「GET UP!」「One More Time」「SPARKLE☆TRAIN」「Pray」といった曲。

 このうち「One More Time」は片思いの歌であるし、「BREAK UP」はダメ男に三行半を突きつける歌だ。にもかかわらず、いずれの曲にも不思議な「多幸感」が全体に満ちており、聴いていると心が浮き立ってくる。

 「おしゃれな多幸感」――それがSOULHEADの魅力の核だ。
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『幸せのちから』



 築地のソニー・ピクチャーズ試写室で、『幸せのちから』を観た。
 1月27日公開のアメリカ映画。 → 公式サイト
 
 全財産21ドルのホームレス生活から、証券会社を経営する億万長者にまでのぼりつめた実在の人物、クリス・ガードナーのライフストーリーを映画化した作品。クリスをウィル・スミスが演じ、その幼い息子を彼の実の息子が演じている(この子がじつにカワイイ)。

 「努力は必ず報われる。誰にでも夢は叶えられる」という「アメリカン・ドリーム」の物語だが、同時にその裏面もえぐり出している。
 誰もが億万長者になるチャンスを与えられているアメリカは、誰もがたやすくホームレスになってしまう国でもある。その恐るべき格差社会の現実も、しっかり描き込まれている映画なのだ。

 主人公のクリスは医療機器のセールスマンだったが、商品が思うように売れず、家計はしだいに逼迫していく。工場で働いて家計を支えてきた妻は愛想を尽かして出ていき、クリスと5歳の息子だけが残される。

 不運はつづき、ついに家賃すら払えなくなったクリスは、息子とともにホームレスに転落する。駅のトイレに鍵をかけ、そこで息子と夜を明かしたり、教会に並んで困窮者のための無料ベッドを確保したり……。

 そんな生活から抜け出すため、クリスは学歴無用で高給取りへの道が開ける一流証券会社の「株式仲買人養成コース」に申し込む。正社員に選ばれるのは、たった1人。しかも、その1人を選び出すための半年間の研修期間中は、いっさい無給。それでも、クリスはホームレスであることをひた隠しにしながら、懸命に研修に挑むのだった。

 「ホームレスから億万長者になった父子の物語」――つづめていえばそれだけの話なのに、要所要所にハラハラドキドキの山場が盛り込まれており、少しも退屈しない。

 収入不安定を絵に描いたような仕事をしている私には、クリスが路頭に迷う様子が他人事ではなく、思いっきり感情移入。彼と息子とのふれあいが自分と息子にオーバーラップして、泣けた。

 シンプルで力強い、そしてアメリカ映画らしい映画である。
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『素敵な夜、ボクにください』

素敵な夜、ボクにください DVDメモリアル・エディション素敵な夜、ボクにください DVDメモリアル・エディション
(2007/06/21)
吹石一恵.キム・スンウ.占部房子.関めぐみ.枝元萌.飛坂光輝.八戸亮.木野花

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 東銀座のシネマート試写室で、『素敵な夜、ボクにください』を観た。来年2月公開の邦画。 

 公式サイト→ http://www.sutekinayoru.com/

 トリノ冬季五輪における日本勢の活躍で一躍ブームとなったスポーツ、「カーリング」に材を取ったラブコメである。監督は、名作『櫻の園』の中原俊。

 地味なスポーツを題材にしたコミカルな青春映画といえば、『シコふんじゃった。』や『ウォーターボーイズ』が思い浮かぶ。あるいは、もう少し範囲を広げて『がんばっていきまっしょい』や『スウィング・ガールズ』を同じ枠に入れてもよいだろう。

 この『素敵な夜、ボクにください』は、それら同傾向の傑作と比べてもまったく遜色ない仕上がりだ。

 ものすごく「型通り」の作品ではあるのだ。挫折して日本に傷心の旅に出た韓国のカーリング選手(キム・スンウ)と、同じく挫折した売れない女優(吹石一恵)。ひょんなことから2人が出会い、カーリング・チームを作ることになる序盤を見ただけで、その後の展開と終わり方までが読めてしまう。

 そして、おおむね観客が予想したとおりに話は進む。
 初心者を寄せ集めたチームならではのドタバタ、メンバーと監督がしだいに本気になっていくプロセス、物語のちょうど半ばあたりで訪れる危機と、それを乗り越えての勝利……。いずれも、『シコふんじゃった。』から『スウィング・ガールズ』に至るまでの先行諸作のパターンを、そっくり踏襲している。
 
 そのように定石を手堅く踏みながらも、「二番煎じ」的なショボさはまったく感じさせない。ストーリーに組み込まれたアイデアとその展開がすごくよくできていて、観客を飽きさせないのだ。カーリング・チーム4人のキャラの立て方もうまい。

 軽やかな笑いを連打したあとで、クライマックスにはホロリとさせる、ウェルメイドなスポーツ・ラブコメ。吹石一恵ほかの女優陣もチャーミング。私の苦手な関めぐみさえ、カワイく思えた。
 「ゴージャスなディナー」という趣ではないが、「なにげなく入った町の食堂の定食がびっくりするほどうまかった」という感じの満足感が味わえる映画。

 ところで、なぜタイトルが『素敵な夜、ボクにください』なのか? それは観てのお楽しみ。物語の序盤とクライマックスで、効果的にリフレインされるセリフに由来する。
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鎌田浩毅『成功術 時間の戦略』『ラクして成果が上がる理系的仕事術』

成功術 時間の戦略 (文春新書 (443))成功術 時間の戦略 (文春新書 (443))
(2005/05/20)
鎌田 浩毅

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 鎌田浩毅著『成功術 時間の戦略』(文春新書)、『ラクして成果が上がる理系的仕事術』(PHP新書)読了。

 著者は京大教授で、専門は火山学。『成功術 時間の戦略』は、著者が講義の合間に学生たちに教えている「時間の戦略」のエッセンスをまとめたものだという。
 そのため、書名こそオジサン向け自己啓発書のようだが、内容はむしろこれから社会に出る若者向けになっている。本書が文春新書から出たのはいかにもミスマッチであって、岩波ジュニア新書から、『未来を拓く君たちに贈る時間戦略』とでも題して出せばよかったのに、と思う。

 だから、私のようなオジサンが読むと、「いまさらそんなこと言われてもなあ……」と感じる記述が多い。たとえば、「『何らかのスペシャリストになる』のは、三十歳くらいまでの目標である」などと書かれていると、30歳をとうにすぎてしまった身としては嘆息したくなる。

 とはいえ、内容はなかなか。
 従来の時間活用法に関する本の多くは、ちまちまと時間を節約して「やりたいこと」のための時間を捻出するノウハウにウエイトが置かれていた。つまり、1日24時間をミクロに見る視点が主であった。それに対して本書は、ちまちましい時間節約術はほとんど書かれておらず、人生をマクロに見る大局的な視点からの時間管理術が主になっている。そこがよい。

 もう一冊の『ラクして成果が上がる理系的仕事術』は、書名に惹かれて手に取った。「理系的仕事術」などと銘打たれると、私のような典型的文系人間は、これまで知らなかった、目の覚めるような画期的仕事術が書かれているような気がしてしまうのだ。

 だが、実際に読んでみると、なんのことはない、書かれているのは私がこれまでに心がけてきたことばかりであった。

 たとえば、理系人は「アウトプット優先主義」で、あらかじめ仕事の完成型をイメージして「書く前に全体の構造を決め」、「枠組みのなかで不足部分だけを手当する」のだと著者は言う。だが、それのどこが「理系的仕事術」なのだろう? 文系人だろうと町の職人さんだろうと、効率的に仕事をこなすためには最初に全体の枠組みを決め、アウトプット優先で進めるのはあたりまえではないか。

 一事が万事で、この本は、あたりまえの仕事術・整理術に、もっともらしい理系的ネーミングが施されているだけである。たとえば――。

一日に原稿用紙で何枚書けばよいのか、そのためには一時間にどれだけ作業すればよいのかの見積もりを立てる。この方法を「割り算法」と名づけよう。


 何も「割り算法」と名付けるまでもなく(笑)、そんな割り算、シメキリに追われるライターなら誰もが毎日やっている。「理系的」もクソもない。

 …とケチをつけてしまったが、仕事術・整理術のハウツー書としてはなかなかよくまとまっている本だ。
 「理系的」という冠にしても、世にあふれる類書との差別化のために無理やりこじつけたものだろうから、目くじら立てるのは大人げないか。
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しりあがり寿『表現したい人のためのマンガ入門』

表現したい人のためのマンガ入門 表現したい人のためのマンガ入門
しりあがり 寿 (2006/07)
講談社

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 しりあがり寿著『表現したい人のためのマンガ入門』(講談社現代新書/720円)読了。

 「マンガ入門」と銘打ってはあるものの、マンガの描き方を初歩から教えるような内容ではない。書かれているのは、マンガ家としてもつべき「心構え」である。

 自分が表現したいことを「売れるマンガ」にするためには、どうすればよいか? マンガという表現ジャンルには、他のジャンルに比してどのような特長があるのか? そうした、マンガ家にとっての根源的な問いが、四半世紀のキャリアをもつ第一線のマンガ家の目から考察されている。

 しりあがり寿は、キリンビール宣伝部の社員として働きながらマンガ家として活躍する「二足のワラジ」生活を、13年にわたってつづけた人である。キリン時代には、あの「一番搾り」の開発チームにも加わっていたとか。

 サラリーマン生活の蓄積で得たものが、本書にも十分活かされている。“マンガ家・しりあがり寿というブランド”の価値をいかに高め、いかに息の長い商品にするか? そのための戦略を、自分を客観視して立ててきた様子が語られているのだ。

 クリエイターとして生計を立てるには、自分が表現したいことが商品として受け入れられなければならない――それはあたりまえのことだが、そうした視点からマンガ家が自らを語った本は、ありそうでなかった。

 代表作の自作解題にもかなりページが割かれており、デビューから現在までのマンガ家としての歩みも手際よく振り返られている。その意味で、しりあがり寿のファンは必読。今後、彼のマンガについて論ずる際の必須文献になるだろう。

 そして、マンガ家とその卵のみならず、「何かを表現して食っていきたい」と考えている人にとっては、たいへん示唆に富む内容である。 
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『墨攻』

The Making of 墨攻 The Making of 墨攻
アンディ・ラウ (2007/01/19)
レントラックジャパン

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 渋谷の東芝エンタテインメント試写室で、『墨攻(ぼっこう)』の試写を観る。

 酒見賢一の同名小説と、森秀樹によるそのマンガ版の映画化である(直接の原作はマンガ版のほう)。中国・日本・香港・韓国の合作による超大作だ。2月公開予定。

 公式サイト→ http://www.bokkou.jp/

 春秋戦国時代の中国に、「非攻(専守防衛)」の思想を掲げた「墨家」があった。儒家と並ぶ勢力を誇りながら、秦代に忽然と姿を消した謎めいた教派である。
 墨家は戦闘のプロ集団でもあったが、その戦闘技術は大国のエゴから小国を守るためにのみ使われた。いまも残る「墨守」という熟語(※)は、墨家の防衛戦に由来する。

※「堅く守る」の意。ただし、「旧説を墨守する」というふうに、あまりよい意味には使われない

 この映画は、「革離」という一人の墨者が、大国の侵略から小国の城を守り抜く闘いを描いた歴史アクションだ。
 絶対的に不利な状況のなか、知略を尽くして大国の猛攻をしのぎ抜く革離。私欲を捨て、弱者を守るために命を賭けるその姿は、ヒーロー像として申し分ない。戦闘シーンの迫力も特筆すべきものだが、その背後の人間ドラマも優れている。
 全編につらぬかれた熱いヒューマニズムが、物語を力強く牽引していく。「全盛期の黒澤明が中国を舞台に史劇を作ったら、こんな映画になったのではないか」とさえ思わせる。

 というより、脚本とプロデュースも兼ねる監督のジェイコブ・チャンには、「自分にとっての『七人の侍』を撮りたい」という意図があったのではないだろうか?

 『七人の侍』は、いうまでもなく、略奪集団と化した野武士の群れから村人を守ろうとする侍たちの闘いを描いたものである。いっぽう、この『墨攻』は、まともな軍隊さえ持たない小国の民を、優れた軍師であり戦士でもある革離が組織して鍛えあげ、大国の侵略を撃退しようとするもの。物語の構造がよく似ている。革離は一人で「七人の侍」の役割を果たすわけだ。

 私は、原作であるマンガ版の『墨攻』も、そのまた原作の小説も読んだ。それぞれ、独自の面白さと価値をもつものである。この映画版は、基本設定こそ原作と同じだが、かなり大幅な改変がなされている。たとえば、映画のヒロインで、革離に想いを寄せる美しい女剣士・逸悦は、オリジナル・キャラだ。

 そもそも、原作では革離も巷将軍(革離と闘う趙国の将軍)も、異相・短躯のブサイク・キャラなのであって、2人を美形キャラ(アンディ・ラウとアン・ソンギ)に変えたこと自体、映画版の大きな特長である。
 
 原作のエッセンスを巧みに活かしつつ、“古代中国版『七人の侍』”ともいうべき勇壮華麗な史劇を作りあげたことは、ひとえにジェイコブ・チャンの手柄であろう。
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曽我部恵一『ラブシティ』


ラブシティラブシティ
(2006/12/22)
曽我部恵一

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 12月22日発売の曽我部恵一のニューアルバム『ラブシティ』(ローズレコード/2500円)を、サンプル盤を送ってもらってヘビロ中。

 私はサニーデイ・サービスのアルバムでは『東京』(1996)がいちばん好きだが、今回の新作には『東京』のころを彷彿とさせる曲が多くて、たいへん気に入った。なんというか、「大人のための青春ロック」という趣なのである。前作・前々作でのロックンロール路線から、サニーデイ時代のメロウでフォーキーな作風に回帰している。
 
 たとえば、「東京2006冬」という、いかにも曽我部らしいタイトルの曲がある。「東京へきて15年」が過ぎ、「こどもの手をひいて幼稚園」へ行く(おそらくは曽我部の分身である)男が主人公だ。
 この曲が象徴するように、30代半ば以上の、ずっとロックを聴いてきた大人の男女のための、切なくもあたたかいポップ・チューンがずらりと並んでいるのだ。

 曽我部の過去のソロアルバムについてのアマゾンのカスタマー・レビューを読んでいたら、「曽我部さんの音楽はカッコイイとは表現しづらいのですが(悪い意味ではなく)」という一節があって、なんだか妙に納得して笑ってしまった。

 サニーデイ時代から、曽我部の音は「カッコイイ」「熱い」ロックではない。あたたかくて切なく、飄々としていて、聴き手のすぐ隣で歌っているようなロックである。まぎれもない「東京の音」だが、断じて「渋谷系」(死語)ではなく、吉祥寺や下北沢、高円寺や国立の香りがする音。このアルバムもしかり。

 とくにM2「3つの部屋」は、『東京』所収の名曲「あじさい」や「会いたかった少女」を彷彿とさせる珠玉作。

 また、アルバム後半の4曲(「幻の季節」「どこかでだれかが」「東京2006冬」「WINDY」)のシークェンスも絶品だ。描かれた場面と季節感が鮮やかに浮かぶ、イメージ喚起力に満ちた歌の連打。まるで、架空の青春映画のテーマソング集のよう。ソングライターとしての曽我部の能力の高さを思い知らされる。
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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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