恋愛相談

 中学1年の我が娘は、最近、友人から「恋愛相談」を受けることが多いのだという。

 「私に聞いたってしょうがないと思うんだけど…。だって、私まだ一度も恋愛したことがないし」

 とまどい顔でそんなふうに言うのが、しみじみおかしい。
 恋愛マンガやテレビドラマを通じて得た「知識」を駆使してアドバイスしているらしい(笑)。

 ま、ともあれ、相談ごとを持ちかけられるくらい仲のよい友人がいるというのは、よいことだ。

 娘はまだ、学校で起きることや友達との間のことを、屈託なく親に話してくれる。
 小学生時代には恋の話題などまったく出なかったのに、中学に入ったとたん、「誰それくんは○○ちゃんのことが好きなんだよ」などという話をよくするようになった。

 それが、「○○ちゃん」ではなく娘自身の話になる日も近いのだろうか。それとも、そんなことは親には口にしないだろうか。 

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鈴木光司さんを取材


パパイズム (角川文庫)パパイズム (角川文庫)
(2002/09)
鈴木 光司

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 今日は、都内某所で作家の鈴木光司さんを取材。

 「親子の絆」が取材テーマなので、鈴木さんの『パパイズム』(角川文庫/440円)を読んで臨んだ。「文壇最強の子育てパパ」と呼ばれる鈴木さんが、ご自身の体験をふまえて語った子育て論である。
 『リング』『らせん』などは、以前読んでいる(私はデビュー作の『楽園』が好きだ。ザバダックの『イコン』はこの小説にインスパイアされたアルバム)。

 『パパイズム』は、共感するところの多い本であった。傍線を引いた箇所を列挙してみよう。

社会人として必要とされる能力は、すべて育児を通じて養うことができる。
   *   *   *   *
 多くの人がカン違いしているようなのだが、ほんとうのぜいたくとは、お金をつかうことではなく、いい時間を過ごすことだとボクは思っている。これは子育てについてもまったく同じことで、子どもにお金をつかうより、子どもに時間をかけることを一番に考えたほうがよい。 
   *   *   *   *
 子育てには、やったものにしかわからない、面倒な細々とした仕事がたくさんある。お父さんが子どもをお風呂に入れたり、保育園の送り迎えをしたりするのは、それ自体とてもいいことではあるが、子育てという仕事全体から見れば、ほんの何分の一の作業でしかないということを自覚しておいたほうがいい。
   *   *   *   *
 子育てをすると、自分にとって結局何が一番大切なものなのかというのが、よく見えてくるのだ。それまで人目を気にしてばかりいた人も、大切な子どもを守るためにはなりふりかまわず一生懸命になれるようになる。これは一種の人間的成長だと言っていいと思う。


 なお、鈴木さんはご自分のヨットでのロング・クルーズから帰られたばかりとのことで、真っ黒に日焼けされていた。ううむ、優雅でうらやましい。

 ヨットマンらしく、たいへんさわやかな方であった。
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『深海 Blue Cha-Cha』

深海 Blue Cha-Cha 深海 Blue Cha-Cha
ターシー・スー (2007/03/02)
ビデオメーカー

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 『深海 Blue Cha-Cha』を観た。8月19日公開予定の台湾映画。

 公式サイト→ http://www.shinkaimovie.com/

 チェン・ウェンタン監督の長編第三作。
 刑務所から出所してきたばかりの美しい女性をヒロインに、一つの孤独な魂の彷徨、そして蘇生を、詩情豊かに描いている。

 愛情のもつれから男を刺殺して服役したヒロインのアユーは、心に病を抱えている。
「頭の中のスイッチが入ったら、自分では切れないの」――彼女は自らの心の病をそのように表現する。
 美しい彼女はすぐに男に言い寄られるが、どの男とも穏やかな関係を築くことができない。彼女はつねに愛しすぎ、自分を丸ごと相手にあずけてしまう。男にとってはそれが重荷なのだ。

 アユーを演ずるターシー・スーは、10年後の石原さとみに山口百恵的な暗さを加味した、という感じ。映画の中でいつもうつむきかげんで暗い表情をしている。だからこそ、終盤で一度だけ見せる笑顔が輝いて見える。

 タイトルどおり、深海を思わせる深いブルーが基調となった映像が美しい。ウォン・カーウァイの映画を彷彿とさせる雰囲気をもつ映画。
 ただし、ウォン・カーウァイほどオシャレにはなりきれず、どこか泥臭さがある。その泥臭さをどう受け止めるかによって、評価が分かれるだろう。
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多田富雄『生命へのまなざし』

生命へのまなざし―多田富雄対談集 生命へのまなざし―多田富雄対談集
多田 富雄 (2006/04)
青土社

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 多田富雄著『生命へのまなざし』(青土社/1800円)読了。

 多田富雄は、日本人として初めて国際免疫学会連合会長をつとめるなど、免疫学の世界的権威として知られる。2001年に脳梗塞で倒れて半身不随となってからも、なお旺盛な執筆活動をつづけているが、本書は95年に刊行された対談集の再刊だ。

 免疫学を含む広義の生命科学は、科学の最先端ゆえに日進月歩の分野である。たとえば、生命科学の一大エポック「ヒトゲノム計画」は2003年に完了したが、本書に収められた対談がなされたころにはまだ始まったばかりであった。

 では、本書の各対談は、情報が古いゆえに色褪せているだろうか? 否である。本書の価値は“情報の新しさ”にはないからだ。科学的知見を入り口に、そこから展開される普遍的な思索の冴えこそが魅力なのだ。

 たとえば、河合隼雄との対談の中では、“人は最初はみな女性で、Y染色体の指令で女性ホルモンを男性ホルモンに変えることによって初めて男性になる”というトピックから、多田はこう語る。

「女性というのは存在だと思いますけども、どうも男というのは現象にすぎないんじゃないかとこのごろ思い始めてきたんです」

 このように含蓄深い、本質的な思索がちりばめられているからこそ、本書は10年を経ても古びないのだ。

 多田富雄は、“現代の寺田寅彦”ともいうべき、たぐいまれな「文理融合の知」の持ち主である。日本エッセイストクラブ賞や大佛次郎賞を得た名エッセイストでもあり、自ら新作能の台本も手がけるほど文化・芸術に造詣が深い。

 本書にも、そうした多田の個性が十全に発揮されている。中村雄二郎(哲学者)、養老孟司(解剖学者)、樺山紘一(歴史学者)、加賀乙彦(作家)など、さまざまな分野の当代一級の知識人たちと、縦横無尽に対話の応酬をくり広げているのだ。科学的知見を文学的にも哲学的にも咀嚼できる、「文理融合の知」の人ならではだろう。

 そもそも、多田の専門である免疫学は、科学と哲学を架橋する分野と言える。自己と非自己を区別して作用する免疫系を研究することは、「自己とは何か?」という哲学上の大命題に科学のメスを入れることにほかならないからだ。

 免疫の研究を通じて人間と生命を見つめてきた多田が、異分野の知性との語らいの中で自在に思考の翼を広げた好対談集。
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『ルイーズに訪れた恋は…』



 銀座の松竹試写室で、『ルイーズに訪れた恋は…』を観た。9月9日公開予定のアメリカ映画。

 公式サイト→ http://www.louise.jp/

 主人公ルイーズは、コロンビア大学芸術学部の入学選考部長。一度結婚生活を経験したものの、いまは39歳で独身。高校時代に初恋の男性を交通事故で失い、その悲劇をいまだに引きずって生きている。

 そんなある日、彼女のもとに、初恋の男性に生き写しの学生が現れる。運命的な出会いから、2人は年齢差を超えて恋に落ちる。

 ……とまあ、そんなラブストーリー。安手の韓流映画とかハーレクイン・ロマンスにありそうな話だ。

 この骨子とタイトルの印象から、“現実離れした美しいラブストーリー”を期待して映画館に行くと、肩すかしを食うだろう。これはハーレクイン・ロマンスのような夢物語ではなく、もっとリアルで苦味の勝ったラブストーリーなのである。

 たとえば、物語の中盤には、ルイーズが元夫から「じつは自分はバイセクシャルだ」と告白される場面がある。この場面がじつにおかしい。

ルイーズ「いったい(結婚中に)何人の男と寝たの?」
元夫「多くはない。少しだ」
ルイーズ「『少し』って何人よ?」
元夫「…10人だ」
ルイーズ「まあ! 私よりも(男性経験が)多いじゃないの」



 この場面に象徴される苦いユーモアとリアリティが、凡百のラブストーリーにはない本作の価値だ。ルイーズは39歳の女性として、じつに生々しい存在感をもって立ち現れる。

 ルイーズを演ずるのはローラ・リニー。抑制のきいた、素晴らしい演技を見せる。実生活ではもう42歳だが、中年に達した女性ならではの魅力を十分に表現している。

 ローラ・リニーは笑顔がキュートだ。とても優しい「善人顔」をしている。
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『マッチポイント』

マッチポイント(通常版) [DVD]マッチポイント(通常版) [DVD]
(2007/02/02)
ジョナサン・リース・マイヤーズスカーレット・ヨハンソン

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 六本木のアスミック・エース試写室で『マッチポイント』を観た。
 8月中旬公開予定の、ウディ・アレンの新作である。

 公式サイト→ http://www.matchpoint-movie.com

 ニューヨークに住み、ニューヨークを撮りつづけてきたアレンが、初めて全編ロンドンでロケした作品。俳優陣の多くもイギリス勢だ。
 そのためか、過去のアレン作品とはかなり趣が異なる。かりに、監督名を伏せられたままこの映画を観たら、アレンの作品だと気づく人はごく少ないだろう。

 物語の舞台は、英国の上流社会。
 元プロテニス・プレイヤーの青年・クリスが、上流階級向けのテニス・クラブの専属コーチとなり、大富豪の御曹司と知り合ったことから、野心を抱く。クリスは一族に取り入り、御曹司の妹と結婚。父親が経営する大企業でも重要なポストを与えられる。

 だが、御曹司の婚約者である女優の卵・ノラと出会ったことから、クリスの野望の歯車は狂い始める。ノラはアメリカ人、クリスはアイルランド出身。ロンドンの上流社会にあっては、ともに異邦人だ。クリスは、ノラの美しさと屈折した共感によって、どうしようもなく彼女に惹かれていく。

 2人は許されざる関係を結ぶ。やがてその関係が破綻しかけたとき、追いつめられた彼は一つの犯罪に手を染めるのだった。

 ……と、いうような話。21世紀版『太陽がいっぱい』という趣もあれば、「美女と犯罪」をエレガントに描いている点ではヒッチコック・スリラーのようでもある。それでいて、芯の部分にはやはりウディ・アレンらしさがしっかりとある。

 たとえば、深刻な場面になればなるほど不思議な滑稽味が漂うところ。映画の終盤は、「犯罪」が警察に発覚するか否かのサスペンスが見どころなのだが、ハラハラドキドキより、むしろ笑いのほうが勝っている。

 そして、最もウディ・アレンらしいのは皮肉なラスト。誰もが『太陽がいっぱい』のようなラストシーンを想像する展開にしながら、アレンはそうせず、最後の最後でするりと身をかわすのだ。

 特筆すべきは、ノラを演じるスカーレット・ヨハンソンの素晴らしさ。
 『バーバー』や『真珠の耳飾りの少女』で無垢な少女を演じ、『ロスト・イン・トランスレーション』で世間知らずのかわいい若妻を演じた彼女が、この映画では初めて危険な「ファム・ファタール(運命の女)」役に挑んでいる。主人公が惑わされるのも無理はないと思わせる、堂々たるセクシー悪女ぶりだ。

 ヒッチコックが生きていたら、きっと彼女を自作のヒロインに抜擢したに違いない。
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がんばれ王さん!

 ソフトバンクホークスの王貞治監督が、胃ガンで全摘手術を受けたという。

 たしか、昨日までは各メディアとも「胃の腫瘍」とだけ報じていて、ガンと断定してはいなかったと思う。もっとも、報道に接する者はみな「きっとガンなのだろうな」と思っていただろうが…。

 私は少年時代から「長嶋よりは王派」だった。 
 ダイエー時代の王監督のサインボールは、私の宝物だ(これは、タイーホされてしまった高塚猛・前ダイエーホークス社長からいただいたといういわくつきだが)。
 王さんにはがんばってほしいと切に思う。

 私が昨年取材したある人も、数年前にガンによる胃の全摘手術を受けた方だった。

 その取材を通して得た知識によれば、全摘するからといってガンの病状が進んでいるとはかぎらない。早期であってもあえて全摘することで、再発の可能性を格段に低くすることができるのだ。

 もっとも、全摘せずに胃の組織を少し残したほうが、術後の食事は楽であるらしい。残った胃が少しずつ復元してくるからである。だが、全摘の場合、当然のことながら胃は復元しようがない。

 胃がなくなったぶん消化が悪くなるので、手術後しばらくの間は食事を普通にとることができなくなる。のべつまくなしにつまみ食いするような感じで、少量ずつゆっくり時間をかけて食べるのだという。食欲も、ガクンと落ちるらしい。

 ただ、人間の適応能力とはすごいもので、全摘手術から数年がすぎると、手術前とまったく変わらない食生活が送れ、酒すら普通に飲めるという。
 王さんにもそれくらい元気になってほしいものだ。
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苫米地英人『脳と心の洗い方』

脳と心の洗い方~「なりたい自分」になれるプライミングの技術~ 脳と心の洗い方~「なりたい自分」になれるプライミングの技術~
苫米地 英人 (2006/07/07)
フォレスト出版

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 苫米地英人著『脳と心の洗い方/「なりたい自分」になれるプライミングの技術』(フォレスト出版/1300円)読了。
 アマゾンのランキングでベストスリーに入るなど、大きな話題になっている本。

 著者は、オウム真理教信者の「脱洗脳」を手がけたことで知られる脳機能学者。要は「洗脳」の専門家である。その著者が、自分自身を「洗脳」することで自己改造を成し遂げ、そのことによって夢や目標を達成するノウハウを説いた本。

 この手の「成功法則」本は、これまでにも山ほどあった。『思考は現実化する』のナポレオン・ヒル、『眠りながら成功する』のジョセフ・マーフィーあたりが代表格である。

 いずれも、主張の骨子は基本的には同じ。「自分が『かくありたい』と願う成功イメージをくり返し思い描き、そのイメージが潜在意識レベルに定着すれば、そのことが自らの行動を変え、 周囲の環境にも影響を与え、現実に成功することができる」というもの。

 ビジネス書によくある、「手帳に夢や目標を書き込み、それを毎日眺めて自己啓発することによって、夢をかなえる」などという主張も、そのバリエーションといえよう。

 この手の本は、読んでいることを人に知られるのがちと恥ずかしい。中野翠が名付けたところの「『ビッグ・トゥモロウ』野郎」(=雑誌『ビッグ・トゥモロウ』を毎号熟読しているようなヤツ)に見られかねないからだ。

 恥ずかしながら、私はナポレオン・ヒルやマーフィーの本も何冊か読んでいる。人間の祈りがなぜかなうか(あるいはかなわないか)ということに強い関心があるからだ。

 本書もナポレオン・ヒルなどと同傾向の本だが、類書と違うのは、「かくありたい」と思う自分のイメージを潜在意識に定着させるプロセスに、洗脳技術が応用されている点。「逆腹式呼吸」「人工共感覚」「記憶のパレット訓練」などを用いて、そのイメージを鮮明化させるトレーニングのやり方が紹介されている。

 このトレーニングによってホントに「なりたい自分」になれるのかどうかは、私にはわからない。が、「自分を洗脳することで目標を達成する」という切り口は過去の「成功法則」本にはなかったもので、面白かった。

 ただし、具体的なノウハウが説かれているのは全6章のうち4、5章のみで、あとは読む必要なし。
 ほかの章では、“現代においては、誰もがメディアなどによって「洗脳」され、思考をコントロールされている”ということをさまざまな角度から述べているのだが、そんなこと、いまさら言われるまでもないのである。

 それと、文章がものすごく粗雑で、そのせいでわかりにくくなっている部分が多々ある。本人が書いているのだとしたらずいぶん悪文だし、ライターがまとめたのならひどいやっつけ仕事だと思う。
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パンタ『ナイフ』


ナイフ (宝島コレクション)ナイフ (宝島コレクション)
(1989/01)
パンタ

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 パンタの詩集『ナイフ』(JICC出版局)を読む。

 パンタが、頭脳警察時代から『クリスタルナハト』までの自作曲の詞を厳選したもの。
 1989年に刊行されたもので、絶版となって久しい。新刊書店で入手しそびれて以来、ずっと古書店などで探していたのたが、ついに見つからず。たまにアマゾン・マーケットプレイスなどには出品されるものの、足元を見るような高値がついているため買わずにいた。

 で、しびれを切らして、都立中央図書館の蔵書を取り寄せたしだい。仕方ないから全部コピーして、自分用の一冊を作るのである。

 羽良多平吉の装丁がクールで、1冊の本としても上出来。鋤田正義らの撮影によるパンタのグラビア(!)ページもある。このころのパンタは精悍なハンサムでじつにカッコよかったなあ。

 ロック関係の詩集としては、新潮文庫の『ムーンライダーズ詩集』(これは持っている)と並ぶ名作ではないかと思う。

 頭脳警察時代からの名曲がほとんど網羅されているが、「人間もどき」はさすがに収録されていない。歌詞もヤバイしタイトルからしてヤバイから、まあ無理もない。あの曲の詞も私は大好きなのだが…。

万世一系の人間だってよ
オレたちゃみんな家族なんだってよ
笑わせんなよ 日本書紀
(中略)
知らねえなんぞ云わせるものか
おまえらまとめて天国行きさ
地獄へなんぞいれねえよ
くたばりぞこないの人もどき(「人間もどき」)



 この詩集が発刊された当時の帯の惹句は、「溢れるラディカリズムとロマンティシズム」だった。
 まさに言い得て妙。ラディカリズムとロマンティシズムがせめぎ合う、「これぞロックの詩だ」という詩が満載。そして、読むだけで映像が鮮やかに喚起される、イメージ豊かな詩が多い。たとえば――。

つきっぱなしのストロボのように
まばたきを忘れた空
砂の焦げる匂いのなかで
ひとすじのパイプラインが海へ海へと果てなくつづく(「ネフードの風」)

 

 とくに、日本ロック史上屈指の名盤とされる『マラッカ』『クリスタルナハト』の収録曲は、歌詞としても総じて質が高い、と改めて感じた。

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『蛇イチゴ』


蛇イチゴ [DVD]蛇イチゴ [DVD]
(2004/04/23)
宮迫博之、つみきみほ 他

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 『蛇イチゴ』をDVDで観た。現在第2作『ゆれる』が公開中の西川美和の監督デビュー作(2002/公開は2003年)だ。

 先週号の『アエラ』に載った西川のインタビュー記事を読んで、『ゆれる』に「傑作の予感」をビビッと感じた。で、ぜひ観たいと思っているのだが、その前に前作も観ておこうと思ったしだい。

 この『蛇イチゴ』も傑作だ。脚本も西川が書いているのだが、脚本・演出ともに一級品。「手慣れた感じ」すら漂う巧さで、当時28歳の新人監督の作品とはとても思えない。

 タイトルの意味が鮮やかに浮かび上がる見事なラストシーンまで、少しのゆるみもなく進むストーリー。

 主要キャスト4人(宮迫博之、つみきみほ、大谷直子、平泉成)がそれぞれ絶妙のハマリ役で、演技も素晴らしい。
 西川は『誰も知らない』の是枝裕和の弟子なのだそうで(『蛇イチゴ』のプロデューサーも是枝)、ドキュメンタリーを思わせる自然な演技を引き出す手腕は師匠譲りかも。

 深刻な家庭崩壊劇を乾いたブラック・ユーモアで包んだ奇妙なテイストは、『アメリカン・ビューティー』を彷彿とさせる。

 こんなに優れた作品を見落としていたとは、不覚であった。
 『ゆれる』にも大いに期待。

 ところで、『蛇イチゴ』に何度か登場するモノレールは、我が家のベランダからも行き来が見える「多摩都市モノレール」である。舞台になっている「瀬野市」(?)は架空の市だが、実際に撮影されたのはもしかして我が立川?
 そういえば、『誰も知らない』のクライマックスにもモノレールが登場したっけ(あちらは羽田行きのモノレールだけど)。
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『森のリトル・ギャング』

森のリトル・ギャング プレミアム・エディション ハミーのくるくる大作戦ディスク付き (初回限定生産) [DVD]森のリトル・ギャング プレミアム・エディション ハミーのくるくる大作戦ディスク付き (初回限定生産) [DVD]
(2006/12/01)
ブルース・ウィリスギャリー・シャンドリング

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 六本木のアスミック・エース試写室で 『森のリトル・ギャング』を観た。8月5日公開の、ドリームワークスのCGアニメ。

  公式サイト→ http://mori-gang.com/

 ドリームワークスとピクサーの両雄がしのぎを削る形で、その急速な進歩を牽引してきたハリウッド産CGアニメ。いまや技術的には「描けないものはない」というところまできているのではないか。
 今作でも、鬱蒼と茂る森の描写などはすさまじいまでの緻密さ。葉の一枚一枚まで表現し得ているのだ。

 動物たちが冬眠から目覚めてみると、彼らが棲む森の大部分は巨大な新興住宅地になっていた。食糧を調達するには、人間たちの食べ物を横取りするしかない。さて、どうするか? …というのが基本設定。

 人間が森を浸食し、動物たちが人間の食糧をあさるという光景は、世界中のあちこちでくり広げられている。だが、そうした哀しい現実を設定に用いながらも、この作品は「人間たちの身勝手な自然破壊を告発」したり、「動物たちを哀れんだり」というよくある視点とは無縁だ。

 なにしろ、主人公のアライグマはポテトチップス中毒(笑)。中毒が昂じてコワイ熊が貯め込んだジャンク・フードを盗んでしまい、途中で見つかって「満月の夜までに同じ量の食べ物を返さなければ、おまえを食う」と言われてしまう。
 困ったアライグマは、森で出会ったほかの動物たちをチップス中毒にして、彼らと組んで人間の食べ物をかっさらおうとする。だが、人間側も動物たちを「駆除」しようとし、動物対人間の闘いが始まるのだった。

 その闘いを描いた痛快アクションであると同時に、これは動物たちの友情物語でもある。天涯孤独で生きてきたアライグマは、ほかの動物たちと初めて共同作業を成し遂げることを通じて、友情の素晴らしさに目覚めるのだ。

 スカンクの屁やリスのゲップなどが物語のアクセントになるあたりの下品さと、全編にあふれる毒気とアイロニーが、いかにもドリームワークスらしい。「ピクサーみたいに人畜無害なCGアニメは作らないぜ」という、彼らなりの矜持が感じられる。
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西原由記子『自殺する私をどうか止めて』


自殺する私をどうか止めて自殺する私をどうか止めて
(2003/12)
西原 由記子

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 西原由記子著『自殺する私をどうか止めて』(角川書店/1300円)読了。
 ボランティア団体「自殺防止センター」の所長である著者が、同センターの活動を振り返り、自殺防止活動の意義と遺族ケアの重要性を訴えた一冊。

  → 「自殺防止センター東京」のサイト

 私が「自殺防止センター」と著者の名を知ったのは、別冊宝島445号『自殺したい人びと』(これはよくできた本)所収の北島行徳のルポによってである。

 電話を通じて悩める人々の声に耳を傾けるボランティアといえば、「いのちの電話」がある。「いのちの電話」が幅広い悩みを対象にしているのに対し、「自殺防止センター」はその名のとおり、自殺だけに的を絞っている。また、電話を通じた活動のみならず、相談者との直接面談や自殺から救うための緊急出動も行っている。
 まったくの無償奉仕である自殺防止活動に生活の一部を捧げる著者たちの熱意には、頭が下がる思いだ。

 本書に教えられるのは、相手の話を真摯に「聴くこと」がいかに大きな力となるかということ。
 「自殺防止センター」という名称から、私は、“電話をかけてきた相手に自殺を思いとどまらせるため、言葉を尽くして説得する”活動を想像していた。しかし、そうではない。電話応対でたいせつなのは、相手の話をしっかりと聴くことなのだという。
 著者は次のように言う。
  

 自殺防止活動とは、自殺したいと訴える人の感情を避けようとするのではなく、共にそれを味わい、死を恐れず、死に直面することです。さらに、相談者の決断を重んじることです。



 「相談者の決断を重んじ」たら自殺防止にならないではないか、と思う向きもあるかもしれない。だが、電話をかけてくる相談者の多くは「誰にも自分の気持ちをわかってもらえない」という深い孤独感を背負っている。だからこそ、「自分の思いをわかってくれる人がここにいる」と感じることが何よりも大事で、それが自殺を思いとどまることにつながるという。

 著者は本書の中で、自分を飾ろうとする姿勢を微塵も感じさせない。過去の失敗事例や、自分たちの活動の限界についても率直に語っている。そうした姿勢に好感がもてる。

 人の苦しみや悩みがどこから出て、その人をどんなに苦しめているか、「わかりますよ」なんて簡単には言えません。ただ、わかろうとする努力があるだけです。



 そうした限界をふまえたうえで、著者は、自分たちの活動によって死の淵から蘇生した人々のことを紹介していく。相手の「死にたい」という気持ちを変えるためにたいせつなのは、しっかりと「聴くこと」、そして相手と「本気で向き合う」ことだという。

 たしかに言えるのは、本気でぶつかり合うとき何かが起きるということです。

 

 「自殺者年間3万人時代」を迎えた日本にあって、孤軍奮闘をつづける著者たちの思いが伝わってくる好著。
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川島なお美さんを取材


フルボディ―恋して、ワインして。フルボディ―恋して、ワインして。
(1999/06)
川島 なお美

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 今日は、テレビ東京天王洲スタジオで女優の川島なお美さんを取材。
 
 取材テーマは、ワイン。川島さんがワインをテーマに書き下ろしたエッセイ集『フルボディ/恋して、ワインして。』(マガジンハウス/1400円)を読んで臨んだ。

 さすがに女優。至近距離で見るとオーラがあった。私より年上とはとても思えない美しさである。

 ワイン好きの芸能人・文化人は多いが、川島さんほど真剣に「ワイン道」を極めている方はいない。難関として知られる「ワイン・エキスパート」の資格ももち、「名誉ソムリエ」の称号(「ソムリエ」は実際に飲食サービス業に従事している人の資格なので、一般のワイン愛好家は取れない)やフランス4大ワイン産地の「騎士号」も得ている。

 「ワイン・エキスパート」の資格をとるにあたっては、「受験対策」として田崎真也氏の学校に通って勉強もしたという。

 心の底からワインが好きな人なのだなあ、と感心。川島さんのワイン好きについては、女性週刊誌などがしばしば揶揄的に取り上げてきたし、私自身も正直なところ「女優としてのセールスポイント作り」なのだろう、くらいに受け止めていた。勝手な思いこみをちょっと反省。
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チャットモンチー『耳鳴り』

耳鳴り 耳鳴り
チャットモンチー (2006/07/05)
KRE

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 昨日発売になったチャットモンチーのファースト・フルアルバム『耳鳴り』(キューンソニー/3059円)にすっかりシビレてしまい、昨夜からずっとヘビロ中。

 チャットモンチーは、徳島出身の女の子ばかりの3ピース・バンドだ。

 オフィシャルサイト→ http://www.chatmonchy.com/

 いわゆる「ガールズ・ロック・バンド」のうち、私がCDを買うほど好きになったのは、ゼルダ(古いね)、ナーヴ・カッツェ、少年ナイフの3つだけ。4つ目がこのチャットモンチーである。つまり、私にとっては少年ナイフ以来の衝撃。

 チャットモンチーの音の魅力は言葉で伝えにくい。彼女たちの音は誰にも似ていないから。

 もちろん、断片的に似ているものならいろいろある。ヴォーカル・スタイルにはYUKIの影響が感じられるとか、シングル「恋の煙」は初期のポリスを彷彿とさせるとか、オルタナっぽいバンド・サウンドは少年ナイフに似ているとか。

 しかし、アルバム全体を通して聴くと、「誰にも似ていない」と感じられる。つまり、ファースト・アルバムの段階で確固たるオリジナリティをもっているわけで、これはすごいことだ。

 メンバー3人の「地味カワイイ」ルックス、恋愛をおもなテーマにした詞、かわいらいしいヴォーカルだけを取り出せば、よくあるJ-POPのガールズ・バンド(「ホワイトベリー」とか)のように思える。
 しかし、表面的なかわいらしさとは裏腹に、チャットモンチーの音はまぎれもないロック、それも、轟音ギターを核にした骨太なオルタナ・ロックなのである。そのギャップがたまらない。

 特筆すべきは、すべての曲の作曲も手がけている(歌詞は3人それぞれが提供)橋本絵莉子のヴォーカルの素晴らしさ。一見か細く頼りなげな声なのに、曲のクライマックスにさしかかると、伸びやかなハイトーンの声で思うさまシャウトする。その切実さが聴き手の胸を激しく揺さぶる。

 詞もいい。みずみずしく繊細な言語感覚。

夕日色のギターを何度もかき鳴らして/なくならないこの思いをかき消した(「ひとりだけ」)

 薄い紙で指を切って/赤い赤い血が滲む/これっぽっちの刃で痛い痛い指の先/あなたのトゲがささったようで/これっぽっちの小さな傷が/痛い痛い まあるい心臓/ドクンドクン 血がめぐる(「ハナノユメ」)

 
 「ハナノユメ」「恋の煙」の2曲の素晴らしさは圧倒的だが、ほかにもいい曲がいっぱい。とくにアルバム前半はパーフェクトな仕上がり。なんとみずみずしいロック・アルバムであることか。

 このアルバムのプロデューサー・いしわたり淳治(ex.SUPERCAR)がオフィシャルサイトに寄せた「デビューに寄せて」という文章に、こんな一節がある。

普通の女の子が普通に音楽をつくって鳴らしている。ただそれだけのことに宿る魔法。彼女たちはそれを体現している。
 メンバーのうち二人が教育大学に通うくらいだから、当然みんな成績優秀なのだろうし、性格も真面目で明るくてのんびりとしていて、きっと体育祭も文化祭も一生懸命やったタイプだと思う。そういう「清潔な生い立ち」は一昔前ならロックの定義から大きく外れていた気がするのだが、彼女たちの出す音は不思議なことに、その辺のロックぶっているバンドよりも断然ロックだ。

言い得て妙である。
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テイマー・デイヴィス『ミルク&ハニー』

ミルク&ハニー ミルク&ハニー
テイマー・デイヴィス (2006/08/09)
ユニバーサルインターナショナル

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 テイマー・デイヴィスのソロ・デビュー・アルバム『ミルク&ハニー』(ユニバーサル/期間限定低価格1980円)を、送ってもらったサンプルで聴いた。8月9日発売。

 プリンスの最新作『3121』にフィーチュアされていた女性シンガーだと言えば、「ああ、あの…」と思い出す人が多いだろう。プリンスに見出された、「秘蔵っ子」ともいうべき才女である。
 
 当然、このソロ・デビュー作もプリンスが全面バックアップ。すべての曲のプロデュース・アレンジ・作曲を手がけている(詞はすべてプリンスとテイマーの共作)。
 『3121』に収録されていたプリンスとテイマーのデュエット曲「ビューティフル、ラヴド&ブレスド」が、このアルバムにも入っている。

 一聴した印象は、「プリンスが手がけたにしては普通のポップ・アルバムだなあ」というもの。時代に先駆けるような先鋭的な感覚はあまりない。
 過去の「プリンス・ファミリー」の女性アーティストたち、たとえばシーラ・Eやウェンディ&リサなどと比べると、ずいぶんアクが弱い。もっとも、アクが強くない分だけ一般受けはするだろうから、それは欠点ではなくむしろ長所だが…。

 ただ、各曲の出来は非常に粒揃い。「プリンス、本気出してるな」という感じ。メロディアスなミディアムR&Bを中心に、ギターがギンギンのロック・ナンバーから甘いラヴ・バラードまで、多彩な曲が詰め込まれているが、どれもシングルカットできそうなキャッチーな仕上がりだ。
 ハイトーンの声で歌い上げるヴォーカルも、透明感と力強さを兼ね備えてなかなかのもの。
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前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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