ジョン・ルイスほか『MARCH(マーチ)』



 仕事上の必要があって、社会派アメリカン・コミック『MARCH(マーチ)』(ジョン・ルイス、アンドリュー・アイディン作、ネイト・パウエル画、押野素子訳/岩波書店)全3巻を一気読み。

 アメリカでは「グラフィック・ノベル」として位置付けられるタイプの作品で、一般的なアメコミ(マーベルとかDCとかの)とは印象が大きく異なる。

 絵は1ページ1ページがそれぞれイラストとして価値を持つような見事なものだが、それでいて読みにくくはない。日本のマンガに慣れた読者にも抵抗なく読める。

 公民権運動において重要な役割を果たした「ビッグ6」の一人に数えられる、米下院議員ジョン・ルイスの歩みを描いたものだ。

 ルイスの少年時代が描かれる序盤は、正直退屈。黒人差別に抗する闘いが具体的に始まる1950年代後半あたりから、徐々に面白くなる。「ワシントン大行進」の舞台裏が描かれる第2巻の途中あたりからは、ぐいぐい引き込まれた。

 マーティン・ルーサー・キングもローザ・パークスも、ケネディ大統領もマルコムXも登場する。
 が、日本ではあまり知られていない、公民権運動の末端の様子が詳細に描かれており、そのへんこそが最も面白かった。黒人側もけっして一枚岩ではなく、意見の相違と衝突がしょっちゅう起こっていたあたりがリアル。
 あと、マーティン・ルーサー・キングが本作では「偉人扱い」されていない(他の運動家がキングの保身ぶりを批判する場面がある)あたりも、妙にリアル。

 「ああ、そういうことだったのか」と、本作で初めてわかったこともたくさんある。
 米国の公民権運動について、ハリウッド映画などから知った断片的な情報で「知ってるつもり」でいたが、そのじつ、深いところまで理解できていなかった。

 21世紀の日本を担う若者たちにこそ読ませたい。全3巻揃えると7500円もする高価なコミックなので、10代が買うのはシンドいだろうが、図書館で借りてでも読んでほしい。

2018年に読んだマンガBEST10



 年末恒例、「今年のBEST10」。最後はマンガのBEST10である。

 基準は、「現在連載中、もしくは今年まで連載していた作品、もしくは今年コミックスが出た作品で、昨年までのBESTには選出していなかったもの」。
 感想を書いたものについては、タイトルをクリックするとレビューに飛びます。

 10作中3作がウェブ連載であるあたりに、時代を感じる。今後は年々、ウェブ連載の比率が上がっていくのだろう。

 順不同だが、しいてBEST3を選ぶなら、『ハコヅメ』『ブルーピリオド』『ランウェイで笑って』の3つだろうか。

泰三子『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』

山口つばさ『ブルーピリオド』

猪ノ谷言葉『ランウェイで笑って』

真造圭伍『ノラと雑草』

吉田覚『働かないふたり』

齋藤なずな『夕暮れへ』

近藤ようこ『見晴らしガ丘にて  それから』
――近藤ようこの初期代表作で、1986年「日本漫画家協会賞優秀賞」を受賞した名作『見晴らしガ丘にて』の、30数年後を描く〝続編〟。
 あの住宅地でいま暮らす人々を描く、珠玉の群像劇。 『見晴らしガ丘にて』登場キャラの30数年後も描かれるなど、正編が好きな人ならなおさら楽しめる。

塩川桐子『ワカダンナ』
――寡作で知られた江戸マンガの名手・塩川桐子が、『コミック乱』(月刊時代劇マンガ誌)という格好の舞台を得て、近年、彼女にしては精力的に作品を発表している。
 これは今年出た短編集。かつての名短編集『ふしあな』よりも、もうちょっと肩の力が抜けた感じが好ましい。

押見修造『血の轍』
――これほど目が離せないサイコサスペンスは、いまほかにない。とにかく絵の迫力がすごい。絵描きとしての押見修造の到達点がここにある。
 あと、全編群馬弁(上州弁)のマンガであり、私にとっては母の故郷の言葉なので、その点にも親しみを覚える。

篠房六郎『おやすみシェヘラザード』
――版元の惹句にいうとおり、「誰も見たことの無い映画レビュー寝落ちバトル百合エロ漫画」。
 絶妙に色っぽいのに下品な「エロ」にはならない絵柄がよいし、映画マニアを唸らせるディテールのくすぐりが素晴らしく、何度も読み返しては楽しめる。

2017年に読んだマンガBEST10



 年末恒例、「今年のBEST10」。第1弾として、まずはマンガのBEST10を選んでみる。

 基準は、「現在連載中、もしくは今年まで連載していた作品、もしくは今年コミックスが出た作品で、昨年までのBESTには選出していなかったもの」。
 順不同。タイトルをクリックするとレビューに飛びます。

岩明均・室井大資『レイリ』 

田中圭一『うつヌケ』

崗田屋愉一『大江戸国芳よしづくし』  

石塚真一『BLUE GIANT SUPREME』

蛇蔵・鈴木ツタ・たら子『天地創造デザイン部』

鳥飼茜『ロマンス暴風域』

福満しげゆき『終わった漫画家』

高橋ツトム『残響』

萩尾望都『ポーの一族 ~春の夢~』

柳本光晴『響~小説家になる方法~』
――とくにエントリにしなかったものの、今年連載を楽しみに読んでいた作品の一つ。
 最近、少年マンガでいうところの「強い奴のインフレ」状態に陥っているが、それでもなお、平均以上の面白さを保っている。

■次点
眉月じゅん『恋は雨上がりのように』

■番外
宮谷一彦『ライク ア ローリング ストーン』
――過去作品の初単行本化ゆえ、「番外」とする。

2016年に読んだマンガBEST10



 大晦日の今日は、2016年BEST10の第3弾として、マンガのBEST10を。

 基準は、「現在連載中の作品で、昨年までのBESTには選出していなかったもの」。タイトルをクリックするとレビューに飛びます。

 
たーし『ドンケツ』

南勝久『ザ・ファブル』

佐々大河『ふしぎの国のバード』

日暮キノコ『ふつつか者の兄ですが』

鈴木良雄『フルーツ宅配便』

オジロマコト『猫のお寺の知恩さん』

施川ユウキ『バーナード嬢曰く。』

高野ひと深『私の少年』

山田胡瓜『AIの遺電子』

松田奈緒子『重版出来!』 関連エントリ(ドラマ『重版出来!』最終回)
――これまでも『月刊スピリッツ』で読んではいたが、テレビドラマ版にハマったのを機にコミックスを買い揃えた。「ドラマも込み」で考えるなら、私の本年ベスト1作品ということになろうか。

■次点
稚野鳥子『月と指先の間』 

2015年に読んだマンガBEST5



 大晦日の夜から風邪で熱を出してしまい、けっきょく、三が日ずっと寝床で過ごす羽目に……。
 酒を飲むのはおろか、食欲もなかったのでほぼ絶食状態。今日測ってみたら体重が2キロ減っていた(それでも2キロしか減らないのな)。
 まだちょっとふらふらするし、喉も痛いのだが、明日には今年初の取材もあるし、今日からそろそろ起き上がったしだい。

 「くっそー、自分史上最悪な年明けだぜ!」と思った。だが、考えてみれば4日間連続で完全に休んだのなんて、10年ぶりくらいである。最近はろくに休みもない状態がずっとつづいていたから、「三が日くらいゆっくり休ませろ!」とカラダが悲鳴を上げたのであろう。
 正月だったおかげで仕事に穴をあけることもなかったし、「体を休められたので結果オーライ」と考えよう。

 そんなわけで、今日やっと年賀状を書きます(三が日に届いた分の返事)。賀状下さった方々、スミマセン。


 年明け一発目は、2015年に読んだマンガBEST5を選んでみた(BEST10にするほどは新作をたくさん読まなかったので)。

一ノ関圭『鼻紙写楽』
――ほかの4作は順不同だが、これだけはダントツのマイ・ベストワン。「昨年のベスト」というより、すでにしてマンガ史上に残る名作。願わくば、何年でも待つからきちんと完結させてほしい。

田辺剛・カリブsong『サウダージ』
――薫り高い絵とストーリーで、古典のような風格を漂わせる好短編集。

蛇蔵『決してマネしないでください。』
――惜しくも最近完結してしまったが、じつに楽しい「大人の学習マンガ」であった。私はこの作品で蛇蔵のファンになってしまった。

たかぎ七彦『アンゴルモア 元寇合戦記』
――「どんどん題材がマニアックになっていく」という、最近の歴史マンガの傾向(フス戦争を描いた『乙女戦争』とか)を象徴する作品。元冦を描くに当たって、対馬での攻防に的を絞っているあたりがマニアックである。

竹良実『辺獄のシュヴェスタ』
――これもマニアックな歴史マンガの一つで、中世の魔女狩りを背景にした少女の復讐譚。竹良実は、このまま順調に伸びていけば、マンガ史に名を残す作家になれるであろう大型新人。

■関連エントリ→ 2014年に読んだマンガBEST10


Guide 

   →全記事インデックス

Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。54歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

Counter 

メールフォーム

★私にご用の方はここからメールを下さい。

お名前
メールアドレス
件名
本文

最近の記事

マイ「神曲」ベスト100

カテゴリー

ブクログ・MY本棚

タイトルの由来

●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

Archives

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
46位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
34位
アクセスランキングを見る>>