吉田理宏『黄色いバスの奇跡』



 昨日は、私用で群馬県桐生市へ――。

 行き帰りの電車で、吉田理宏著『黄色いバスの奇跡――十勝バスの再生物語』(総合法令出版/1296円)を読了。仕事の資料として。

 利用客数減少などで倒産の危機にあった、北海道帯広市の老舗バス会社「十勝バス」が、若き四代目経営者の改革によって蘇生していく道筋を描いたビジネス・ノンフィクション。ミュージカル化もされたという。

 よくまとまっている本だとは思うが、やたらと改行・行アケが多いスッカスカの体裁に違和感。ノンフィクションというより、ラジオドラマの台本を読んでいるような印象だ。

 読書慣れしていない読者にとっては、これくらいスカスカのほうが読みやすいのかもしれないが。

ピーター・ティール『ゼロ・トゥ・ワン』



 ピーター・ティール(withブレイク・マスターズ)著、関美和訳『ゼロ・トゥ・ワン――君はゼロから何を生み出せるか』(NHK出版/1728円)読了。
 
 米「PayPal(ペイパル)」の創業者であり、天才起業家・投資家として知られるピーター・ティールが、母校スタンフォード大学で行った学生向けの起業講座をまとめた一冊。
 なので、絶対に起業などしない私には関係ない話が多いのだが、それでも面白く読めた。

 著者の経営哲学は、シリコンバレーの中でもかなり特異なのではないか。というのも、著者は本書で、他企業との競争そのものを全否定しているから。
 つまり、競争のない「ブルー・オーシャン」を新たに切り拓くことこそ著者にとっての起業であり、既存の「レッド・オーシャン」に身を投じる起業は不毛だというのだ。

 進歩の歴史とは、よりよい独占企業が既存企業に取って代わってきた歴史なのだ。
 独占は進歩の原動力となる。なぜなら、何年間、あるいは何十年間にわたる独占を約束されることが、イノベーションへの強力なインセンティブとなるからだ。その上、独占企業はイノベーションを起こし続けることができる。彼らには長期計画を立てる余裕と、競争に追われる企業には想像もできないほど野心的な研究開発を支える資金があるからだ。



 幸福な企業はみな違っている。それぞれが独自の問題を解決することで、独占を勝ち取っている。不幸な企業はみな同じだ。彼らは競争から抜け出せずにいる。(※引用者注/これはもちろん、『アンナ・カレーニナ』の名高い冒頭部分のもじり)



 「独占は悪であり、競争こそ望ましい」とする旧来のアメリカ社会の価値観と正反対であり、興味深い。書名の『ゼロ・トゥ・ワン』とは、0から1を生み出すことに成功した企業――すなわち著者の言う「幸福な企業」の謂だ。

 私には、第13章「エネルギー2.0」がいちばん面白かった。この章では、太陽光発電などのクリーンエネルギー企業が、一部の例外を除いて失敗に終わった理由が分析されている。

 環境テクノロジー企業はいずれも、世界をよりクリーンにする必要があるという聞き慣れた真実で自己を正当化していた。社会がこれほど熱心に代替エネルギーを求めているからには、すべての環境テクノロジー企業に巨大なビジネスチャンスがあるはずだという妄想を自分に信じ込ませていたのだ。



 失敗事例を通じて、成功する企業の条件を浮かび上がらせたケーススタディとして、この章は独立した価値をもっている。

石坂典子『絶体絶命でも世界一愛される会社に変える!』



 車谷長吉さんの訃報に接する。
 一時期まで全作品を読んでいた作家であるし、雑誌の夫婦特集の取材でご自宅におじゃまし、夫人(詩人の高橋順子さん)とともにインタビューしたこともあるから、早すぎる死に驚いた。

■関連エントリ→ 車谷長吉の作品

 晩年は作品に恵まれなかった(というより、ほとんど書いていなかった?)ようだが、中年になって結婚した氏にとっての「ミューズ」――順子夫人との平穏な生活は幸福だったのではないか。
 また、『赤目四十八瀧心中未遂』などいくつかの作品は、名作としてずっと世に残るだろう。
 ご冥福をお祈りします。


 石坂典子著『絶体絶命でも世界一愛される会社に変える!――2代目女性社長の号泣戦記』(ダイヤモンド社/1512円)読了。仕事の資料として。

 「所沢ダイオキシン騒動」に巻き込まれて地域住民のバッシングを受けた家業の産廃業を、創業者の長女が2代目社長となり、地域に愛される優良企業に生まれ変わらせるまでの軌跡を綴ったもの。

 地道な社員教育によって社風を変える努力、地域貢献のための工夫、ISO認証制度などをフル活用したイメージアップ(スキルアップ、社風改善策でもある)戦略など、著者の奮闘がつぶさに振り返られる。経営者のみならず、組織づくりに携わるあらゆる分野の人々にとって参考になる本だろう。

ルディー和子『合理的なのに愚かな戦略』


合理的なのに愚かな戦略合理的なのに愚かな戦略
(2014/10/23)
ルディー和子

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 「2月はわりとヒマになる」という腹づもりでいたのだが、いつの間にか月末まで仕事がギッシリ。
 ま、我々フリーランサーにとっては、「仕事がないつらさ」に比べれば、「忙しいつらさ」なんて「つらさ」の範疇にも入らないのだが……。


 ルディー和子著『合理的なのに愚かな戦略』(日本実業出版社/1836円)読了。仕事の資料として読んだものだが、読み応えある好著だった。

 著者はマーケティング界の第一人者にして立命館大学教授。セブン&アイ・ホールディングスの社外監査役でもある。
 その著者が、日本や各国のさまざまな有名企業の失敗事例を通して、失敗の深層を分析していく本。
 畑村洋太郎さんがずっと取り組んでいる「失敗学」の、ビジネス特化版という趣もある。

 マーケティング理論のみならず、行動経済学や心理学、脳科学など、さまざまな分野の先端的知見を駆使しての分析の手際は、鮮やかでスリリング。読んでいて知的興奮を覚える。

 おもな対象読者は企業経営者などのビジネスマンであろうが、私のような門外漢が読んでもためになる。

 たとえば、第2章「プライシングの逆説」では、いわゆる「牛丼戦争」(吉野家・松屋・すき家などによる牛丼の安売り競争)が「10年間を棒にふった」大失敗に終わった原因が、くわしく分析されている。
 この部分だけでもすこぶる面白く、質の高いビジネス論として独立した価値を持つものである。

 また、第4章「コミュニケーションの逆説」は、日本企業のコミュニケーション下手の深層に迫って、一種の日本文化論としても読める内容になっている。

 そのように、たんなるビジネス書に終わらず、さまざまな読み方が可能な奥深い内容になっているのだ。第一級のビジネス書である。

横田響子『女性社長が日本を救う!』


女性社長が日本を救う!女性社長が日本を救う!
(2011/05/26)
横田 響子

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 地獄の年末進行終了まで、あと一山というところである。


 横田響子著『女性社長が日本を救う!』(マガジンハウス/1404円)読了。仕事の資料として。

 女性社長たちを応援する会社「コラボラボ」の社長が、自らの半生とコラボラボの歩みを振り返り、元気な女性社長たちを紹介した本。

 中小企業の経営者を取材する機会も多い私だが、女性社長には魅力的な人が多いと感じる。総じて、男の社長にありがちな独特の押しつけがましさが希薄で、元気でしなやかなのだ。

 ま、いろんな女性がいるわけだから、「女性社長が増えれば世の中がよくなる」などと単純には考えないけれど……。

 本書は、起業を考えている女性たちの背中を押す本であり、1500人以上の女性社長と接してきた経験を通して、女性社長ならではの強みを紹介した本でもある。

 目からウロコの記述も多いし、男が読んでもためになる本だ。
 以下、付箋を貼った一節を引用。

 アメリカではすでに女性社長比率が30%を超えており、1300万人の雇用を生んでいます。日本の女性社長がアメリカ並の割合に増え、平均5名の雇用があれば100万人の雇用につながります。



 かつて「コラボラボ」がやっていることに対し、ある大手メディアの記者から「弱者連合」と言われたことがあります。



 学生にはいつも「行きたい会社のことを知りたかったら、入社3年目くらいの人と10年くらいの人に話を聞きなさい」とアドバイスしています。大学のOBに話を聞くのはかまわないけれど、入って1年目の人は何もわからず張り切ってるだけだし、40代、50代は昔話が混じりがち。3年目くらいの人の苦しい話と、10年目の人の話を聞くと、ようやくその会社での自分の30歳くらいの姿が多少見えてくる。




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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。54歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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