ロイ・ブキャナン『ライヴ・アット・タウン・ホール1974~ライヴ・ストック完全盤』



 ロイ・ブキャナンの『ライヴ・アット・タウン・ホール1974~ライヴ・ストック完全盤』を聴いた。

 発売元のPヴァインがつけた惹句には、次のようにある。

《全ギター・ファン必携の世紀の大発掘! テレキャスターの魔術師ロイ・ブキャナン、これがあの大名盤『Live Stock』の全貌だ!!
代表作『Live Stock』の元となった74年のライヴ音源を2枚組21曲にわたり完全収録!!  同作には未収録だったジミ・ヘンドリックス「Hey Joe」、ニール・ヤング「Down By The River」のカヴァーも垂涎!》

 ロイ・ブキャナンの代表作の一つである『Live Stock』は全7曲だったが、元のライヴ(1974年11月27日ニューヨークのタウン・ホールでのショー)は2セット制で、のべ21曲が演奏された。本作は、その2セット/21曲の演奏を、CD2枚組に完全収録したものなのだ。

 というと、「ふーん……。アウトテイクをかき集めて嵩を増やした、よくあるデラックス・エディションだね」と思うかもしれない。私も事前にはそう思っていた。

 が、実際に聴いてみてビックリ! 『Live Stock』収録ヴァージョンより、本作に初めて収録されたもののほうが、総じて演奏の出来がよいのだ。ジミヘンの「ヘイ・ジョー」のカヴァーが2ヴァージョン入っているが、その途中で見せる狂熱の弾きまくりがすさまじい! 鳥肌が立った。



 公式リリースされたものより、アウトテイクのほうがあきらかに出来がよいとは、いったいどういうことなのか?

 日本のロック・ファンの多くがそうだと思うが、私がロイ・ブキャナンの名を知ったのは、ジェフ・ベックの名盤『ブロウ・バイ・ブロウ』の一曲「哀しみの恋人達」(Cause We've Ended As Lovers)に、「ロイ・ブキャナンに捧ぐ」とクレジットされていたのを見たときだ。

 「へーえ、ロイ・ブキャナンって、ジェフ・ベックが曲を捧げるほどすごいギタリストなんだ」と思ってブキャナンのアルバムを聴いてみたものの、地味でじじむさい白人ブルース・ギタリストなものだから、10代のころにはいまいちよさがわからなかった。

 自分が年を取ってからロイ・ブキャナンのよさもわかってきたものの、「地味なギタリストだ」という印象は変わらなかった。
 商業的大成功とは生涯無縁だったし、留置場で自殺を遂げた(公共の場で泥酔したことから留置されていたときに、房内で自分のシャツで首を吊った)という悲劇的な最期も、そのイメージに拍車をかけたし……。

 本作のノリノリの演奏を聴いて初めて、「ベックやエリック・クラプトンがリスペクトした凄腕ギタリスト」としての真の姿に触れた気がする。

リーフ・ハウンド『グロウワーズ・オブ・マッシュルーム』



 リーフ・ハウンドの『グロウワーズ・オブ・マッシュルーム』をヘビロ中。

 リーフ・ハウンドは、1971年にこのアルバム一枚のみを遺して解散した、伝説のブリティッシュ・ハードロック・バンド。
 ……だったのだが、2006年にヴォーカルのピーター・フレンチが若手ミュージシャンたちを集めて再結成。2007年にはニューアルバム『Unleashed』も発表。12年には初来日公演も行い、そのライヴ盤まで出ている。

 私はまったく知らなかったバンド。ディスク・ガイド本『ブルース・ロック』に紹介されていたのを読んで興味を持ち、You Tubeで検索して聴いてみたらよかったので、アルバムを輸入盤で買ってみた。

■関連エントリ→ 白谷潔弘 ・マッド矢野『ブルース・ロック』

 サウンドはブルージーなハードロックで、スピード感よりもけだるいヘヴィネスで聴かせる感じ。渋い。
 初期のツェッペリン(ファースト、セカンドあたり)にもちょっと似ているが、全体にツェッペリンよりもB級感が濃厚だ。
 ただ、そのB級感がむしろ捨てがたい魅力になっている。ピーター・フレンチのハスキーなヴォーカルにも迫力と色気があって、大スターにならなかったのが不思議。


↑かなり初期ツェッペリンぽい「Stray」。

 スローナンバーなどはかなりブルース色濃厚で、男臭い哀愁味がなかなか。
 私の知らないいいバンドがまだたくさんあるものだなァ、と改めて思った。

ロリー・ギャラガー『ステージ・ストラック+3』



 ロリー・ギャラガーのライヴ盤『ステージ・ストラック』(ユニバーサルミュージック/1851円)が、ボーナストラック3曲を加えてリイシューされたので、ゲット。
 じつは『ステージ・ストラック』自体、まとめて聴くのは初めてである。

 ロリー・ギャラガーはライヴ・アルバムにハズレがほとんどないアーティストとして知られており、私も『ライヴ・イン・アイルランド』や『ライヴ・イン・ヨーロッパ』は愛聴してきた。
 この『ステージ・ストラック』は、彼のソロ・キャリアの中では3枚目のライヴ盤にあたる。前記2枚が名盤としてよく聴かれているのに対し、わりと目立たない作品だ。

■参考→ ロリーのファンサイト「maybe i will」(情報充実!)の本作解説ページ

 ブルース~ブルース・ロック~ハードロックの間を揺れ動いたのがロリーのキャリアだが、この『ステージ・ストラック』は彼のライヴ盤の中で最もハードロック寄りの仕上がりだ。
 渋いブルース・ギタリストとしての彼を評価する向きは、その点に不満を覚えるかもしれない。が、ロック寄りのリスナーである私から見ると、このアルバムはハードでエネルギッシュなギターの洪水で、もうサイコーである。

 「あまりブルース色の強いのは苦手だ」というロック・ファンが、最初に聴くロリー・ギャラガー、つまり入門編としてもふさわしい。


↑ノリノリのお気に入り曲「Wayward Child」

『ブルース・ギター・ウーマン』



 『ブルース・ギター・ウーマン(Blues Guitar Women)』を輸入盤で購入し、ヘビロ中。
 タイトルのとおり、女性ブルース・ギタリストの曲を集めたコンピレーション・アルバムである。

 女性ブルース・ギタリスト(&シンガー)の草分けであるメンフィス・ミニーの曲が、いちばん最後に収められている。
 メンフィス・ミニーの活躍した時代(おもに戦前)には、ギターを弾きながら歌う女性ブルース・シンガーは非常に珍しい存在だったはず。
 それが近年になって急増し、いまや百花繚乱の趣がある。2005年に発売された本作は、「ブルース・ギター・ウーマンの時代」を一望できる好コンピである。

■関連エントリ→ デボラ・コールマン『I Can't Lose』ほか

 CD2枚組に、全24アーティストの29曲が収められている。ディスク1がエレクトリック・ギター中心のコンテンポラリー・ブルース編、ディスク2がアコースティック・ギターのトラディショナル編に分けられているあたりも、気が利いている。

 収録アーティストのうち、私が知っていたのは、スー・フォーリー、アナ・ポポヴィッチ、デボラ・コールマン、キャロリン・ワンダーランド、マリア・マルダー&ボニー・レイット(共演曲)、それにメンフィス・ミニーのみ。
 まあ、私のお気に入りのデボラ・コールマンも日本盤は1枚も出ていないし、地味なジャンルだから、日本にはあまり情報も入ってきにくいのだ。

 私は前にこのシリーズの『ブルース・ハープ・ウーマン』(女性ブルース・ハーピストのコンピ)を買って愛聴していたのだが、出た順番は逆で、『ブルース・ギター・ウーマン』が米国でヒットしたため、第2弾として『ブルース・ハープ・ウーマン』が出たのだという。

 「女性だからうんぬん」とか、「女ならではのブルース・ギター」などという決めつけた言い方は、当のブルース・ギター・ウーマンたちが嫌がるところだろう。だが、最初から最後まで通して聴くと、「やっぱり男のブルース・ギターとは違うなァ」という感想を抱く。
 女性ブルース・ギタリストたちのほうが、総じて内省的・ストイックな印象であり、ギターのタッチも繊細なのだ。

 ところで、このコンピの日本盤はジャケにブルース・ギター・ウーマンたちの顔写真をちりばめているが(↓)、オリジナルのイラストのみのジャケのほうがずっとカッコイイと思う。



ライトニン・ホプキンス『モージョ・ハンド』



 ライトニン・ホプキンスの『モージョ・ハンド』を、71分収録の「コンプリート・セッション」ヴァージョン(Pヴァイン)で入手。ヘビロ中。

 ブルース史上一、二を争うほど有名なジャケットのアルバム。真っ赤な地を突き破る拳が強烈な印象を残す。
 最近私が座右に置いてしょっちゅう参照している小出斉著『ブルースCDガイド・ブック』のカバーにも、このジャケが用いられている。



 ちなみに、同書での本作の評価は、「怖くなるぐらいの名盤」「ライトニンの喉から、指先からブルースが湧き上がってくるようだ」と大絶賛である。

 1960年の作品で、ライトニンが弾いているのは生ギターのみ。にもかかわらず、生ギターが野太くドスが利いていて、まるで空気を切り裂くような音。ヘタなエレクトリック・ギターが裸足で逃げ出す迫力だ。
 ダミ声のヴォーカルと相まって、少しも薄めていないブルースの原液を飲み干すような気分が味わえる。

 タイトルナンバーの「モージョ・ハンド」に代表されるゴキゲンなブギと、ド迫力のスロー・ブルースが半々くらいの構成。そのどちらも素晴らしい。



 スロー・ブルースでは、「俺を裏切った浮気女をショットガンでぶち殺してやるのさ」という物騒な歌詞をおどろおどろしく歌い上げる「Bring Me My Shotgun」など、ねちっこい曲が出色。
 生ギター、ベース、ドラムスのみのシンプルな編成で、すき間の多いサウンドなのに、ピンと張りつめた緊張感がある。


 

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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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