南和行『同性婚』



 南和行著『同性婚――私たち弁護士夫夫(ふうふ)です』(祥伝社新書/842円)読了。仕事の資料として。

 同性パートナーと弁護士事務所を営む著者が、自らのゲイとしての半生を振り返るとともに、同性婚をはじめとするLGBTをめぐる問題を概観した書。
 「自分語り」の部分と、社会の動きを概説した部分のバランスが絶妙で、同性婚について考えるための優れた入門書になっている。

 著者が弁護士であるだけに、同性婚をめぐる法律の諸問題(「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」という憲法24条の記述をどう考えるべきか、など)の解説には深みがあり、読ませる。
 また、諸外国における同性婚をめぐる状況や、そこに至るまでの歴史についても、手際よくまとめられている。

 そして、現在のパートナーと弁護士事務所を立ち上げるまでのいきさつはドラマティックで感動的であり、このままテレビドラマや映画にできそうだ。

 渋谷区が同性カップルに「パートナーシップ証明書」を発行する条例を可決させるなど、今年は日本でも同性婚をめぐる状況が大きな潮目を迎えた。その潮目の年にふさわしい、時宜を得た好著。

小林節『白熱講義! 集団的自衛権』


白熱講義! 集団的自衛権 (ベスト新書)白熱講義! 集団的自衛権 (ベスト新書)
(2014/09/09)
小林 節

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 小林節著『白熱講義! 集団的自衛権』(ベスト新書/850円)読了。

 昨年に同じベスト新書から発刊された『白熱講義! 日本国憲法改正』の続編的な1冊。

 前著は安倍政権の憲法改正案に対する反論の書であったが、本書はもっとテーマを絞り、「7・1閣議決定」をめぐる集団的自衛権問題の論点を、憲法学者の視点から徹底解説した内容になっている。

 とかくわかりにくい集団的自衛権の問題について、「これ以上は噛み砕けない」というところまで平明に咀嚼した解説書だ。たとえば――。

 集団的自衛権とは、「他国(同盟国)の戦争に加担すること」である。

 この意味以上でも、以下でもない。



 主権国家は国際法上、当然の権利として「自衛権」を保有している。それには、「個別的自衛権」も「集団的自衛権」も含まれる。ただし、その行使は憲法や国内法の制約を受ける。
 自民党の一部議員は、「保有している権利を行使できないのは不当だ」と言うが、国際法上の権利が各国の憲法や国内法によって制約されるのは当然で、国際法の常識である。国家機関の行動が自国憲法の制約を受けるのは当たり前である。
「国際法上の権利だから、日本も集団的自衛権を行使できる」と、さも国際法を知っているように語る言論人もいるが、それは国際法音痴であると言わざるを得ない。
 わが国における制約は、当然ながら憲法9条である。



 集団的自衛権の問題は、現行憲法と抵触することが本質である。繰り返すが、憲法9条は、「海外派兵を認める」とは絶対に読めない文言である。



 このように、枝葉末節をバサバサと切り落とし、ことの本質をグイッとつかみ出すクリアカットな言説につらぬかれた本である。
 護憲派ではなく、30年来の改憲派憲法学者による解釈改憲批判であるからこそ、傾聴に値する。

南野森・内山奈月『憲法主義』


憲法主義:条文には書かれていない本質憲法主義:条文には書かれていない本質
(2014/07/16)
内山 奈月、南野 森 他

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 金・土と、取材で和歌山県へ――。
 新幹線と特急「くろしお」を乗り継いで行く。

 行き帰りの新幹線で、本が2冊読めた。
 そのうちの1冊が、南野森(みなみの・しげる)・内山奈月著『憲法主義――条文には書かれていない本質』(PHP/1296円)。

 AKB48のメンバーで、「日本国憲法を暗唱するアイドル」として知られているらしい内山に、憲法学者の南野(九州大学准教授)が憲法学を講義するという、面白い趣向の1冊。



 「なんでもかんでもAKBにからめやがって。売れればなんでもいいのかよ」と苦々しく思う向きもあろうが、読んでみたら意外なほど良書であった。

 講義のときには内山はまだ高校3年生(現在は慶応義塾大学の学生)だったから、女子高生に憲法学を講ずるわけで、当然、噛んで含めるようなやさしい教え方になる。だから、非常にわかりやすい。

 それでいて、憲法の本質はきちんと抑えられており、憲法入門として上出来である。

 私はAKBに微塵も興味がないので、内山奈月についても知らなかったのだが、本書を読むかぎり、知識も豊富で頭の回転も早い優等生という印象。AKBにもこういう子がいるんだねえ(偏見)。

木村草太『テレビが伝えない憲法の話』


テレビが伝えない憲法の話 (PHP新書)テレビが伝えない憲法の話 (PHP新書)
(2014/04/16)
木村 草太

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 今日は、都内某所で打ち合わせ。
 行き帰りの電車で、木村草太著『テレビが伝えない憲法の話』(PHP新書/821円)を読了。

 著者は憲法学界のホープであり、憲法学の知見を一般人にわかりやすく伝える“インタープリター”として、八面六臂の活躍をつづけている。

 本書は、ややヒネったタイトルがついているものの、木村草太流「日本国憲法入門」として読める内容だ。日本国憲法の全体像が大づかみにできるし、一方では憲法をめぐる最近のトピックへの目配りもきいている。
 たとえば、全6章中の第5章は、丸々、安倍政権の96条改正案(批判の集中砲火を浴びてこれを引っ込め、解釈改憲に至ったわけだが)に対する批判となっている。

 眉根にシワ寄せた憲法論ではなく、軽やかでやわらかい語り口になっている点がよい。笑いを誘う記述すら随所にあって、木村氏は意外にお茶目である。

 憲法訴訟について論じた第3章だけ、やや退屈に感じたが(とはいえ、内容は重要だし、そもそも木村氏の専門は憲法訴訟なのだそうだ)、ほかはどの章も面白く読めた。

 時節柄いちばんホットなテーマである集団的自衛権についても、9条を真正面から論じた第4章で詳述している。
 4月に刊行されたばかりの本だが、集団的自衛権行使容認の解釈改憲問題について論じた章を新たに加えて、緊急増補改訂版を出してもよいかも。

■関連エントリ→ 木村草太『キヨミズ准教授の法学入門』レビュー

ジェフリー・トゥービン『ザ・ナイン――アメリカ連邦最高裁の素顔』 


ザ・ナイン ---アメリカ連邦最高裁の素顔ザ・ナイン ---アメリカ連邦最高裁の素顔
(2013/06/20)
ジェフリー・トゥービン

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 昨日は、企業取材で仙台へ――。

 行き帰りの新幹線で、ジェフリー・トゥービン著、増子久美・鈴木淑美訳『ザ・ナイン――アメリカ連邦最高裁の素顔』(河出書房新社/3360円)を読了。書評用読書。

 タイトルの「ザ・ナイン」とは、連邦最高裁判事(長官含む)の9人のこと。アメリカという国の行方を決める重大な決定を下す、米司法界の頂点を極める超エリートたちである。

 その地位は終身制で、誰かが亡くなるか自ら引退するまで顔ぶれは変わらない。交代する場合、後任の任命は時の大統領の重大な仕事となり、その人事をめぐって全米のマスコミが大騒ぎをくり広げる。日本の最高裁判事よりもはるかに目立つ存在なのだ。

 本書は、1986年から2005年までつづいたウィリアム・レンクイスト長官時代を中心に、連邦最高裁の舞台裏を明かした法廷ノンフィクションである。
 大統領でいうと、レーガン時代からブッシュ(息子)時代までが主に扱われている。その時代のアメリカ政治の変遷を、連邦最高裁という窓から眺めた記録ともいえる。

 一見堅苦しそうなテーマだが、著者は人間ドラマに的を絞っているため、サクサクと読み進めることができる。ハルバースタムの諸作のように、綿密な取材でつかんだ事実を小説のように再構成するニュー・ジャーナリズムの手法が用いられているのだ。

 また、主人公たる連邦最高裁判事たちも、それぞれ意外なほど人間臭く、キャラが立っている。
 米国社会や法曹界にくわしい人ほど楽しめる本だが、とくにくわしくなくとも十分に面白い。


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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

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●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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