中野信子『ヒトは「いじめ」をやめられない』



 昨日は都内某所で取材。ゴーストの仕事なので、お相手等はナイショ。

 これが今年最後の取材になるかな(このあとに依頼がなければ)。各誌の年末進行も、やっと一段落。
 それでも、書かなければいけない原稿は年内山積みなのであった。


 行き帰りの電車で、中野信子著『ヒトは「いじめ」をやめられない』(小学館新書/842円)を読了。
 脳科学の観点からいじめの問題を考えた本である。

 中野さんは、昨年の『サイコパス』を大ベストセラーにした経験から、「売れる本を書く秘訣」のようなものを体得されたのかもしれない。それはたぶん、「誰もが関心を持たざるを得ない一つのテーマを、脳科学の観点から深く掘り下げる」ということだろう。
 『サイコパス』もそうだし、本書もそうだ。老若男女問わず、いじめ問題に関心がない人は皆無に近いだろうし。

 それ以前にたくさん出してきた、さまざまなテーマを総花的に取り上げた本(『脳はどこまでコントロールできるか?』など)も面白かったが、「売れる」という観点から言うとインパクトが弱いのである。

■関連エントリ
中野信子『サイコパス』
中野信子『脳はどこまでコントロールできるか?』

 もっとも、「書く秘訣」といっても、『サイコパス』も本書も、ライターが中野さんに話を聞いてまとめた本なのだが(本の中に構成者の名が明記されている)。

 本書は、人間の集団に「いじめ」が生まれるメカニズムを、脳内ホルモンの働きなどから解き明かした前半部分がスリリング。

 「いじめはあってはならない」と言ってみたところで、脳のメカニズムが必然的に生み出すものなのだから、ゼロにすることは絶対にできない。とくに子どもは大人に比べて脳が未発達だからこそ、子どもたちの集団ではいじめが生じやすい。
 だから、いじめをゼロにすることを目指すのではなく、できるだけ回避する方策を考えたほうがよい……というのが、本書のおもな主張だ。

 とくに面白いのは、向社会性(「反社会性」の対義語)を司る「愛情ホルモン」である「オキシトシン」や、「安心ホルモン」と呼ばれる「セレトニン」が、いじめを生み出すメカニズムに深く関わっているという指摘。
 つまり、オキシトシンやセレトニンという物質自体に善悪はなく、それが人の絆や安心感を生み出す面もあれば、逆にいじめを生み出す面もある、というのだ。

 印象に残った一節を引用する。

 「団結」という言葉のイメージが良すぎるあまりに、なかなか受け入れられないことかもしれませんが、「団結」を要求しすぎることにも、一定の歯止めが必要だと思います。
 これは学校そのもののの存在意義にも触れてきてしまうので、さまざまな議論があり得るかと思いますが、「団結は良いことだ」と言う人も、その意義とデメリットについて、一歩立ち止まって考えてみる必要があるのではないかと思います。
 悩ましいのは、多くの人が、団結がいじめを生むし、愛情が強いほど攻撃的になるし、仲間を大切にすることと戦争が実はリンクしているということを認められないことです。



 平和を目指すには戦争が起きるメカニズムを熟知しなければならないように、いじめを回避するにはいじめが起きるメカニズムを熟知しなければならない。
 学校でも、本書の内容をかいつまんで教える授業があってもよいと思った。
 

池谷裕二『できない脳ほど自信過剰』



 昨日は取材で神戸へ(日帰り)――。

 行き帰りの新幹線で、池谷裕二著『できない脳ほど自信過剰』(朝日新聞出版/1512円)を読了。

 『週刊朝日』連載のコラム「パテカトルの万能薬」の単行本化第2弾である。第1弾の『脳はなにげに不公平』よりも、さらに面白さが増している気がする。

■関連エントリ→ 池谷裕二『脳はなにげに不公平』ほか

 このシリーズは、脳科学、心理学、行動経済学などさまざまな分野の最新研究を紹介し、その研究結果から著者が考えたことを綴っていくサイエンス・コラム集である。
 最先端の研究に触れられてためになるし、池谷さんの考察にもヒネリがあって、目からウロコが落ちまくる。一つのコラムにつき、少なくとも一箇所は「へーえ!」という驚きがある感じ。

 バラエティ豊かな内容だが、通底するテーマは「脳という装置をどんなふうに考えたらよいのでしょうか」(「はじめに」)であり、さらにその奥にある共通テーマは「人間とは何か?」である。

 サイエンス・コラム集としてのクオリティは抜群だが、一つだけ難を言えば、このタイトルはなんとかならなかったものか?
 ぱっと見では意味がわからないし(本文中のあるコラムの内容をふまえたものなのだが)、読書意欲がまったくそそられない。タイトルで損をしていると思う。

築山節『定年認知症にならない脳が冴える新17の習慣』ほか



 昨日は、脳神経外科専門医の築山節(たかし)さんを取材。築山さんが所長を務める北品川クリニックにて。私はお盆期間も「絶賛仕事中」である。

 このブログ内を検索してみたところ、前回築山さんを取材したのは8年前の2009年のこと。品川から一駅先なのにまったく目立たない北品川駅で降りるのも、8年ぶりだ。

 築山さんの最新著作『定年認知症にならない脳が冴える新17の習慣』(集英社)、『脳神経外科医が教える「疲れない脳」の作り方』(PHP新書)を読んで、取材に臨む。

 2つのうち、『定年認知症にならない脳が冴える新17の習慣』はとくによい本であった。
 これは、累計57万部突破のベストセラーとなった築山さんの旧著『脳が冴える15の習慣』をふまえた続編ともいうべき本で、タイトルのとおり認知症予防に重点を置いた内容。

 「予約のとれない認知症外来の名医」(帯の惹句より)である築山さんの、長年の診療経験をふまえた、いわば“現場で磨かれた脳科学”の卓見が満載だ。

■関連エントリ
築山節『脳が冴える15の習慣』
築山節『脳から変えるダメな自分』

池谷裕二『脳はなにげに不公平』ほか



 昨日は、東大で脳科学者の池谷裕二さんを取材。
 東大本郷キャンパスは、ちょうど桜が満開。昨日はポカポカ陽気でもあり、そのまま花見になだれ込みたくなったが、お花見気分だけ味わってガマン。

 池谷さんを取材するのは8年ぶりだ。
 現時点の最新著作『脳はなにげに不公平――パテカトルの万脳薬』(朝日新聞出版/1404円)と、2012年刊行時に買ったが積ん読してあった『脳には妙なクセがある』(扶桑社/1728円)を読んで、取材に臨む。

 2冊とも、脳科学および隣接分野の最新トピックを紹介しつつ、「脳科学の視点から見て『よりよく生きるとは何か』」を考察したサイエンス・コラム集である。
 科学読み物としての知的興奮と、その底にある哲学的な深みのバランスが素晴らしい。面白くてためになる。

菅原洋平『すぐやる!』



 ジョン・ウエットン逝去――。
 昨年来、キース・エマーソン、グレッグ・レイクと、プログレ・レジェンドの訃報がつづくなあ。

 ジョン・ウエットンといえば、ロックファン一般には「エイジアのフロントマン」というイメージだろうし、プログレファンという狭い領域でいうと「第二期キング・クリムゾンの顔」というイメージだろう。
 が、私にとっては何よりも、「UKの中心者」としてのイメージのほうが大きい。私自身がロックを聴き始めた時期が、ちょうどUKの活動期に重なるからだ。

 ジョン・ウエットンはもちろん名ベーシストだが、やはりヴォーカリストとしての印象のほうが強い。彼の声自体がすごく好きだった。
 「キミタチ、サイコダヨ!(君たち、最高だよ)」――UKの日本公演を収めたライヴ盤『ナイト・アフター・ナイト』での、ジョンのたどたどしい日本語のMCを思い出す。

 ジョンのヴォーカルが冴え渡る、私のお気に入り曲を貼っておく。R.I.P.









 昨日は取材で永田町の衆院第二議員会館へ。で、今日は参院議員会館へ。

 今週は、月曜から金曜までずっと取材がつづく。
 まあ、たまにはそういうこともある。我々フリーランサーにとって、「仕事がないつらさ」に比べれば、「忙しいつらさ」など、つらさの範疇にも入らない。

 行き帰りの電車で、菅原洋平著『すぐやる!――「行動力」を高める“科学的な"方法』(文響社/1490円)を読了。
 リハビリテーション専門の作業療法士である著者が、仕事上の経験をふまえ、「後回しにせずにすぐやる力」を高める方法を開陳した本。

 類書は心理学者や脳科学者によるものが多いなか、作業療法士の目線から見た「行動力を高める方法」が説かれている点がユニークだ。
 本の企画としてはよいと思うが、内容はどうということのないものだった。

 この手の本のマイベストワンは(何度も書いているが)、先延ばしの研究をライフワークとしてきたカナダの心理学者、ピアーズ・スティールが書いた『ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか』である。同書を超える本はいまだにないし、本書など足元にも及ばない。

 本書は、脳科学の専門用語を随所にちりばめて信憑性を高めようとしているが、著者は脳科学の研究者でもないし、「どこまでホントなのかね?」と話半分で読んだ(偏見と言われれば偏見だが)。
 
 まあ、著者の書いている「コツ」の中に、納得のいくものもある。
 たとえば、「使ったものは元に戻す」とか、テレビなどのリモコンの定位置を決めておき、そこにいつも置いておくということが、「すぐやる力」を高めるために意外に重要だ、ということ。

 これは要するに、ルーティンでない行動は、ささいなこと(リモコンがどこに行ったか探すなど)でも脳に負担をかけるから、日常生活をできるだけルーティン化しておき、なすべき行動に振り向ける余力をキープしておけ、ということだろう。

 凡事徹底、ささいなことの積み重ねが大きなことを成し遂げるために大切だ、というのはそのとおりだ。
 でも、それは類書(たとえば、脳神経外科医・築山節氏の著書など)にもよく出てくる話で、著者の独創というわけではない。

 本書はよく売れているようだが(「8万部突破」という電車内広告を見た)、「後回しにせずにすぐやる力」を高める方法を知りたい向きには、『ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか』のほうを断然オススメする。


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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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