松林薫『迷わず書ける記者式文章術』



 松林薫著『迷わず書ける記者式文章術――プロが実践する4つのパターン』(慶應義塾大学出版会/1512円)読了。

 元『日本経済新聞』記者(といっても、早期退職した人なので、まだ40代半ば)の著者が、記者時代の経験をふまえて書いた文章読本。

 「記者式」とあるものの、ここに説かれている文章術は、ライターから一般人(ビジネス文書を書く機会の多い会社員など)まで、すべての人にとって有益である。新聞記事を書くための文章術は、かっちりとした基本形であるがゆえに「応用の幅が広い」のだ。

 私が松林薫の著書を読むのはこれで3冊目だが、前の2冊もそれぞれよい本だった。この人の知的咀嚼力(高度な内容を平明に語る力)は池上彰に匹敵するもので、今後「池上彰の後継者」たり得る逸材だと思う。本人が後継者になりたいかどうかは別にして。

■関連エントリ
松林薫『新聞の正しい読み方』
松林薫『「ポスト真実」時代のネットニュースの読み方』

 本書は、著者が関西大学で担当する「ネットジャーナリズム実習」用に書かれたテキストがベースになっているという。それだけにとてもわかりやすい。文章術の「基本のき」から、手取り足取りという感じで教えている。それでいて、プロのライターを唸らせる深みもあるのだ。

 私はライターという仕事柄、文章読本のたぐいをかなりの数読んできたが、本書はこれまでに読んだものの中で五指に入る良書である。

 新聞記者・元記者が書いた文章読本としては、本多勝一の『日本語の作文技術』が定番の名著として知られ、読み継がれている。本書は、同書に代わる新たなスタンダードといっても過言ではない。わかりやすさや、いまという時代に即した内容という点では、『日本語の作文技術』をしのいでいる。

 ライター志望者やブロガーなどが、文章力をブラッシュアップするために読む本として、「一冊目に読むべき本」はいまならこれだと思う。

 ついでのことに、当ブログでレビューを書いた本の中から、文章読本のオススメを挙げておこう。

■関連エントリ
外岡秀俊『「伝わる文章」が書ける作文の技術』
古賀史健『20歳の自分に受けさせたい文章講義』
岸本葉子『エッセイ脳』
永江朗『〈不良〉のための文章術』
野口悠紀雄『「超」文章法』
村田喜代子『名文を書かない文章講座』

 

竹熊健太郎『フリーランス、40歳の壁』



 竹熊健太郎著『フリーランス、40歳の壁――自由業者は、どうして40歳から仕事が減るのか?』(ダイヤモンド社/1512円)読了。

 書名の「40歳の壁」とは、副題のとおり、〝自由業者は40歳を境に仕事依頼が減り、キャリアの危機が訪れやすい〟傾向のこと。
 私も以前、自分のサイトに「ライター『40歳の壁』」という文章を書いたことがある。

■関連エントリ→ ライター「40歳の壁」

 この文章でも紹介した竹熊のインタビュー記事(「人材バンクネット」に載った「40代で訪れた人生最大の危機」)が本書のきっかけになったのかと思ったら、そうではなかった。
 吉田豪の『サブカル・スーパースター鬱伝』が「サブカル(者)は40歳を超えたら鬱になる」というテーマで書かれていたのに対し、竹熊が次のように応答し、「自由業40歳の壁」をテーマに連ツイしたことが、きっかけになったのだという。



■関連エントリ→ 吉田豪『サブカル・スーパースター鬱伝』

 仕事柄と年齢柄、私にとっては読まずにはいられない本であり、予約注文してゲット。
 昨日Amazonから届いたのでさっそく一気読みしたが、共感しすぎて息苦しくなるほど、共感ポイントに満ちた本であった。

 版元がダイヤモンド社であるため、ビジネス書っぽい体裁になっているし、ある種のビジネス書として読めないこともない。各界のフリーランサーが、40歳を過ぎても生き残るためのヒントが、随所にちりばめられてはいるからだ。
 が、ビジネス書としてよりも、「読み物」としての色合いのほうがはるかに強い。

 本書はまず、竹熊自身がどのように「40歳の壁」にぶつかり、どう乗り越えてきたかの赤裸々な記録である。そして、合間に入る5人の自由業者(田中圭一、都築響一、FROGMAN、とみさわ昭仁、杉森昌武)へのインタビューも、それぞれ「私はいかにして壁を乗り越えたか?」の記録になっている。

 竹熊自身をはじめ、50代中心の人選であるため、40代以下の人よりも、むしろ私のような50代フリーランサーのほうが、深く共感できる内容だ。

 自身が脳梗塞で倒れたときのことなど、深刻な話も多いのに、それを楽しめる読み物に仕立てるあたり、竹熊の書き手としての才能だろう。

 フリーの物書き/クリエイターとして40歳以後も生き残っていくために、肝に銘じるべき名言も随所にある。たとえば――。

 フリーが生きていく要諦は、なにかの仕事が当たったら、そこから「自分の二番煎じ」を続けることに耐えられるかです。二番煎じ、三番煎じを平然とやれて、しかも(ここが難しいのですが)「マンネリ」だと読者に思わせないことが肝心です。



 結局、最初の数年間にどういう人脈を築き上げたかで、フリーの進路は決まってしまうのです。



 私はフリーの身にもかかわらず、「営業」をしたことがほとんどありません。
 フリーランスの最大の営業は、仕事そのものです。版元編集者は、そのフリーが実際に行った仕事を見て、次の仕事を発注するのです。向こうから来る仕事であれば、意に沿わない仕事は、断ることもできます。持ち込みだと、まさかこちらから断るわけにはいきません。


 
■関連エントリ
竹熊健太郎『篦棒な人々』
竹熊健太郎『ゴルゴ13はいつ終わるのか?』
竹熊健太郎『マンガ原稿料はなぜ安いのか?』

山田竜也『フリーランスがずっと安定して稼ぎ続ける47の方法』



 山田竜也著『フリーランスがずっと安定して稼ぎ続ける47の方法』(日本実業出版社/1620円)読了。

 てっきり著者はフリーライターだと思って手に取ったのだが、本業はWEBマーケッター。ほかにコンサルティングやWEB管理、広告運用、セミナー講師などをしてマルチに活躍しており、その中で本も書いている、という人らしい(→この人)。

 いかにもそういう人が書いた感じの〝フリーランスの働き方入門〟である。ライターにも役立つ部分がないではないが、全体にフリーになりたての人向けという印象で、私にはあまり得るものがなかった。

 「うーん……、とくに異論はないけど、それってあたりまえの話だよね?」という部分多し。

 ただ、〝クラウドソーシングサイトで仕事を探す場合、「ランサーズ」や「クラウドワークス」では単価の安すぎる仕事が多いが、「ココナラ」は比較的高単価の仕事が得やすい〟などという話は、私のまったく知らない世界で新鮮だった。

 また、「フリーランスナウ」という、フリーランサーをマッチングさせるコミュニティサイトの存在も、本書で初めて知った。

 あと、著者はフリーになってからうつ病で休職した時期があるそうで、そこから立ち直るまでのプロセスの話は、同じようにうつを経験したフリーランサーには参考になるだろう。

 ところで、ホントにどうでもいいことだが、どうして「47の方法」なのだろう?
 私なら、あと3つひねくり出してキリのいい「50の方法」にするけどなァ。「恋人と別れる50の方法」というポール・サイモンの歌もあったように。

毎日新聞校閲グループ『校閲記者の目』


 一昨日の土曜日は、取材で京都へ――。

 取材が終わった後に京都国立博物館に行き、開催中の「国宝展」を観た。日本の国宝の約4分の1が京博に集結するという、話題の展覧会(↓『BRUTUS』も国宝展を特集)。



 台風が近づいて雨だったにもかかわらず、場内は激混み。見どころが多いこともあって、全部は見きれず。
 最大の目玉「曜変天目」(茶碗)はあまりの長蛇の列に見るのを断念したが、それでも見たものだけで十分「お腹いっぱい」になった。

 中世の仏画がよかったし、雪舟の国宝6件を一度に間近で見られたのも眼福であった。
 時間があったら京博に隣接する三十三間堂にも行きたかったのだが、「国宝展」だけで時間切れ。


 行き帰りの新幹線で、本が2冊読めた。そのうちの一つが、毎日新聞校閲グループ著『校閲記者の目――あらゆるミスを見逃さないプロの技術』(毎日新聞出版/1512円)。

 少し前に読んだ、『毎日新聞・校閲グループのミスがなくなるすごい文章術』の続編的な本。
 毎日新聞校閲グループの公式ツイッター&ブログがベースになっているだけに、前著に比べて写真や図版が多く、サラッと読める。

 とはいえ、ライター生活30年超の私も知らなかった「目からウロコ」の記述も随所にあり、勉強になる本だ。
 たとえば、「三十路」「四十路」は30代・40代の意ではなく、「30歳ちょうど」「40歳ちょうど」を意味する、とか(知ってました?)。

 

岩佐義樹『毎日新聞・校閲グループのミスがなくなるすごい文章術』



 岩佐義樹著『毎日新聞・校閲グループのミスがなくなるすごい文章術』(ポプラ社/1404円)読了。

 著者は『毎日新聞』のベテラン校閲記者で、同社の「用語委員会用語幹事」も務める人物。
 本書は、著者の豊富な校閲経験をふまえ、ありがちな言葉の間違いを紹介し、正しい日本語を指南していくもの。

 したがって、文章読本を連想させる「すごい文章術」というタイトルには、やや違和感を覚える。
 もっとも、よい文章を書くために必要な知識が多数紹介されているという意味では、文章術の本と言えなくもない。

 私はもう30年もライターをやっているので、日本語についての知識は人並み以上にはあると思う。
 それでも、書いた原稿の言葉の誤りを校閲に指摘されるなどして、「えっ? これって間違いなんだ」と気付いた経験は、けっこうある。゜

 このブログの中にだって、探せば言葉の誤用はあると思う。それくらい、日本語は難しいのだ。

 本書に紹介されている言葉の誤用、不備についても、初めて知ったものがいくつかあった。

 たとえば、「居並ぶ」という言葉の「居」には「座る」という意味があるから、立って並んでいる人について「居並ぶ」と表現してしまったら、誤用になるのだという。うーむ、知らなかった。

 また、「姑息」は「卑怯」という意味に誤用されがちだが、本来は「一時しのぎ」という意味なのだとか。
 これも知らなかった。卑怯という意味で「姑息」を用いたことも、たぶん何度もあると思う。

 これらの知識を得ることができただけでも、本書を読んだ価値があった。
 ライターや編集者なら、一読の価値はある本。著者の文章も平明で柔らかいタッチで、好感がもてる。


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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。54歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴31年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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