宮子あずさ『訪問看護師が見つめた人間が老いて死ぬということ』



 昨日は、取材で京都へ(日帰り)――。

 行き帰りの新幹線で、2冊本が読めた。
 そのうちの1冊が、宮子あずさ著『訪問看護師が見つめた人間が老いて死ぬということ』(海竜社/1404円)。取材の資料として読んだもの。

 著者は、たくさんの著書をものしているベテラン看護師。現在は精神科の訪問看護師として働いているそうで、本書はその経験から生まれたエピソードを綴ったもの。

 訪問看護という仕事のイメージが、よい意味で一変する内容だ。
 病棟勤務の看護師とは違う苦労とやりがいを赤裸々に明かして、読者の目を釘付けにする迫力がある。

 高齢化による医療費の増大を抑えるため、入院患者をなるべく減らしていこうとする世の趨勢によって、増加傾向にある訪問看護師という職業――。その内実を伝えて、社会的意義も高い本だ。 

山田悟『糖質制限の真実』



 山田悟著『糖質制限の真実――日本人を救う革命的食事法ロカボのすべて』(幻冬舎新書)を読了。
 例によって、Kindle日替わりセールで安かった(299円)ので買ってみたもの。

 糖質制限ダイエットは、ストリクトにやりすぎると健康を損なって危険だと言われる(参考→「糖質制限ダイエット」の第一人者急逝)。糖質も生きていくために必須の栄養素なのだから、当然だ。

 その点、この著者が奨めているのは「ロカボ=緩やかな糖質制限」(1日の糖質摂取量を130g以下に抑えよう、というもの)であり、健康に問題が起こりにくい。

■参考サイト→ Locabo(ロカボ) | ロカボ(糖質制限)ダイエットをもっと楽しく

 本書は、冷静で落ちついた記述に好感が持てる。この手の本にありがちな、派手な言葉で読者を煽るところが皆無なのだ。
 また、エビデンス重視の姿勢もよい。ロカボの正当性が、最新の栄養学などの知見で裏付けられていることが、かなりの紙数を割いて説明されているのだ。

 むしろ、エビデンスの説明のほうがメインになっており、具体的なロカボのやり方については少ししか触れられていない。
 したがって、本書の説明で納得のいった人は、著者が書いた(監修した)別のロカボ・レシピ本などを購入せざるを得なくなる(笑)。

 なかなか商売上手だが、「ロカボをやってみようかな」と思う人がいちばん最初に読む本として、とてもよくできている。良書である。

野村進『救急精神病棟』



 昨日は冷たい雨のなか、私用で巣鴨へ――。
 行き帰りの電車で、野村進著『救急精神病棟』(講談社文庫/905円)を読了。

 日本初の精神科救急医療機関となった「千葉県精神科救急センター(現・千葉県精神科医療センター)」に取材したノンフィクション。仕事の資料として読んだのだが、面白くて一気読み。

 野村進は優れたノンフィクション作家であり、その取材作法を明かした『調べる技術・書く技術』は、取材記事を書く者のバイブルといってもよい名著だ。本書は、その野村が3年越しの密着取材を行って書いたものだけに、内容が非常に濃い。

 精神科救急という過酷な現場で働く医師・看護師たちの息遣いが、ヴィヴィッドに伝わってくる。そして、背後にある日本の精神科医療の歴史や問題点にまで迫る奥深さを具えている。

 野村は近年、石井光太のノンフィクションに厳しい批判を投げかけてきたことでも知られる。“石井のノンフィクションには作り話が含まれているのではないか”という主旨の批判だが、その当否は私には判断しかねる。
 ただ、本書を読んで、背景には両者のノンフィクション作法の根本的な相違があるのだと感じた。

 石井光太のノンフィクションには、センセーショナリズムすれすれの危うさがつねにある。人目を引くドギツイ場面をことさら強調して描く「癖」があるのだ。
 対照的に、野村進はそういう危うさから遠い。本書もしかり。精神科救急という、いくらでもドギツイ場面を連ねられそうな舞台を選びながら、筆致はむしろ静謐で落ち着いているのだ。

■関連エントリ→ 野村進『千年、働いてきました』

梅永雄二『大人のアスペルガーがわかる』



 一昨日から昨日は、取材で福岡と熊本へ――。
 つづくときにはつづくもので、来週もまた別件の取材で長崎へ行く予定。九州づいている。

 で、昨夜はホテルニューオータニで行われた『中国の文明』(全8巻/潮出版社)の出版記念会に参加。舛添都知事、公明党の山口代表、佐藤優さん、山崎正和さんなど、参加者が豪華でビックリ。




 行き帰りの飛行機の中で、梅永雄二著『大人のアスペルガーがわかる――他人の気持ちを想像できない人たち』 (朝日新書/842円)を読了。

 発達障害の専門家である著者(宇都宮大学教授で、教育学博士・臨床心理士)による、アスペルガー症候群の概説書。
 仕事の資料として読んだものだが、一級の概説書であった。アスペルガー症候群の歴史と現状、当事者たちがどのような「生きづらさ」を抱えているか、周囲はどのようにサポートしていけばよいかなどが、ひととおり理解できる。

 文章は平明で過度の論文臭もなく、図表も適宜挿入されて、アスペルガー入門としてたいへんわかりやすい。
 くわしい人にとっては本書の内容はあたりまえのことばかりかもしれないが、素人の私には目からウロコの記述が多数。

左巻健男『病気になるサプリ』


病気になるサプリ 危険な健康食品 (幻冬舎新書)病気になるサプリ 危険な健康食品 (幻冬舎新書)
(2014/07/30)
左巻 健男

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 今日は、都内某所で打ち合わせが一件。
 行き帰りの電車で、左巻健男著『病気になるサプリ――危険な健康食品』(幻冬舎新書/842円)を読了。仕事の資料である。

 筆鋒鋭いニセ科学批判で知られる著者(法政大学教授)が、ニセ科学の巣窟とも言うべき健康食品業界に斬り込んだ1冊。

 類書も多い分野だが、本書はその中でも決定版といえる内容だ。「健康食品・サプリの危険性を製造の背景・広告手法・科学的根拠の面から徹底追及」(カバーの惹句)していて、目からウロコが落ちまくる。

 図表・データも豊富で、資料的価値も高い。巻末には「人気サプリの実力寸評」が付されており、9割方のサプリは飲む価値なしと判定されている。

 健康食品・サプリを愛用している人が、医学的根拠に無頓着な無知蒙昧とはかぎらない。むしろ半分くらいの人は、「既成の現代医学や栄養学などのほうが時代遅れなのであり、私たちこそが時代の先端を行っている」と思い込んでいたりするのだ。

 そのあたりにこの問題の根深さもあるわけだが、「薬にできるほどの有効性が立証されていないからこそ、サプリにとどまっている」というあたりまえのことを、肝に銘じたい。


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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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