坪井賢一『その手があったか! 時間がない人のための即効読書術』



 坪井賢一著『その手があったか! 時間がない人のための即効読書術』(洋泉社/1512円)読了。

 著者は元『週刊ダイヤモンド』編集長。
 多忙なサラリーマン生活のなか、時間をこじ開けるように読書をしてきた経験に基づく、実践的読書術が開陳される。

 「本が好きでたまらない」という感じが伝わってきて好感が持てるし、一般的サラリーマンに実践可能な方法に絞っている点もよい。つまり、「こんなやり方、金持ちの自由業者にしかできないだろ!」と言いたくなる記述が皆無なのだ。

 とはいえ、本書に書かれていることの大半――たとえば、電車内での読書のコツ、図書館活用法、定点観測としての書店巡回など――は、並レベルの読書好きならとうに実践していることであり、目からウロコが落ちるような新鮮味はない。

 私が本書で知った有益な情報としては、都心にある会員制の「有料自習室」は「読書室」として活用できる、という話と、薄い紙をホールドしておく「クリップスタンド」が便利だ、という話くらい。

 

山口周『外資系コンサルが教える 読書を仕事につなげる技術』



 山口周著『外資系コンサルが教える 読書を仕事につなげる技術』(中経出版/810円)読了。
 kindle版が紙版(1620円)の半額という安値だったので、購入してみた。

 この著者の本では、昨年読んだ『外資系コンサルの知的生産術』がなかなか秀逸であった。
 当ブログのレビューで、私は「とくに、第5章(全5章)の『知的ストックを厚くする』は、読書論として独立した価値をもつ素晴らしい内容だ」と書いたのだが、これはまさにその章を一冊分に押し広げたような本である。

 タイトルが示すとおり、本書はビジネスマン向けに特化した読書論であり、読書をいかに仕事に役立てるかに的を絞っている。したがって、自由業者の私には関係ない話も多いのだが、それでも十分一読に値する内容であった。

 本書は、読書をビジネスマンにとっての“自分への投資”として捉え、著者が編み出した効率的な自己投資としての読書のコツを、さまざまな角度から開陳している。
 読書を「自分への投資」と見なす視点自体はありふれたものだが、本書はその視点の展開の仕方が優れている。

 たとえば、著者は読書を「ビジネスパーソンとしての基礎体力をつくるための読書」(=ビジネス書の名著をくり返し精読すること)と、「ビジネスパーソンとしての個性を形成するための読書」(=教養に関連する本を広く浅く読むこと)の2種類に大別し、その両方が不可欠なのだという。前者はいわば「規定演技」であり、後者は「自由演技」なのだ、と……。
 そして、2種類の読書のそれぞれについて、効率的な読書術を解説していく。その解説はどれも論理的で、得心のいくものだ。
 
 山口周は、いまのビジネス書の書き手としては傑出した存在だと思う。私は注目している。
 彼がつい最近開設した書評ブログ「ライプニッツ!」も、かなりよい。

永江朗『51歳からの読書術』



 今日は都内某所で打ち合わせが一件。

 上野に近い場所だったので、そのあとで上野にまで足を伸ばし、国立西洋美術館でやっている「カラヴァッジョ展」を観た。
 代表作が網羅され、たいへん見応えがあった。「出品数は日本で過去最多、世界でも有数の規模」だそうである。

 ついでに花見気分も味わおうと思ったのだが、あいにく上野公園の桜はまだ一分咲きといったところ。それでも、シートを敷いて花見をしている気の早い人たちもいたけど。


 行き帰りの電車で、永江朗著『51歳からの読書術――ほんとうの読書は中年を過ぎてから』(六曜社/1620円)を読了。

 ピンポイントで私に向けて書かれたような本である(先週52歳になってしまいましたが)。
 小林信彦に『人生は五十一から』というエッセイ集シリーズがあるそうで、タイトルはそこからとったもの。中高年に達したからこそわかる読書の愉しみについて、さまざまな角度から綴ったエッセイ集だ。

 「読書術」というタイトルから、知的生産術の実用書を思い浮かべる人が多いだろうが、そういう側面はほとんどない。ブックガイドとして読むこともできなくはないが、そういう面もあまり強くはない。むしろ、読書好きなら随所でニヤリとしながらうなずくような、非実用的で軽快な読書エッセイである。

 永江朗は「100点満点の本は書かないが、つねに65点はクリアするプロのライター」だから、安心して読める(ホメているようには聞こえないだろうが、ホメている。100点満点を狙わず、コンスタントに65点取れる仕事をするのがプロのライターというものだ)。

 50歳を超えると、若いころの自意識過剰から解放されて、人目を気にせず好きな本が読めるようになる……という主旨のことを永江は書いているのだが、これには深く同意。
 若いころはとかく、「こんな本を読んでる俺カッコイイ」的な見栄で読書する面が多分にある。逆に、「ベストセラーなんか読んでいたらみっともない」と思ったりもする。しかし、五十路ともなると、人目などまったく気にならなくなるのである。

小谷野敦『このミステリーがひどい!』



 小谷野敦著『このミステリーがひどい!』(飛鳥新社/1620円)読了。

 ヘタなことを言うとマニアがうるさい、「地雷原」のようなジャンルがある。ミステリー小説もその一つだろう。
 本書は、ミステリー・マニアというわけではない(むしろ「推理小説嫌い」を自称する)著者が、その地雷原に果敢に踏み込んだ記録である。しかも、第5章「SF『小説』は必要なのか?」では、SF小説というもう一つの地雷原にまで踏み込んでいる。

 そのため、Amazonのカスタマーレビューではすでにマニアたちの集中砲火を浴びているのだが、ミステリー・マニアではない私には楽しく読めた。

 内容の三分の一くらいは、ミステリー小説を原作にしたテレビドラマや映画の話になっている。また、ミステリーと関係のないSFの話に一章が割かれているように、随所に脱線がある。それに、この著者の本ではよくあることだが、自分語りが異様に多い。

 それでも、著者ならではのミステリー四方山話として、最後まで飽きさせない。
 なるほどと膝を打ったくだりも多い。たとえば――。

 日本のミステリーが隆盛を見るのは、やはり「角川商法」以後であって、そこはやはり角川春樹の功績なのである。



 だいたい、日本人は完訳にこだわり過ぎで、小説というのは往々にして水増しして一冊にしているのだから、抄訳は大いに用いるべしである。(中略)どうも世間には、カネを出して買うのだから本は分厚いほうがいいと思っている人がいるようだ。



 一般人が主役になった推理=冒険小説には、「なぜ警察に言わない?」と思う場面がしばしばある。(中略)どうも、革命にロマンを感じる人たちには、警察は国家の手先だから、警察に手を委ねたくないという思いがあるらしいが、そりゃ無茶である。



 現代日本のミステリー作家たちへの歯に衣着せぬ寸評も、おおむね痛快であった。たとえば、森村誠一に対する次のような評価。

 清張も森村も社会派だが、清張にはハイブラウな文化へのしっかりした敬意がある。森村は、知りもしないでバカにしている。全然違うのである。森村は、その教養のなさが、作品に現れてしまっている。



樺沢紫苑『読んだら忘れない読書術』



 樺沢紫苑(かばさわ・しおん)著『読んだら忘れない読書術』(サンマーク出版/1620円)読了。

 この著者の本は、『メールの超プロが教えるGmail仕事術』というのを読んだことがある。ペンネーム(?)は宝塚風だが、五十がらみのオジサンである。

 本書は、月に20~30冊の本を読み、年に3冊程度の著作を上梓している著者が、自らの読書術を開陳したもの。

 目からウロコが落ちるような記述はほとんどなく、“読書道初級向け”という趣だが、首肯できる記述も多い。
 たとえば、「私が考える『本を読んだ』の定義は、『内容を説明できること』、そして『内容について議論できること』です。感想や自分の意見を述べられなければ、本を読んでいる意味がないのです」という一節は、ほんとうにそのとおりだと思う。

 私がこのブログに読書感想を書きつづけているのも、そうやって記録しておかないと、読書して学んだこと、感じたことをたちまち忘れてしまうからなのだ。

 本書の美点を一つ挙げるなら、読書のコツに名前をつけるネーミング・センスの妙。

 たとえば、「ウルトラマン読書術」なる項目がある。
 ウルトラマンは地球上で3分間しか戦えないが、だからこそ効率的に自分の強さを発揮することができる。同じように、わずかなスキマ時間に「このページまで読もう」と決めて読むことで、集中力を高め、脳のパフォーマンスを上げることができるのだ、と……。
 スキマ時間を有効活用せよ、ということは読書術の本によく書いてある平凡なアドバイスだが、それに「ウルトラマン読書術」という突飛なネーミングを施すことで、著者独自のノウハウとして提示しているのだ。

 ただ、読書の効用を強調するあまり、「それはちょっと言いすぎでは?」と苦笑してしまう部分もある。たとえば――。

 本を上手に活用できる人は、ストレスが緩和され、「悩み事」でクヨクヨすることから解放されます。しかし、この事実は、ほとんどの人が知りません。
 なぜなら、読書家は問題や悩み事に直面しても、「本」を参考にして、早期のうちに解決してしまうので、大きなストレスや厄介な悩み事に煩わされること自体がないからです。



 “真の読書家は悩んだりしない!”というのだから、スゴイ(笑)。


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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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