2016年に観た映画BEST10



 2016年BEST10を、本・音楽・マンガと選んだのに、映画は選んでいなかった。映画館で観た本数が少ないので、「BEST10を選出するなどおこがましい」と思ってしまったのである。

 が、このBEST10は何よりまず自分用の記録なのだから、やはり選んでおくことにする。
 基準は「2016年中に日本で公開された映画」で、順不同。レビューを書いたものはリンクを貼る。

『この世界の片隅に』

『シン・ゴジラ』

『リップヴァンウィンクルの花嫁』

『永い言い訳』

『海よりもまだ深く』

 このへんまでがBEST5。ちなみに、『君の名は。』は現時点で未見である。

『SCOOP!』

『エクス・マキナ』

『キャロル』
――ストーリー自体は他愛ないのだが、ルーニー・マーラとケイト・ブランシェットの視線のやりとりだけで、両者の感情を十全に伝え切る演出と演技がスゴイ。あと、ルーニー・マーラの清楚な美しさが眼福。

『ブリッジ・オブ・スパイ』
――ハリウッド映画の良心を見る思いがする映画。スピルバーグの全作品中でも、上位に位置するのでは。 

『サウルの息子』
――観ていて息苦しくなるような、すさまじいリアリティで活写されたアウシュヴィッツの真実。娯楽性は微塵もない重い映画だが、傑作。

■次点
『オデッセイ』
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』



 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を映像配信で観た。
 今夏の「マッドマックス祭り」のころに映画館で観そこなったので、いまさらながら。

 映画館に何度も(人によっては10回以上も)観に行く人が多数現れたそうだし、ネットでも高評価ばかりが目についた。
 なので、ちょっと期待値を上げすぎた。

 たしかに面白い。だが、「そんなにくり返し観に行くほどのもんかなァ」と思ってしまった。
 もちろん、映画館の大スクリーンで観ていれば感想も違っただろうし、これはまさに「映画館で観るべき映画」なのだとは思うが……。

 感心したのは、物語の設定などに関する「言わずもがな」の説明を、一切省いているところ。
 これが邦画なら、もっともっと説明過多な(その分だけ興醒めな)映画にしていたに違いない。

 あと、絵づくりはスゴイと思った。
 核戦争後の荒涼たる世界がむしろ美しいと思えてくるような、ビシッと決まったカットが多数。

 

「G's Baseball Party」



 トヨタG'sのウェブCM「G's Baseball Party」(特設サイト)のクオリティがスゴイ!

 YouTubeで偶然出合って、スキップしようと思ったけど最後まで見入ってしまった。そして、3回連続で観直してしまった。

 繁華街の路上で突然野球を始める登場人物たちの動きが、女性も含めて全員サマになっているのがスゴイ。「自分、長年野球やってました」という動きになっているのだ。こうなるまでには鬼の猛特訓をしたんだろうなあ。

 著名選手のモノマネがちりばめられていたり、元巨人のクロマティ(!)がさりげなく登場したり、細部まで仕掛けが満載なのも愉しい。

 たった2分半のCMなのに、下手な低予算映画よりもお金と手間ヒマがかかっていそう(わずか数秒登場するだけのクロマティのギャラは、いかほどだったのか?)。さすがはトヨタである。

 これは、何かのCM賞に輝いても不思議はない素晴らしい作品だと思う。

 私がツイッターでもやっていればそこで紹介すればよいのだが、やってないのでここにカキコ。

『ONCE ダブリンの街角で』

ONCE ダブリンの街角で デラックス版 [DVD]ONCE ダブリンの街角で デラックス版 [DVD]
(2008/05/23)
グレン・ハンサードマルケタ・イルグロヴァ

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 ケーブルテレビで録画しておいた『ONCE ダブリンの街角で』を観た。2006年のアイルランド映画。
 
 ダブリンのストリート・ミュージシャンとチェコからの移民女性の恋を、音楽に比重をかけて描いた愛すべき小品。
 
 主演のグレン・ハンサードは、アイルランドの人気バンド「ザ・フレイムス」のフロントマン。アラン・パーカーがダブリンのソウル・バンドの青春を描いた『ザ・コミットメンツ』(1991)にも出演していた。ヒロインのマルケタ・イルグロヴァもチェコのシンガー・ソングライターだ。
 ゆえに、バスキング(路上などで演奏して客から投げ銭を集めること。buskは「大道芸をする」の意)のシーンや自主制作CDのレコーディング・シーンは、素晴らしい臨場感と迫力。音楽映画としてもたいへんよくできている。

 さしてドラマティックなことが起きるわけではなく、恋の描き方もラブシーンすらない淡いもの。それでも、まったく退屈ではない。ドキュメンタリー・タッチの淡々とした演出が好ましく、あたたかい気分になれる佳編。

 難を言えば、終わり方がなんだか尻切れトンボで消化不良。もうひとひねりほしかった。

『マザー・テレサ』

マザー・テレサ デラックス版マザー・テレサ デラックス版
(2006/02/24)
オリビア・ハッセー、ラウラ・モランテ 他

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 『マザー・テレサ』をケーブルテレビで観た。2003年に作られた伝記映画である。

 36歳から87歳までのマザー・テレサを演ずるのは、オリビア・ハッセー。これがなかなかハマリ役で、最晩年に近づくほど本物そっくりになっていく。

 脚本は手堅くまとまっている。マザー・テレサを、人間離れした聖者として描くのではなく、等身大の人間として描く視点がよい。この映画の中のマザー・テレサは、たぐいまれな利他心と人格の輝きをもつ一方で、弱さも欠点ももち、ユーモアも愛嬌もある女性として描かれているのだ。

 ただ、演出は平板で面白みがない。人物のクローズアップが妙に多かったりして、小ぢんまりとして画面に広がりが感じられないのだ。
 「なんだか、映画というよりテレビドラマみたいだ」という印象を抱いたが、それもそのはず、これはもともと3時間のテレビドラマとして作られたものを、映画館用に短く編集し直した作品なのだそうだ。
 パセティックで垢抜けない同じ音楽がしつこく流れるのも、やや耳障り。

 ……と、ケチをつけてしまったが、そうした瑕疵はあってもなお、ここに描かれるマザー・テレサの生涯はすこぶる感動的である。

 マザー・テレサはマハトマ・ガンジーによく似ている、と感じた。何が似ているかといえば、理想に向かって脇目もふらずに突っ走る姿勢である。

 人が理想を追い求めて進んでいくとき、いたるところで現実の壁にぶつかる。並の人間はそこで現実と妥協し、小幅な軌道修正をくり返して理想に近づこうとする(あるいは、理想を追うのをあきらめる)。
 だが、マザー・テレサにもガンジーにも妥協は一切ない。「現実の壁」をあくまで正面突破しようとするのだ。とくに、この映画の中のマザー・テレサは、まるで現実の壁など眼中にないかのようだ。
 困難に直面して、彼女は言う。「私の考え方はシンプルなの。(どんなに困難に見えても)主がそれを望まれれば実現するでしょうし、望まれなければ実現しないでしょう」と……。だから、現実がどうあれ、理想を目指して突き進むのだ。その姿はときにドンキホーテのようにも見える。

 マザー・テレサにしろガンジーにしろ、身近に仕えていた人たちはさぞたいへんだったろうと思う。「お願いだから、もう少し現実に目を向けてください!」と叫びたくなることもしばしばだったことだろう。

 この映画は、理想に向かってひた走るマザー・テレサが途中途中で現実の壁とぶつかる様子を、エピソードとして描いたものともいえる。
 それらの壁は、彼女の人格の輝きによって乗り越えられる場合もあれば、ドンキホーテ的な悲哀の印象のみを残すこともある。その両方をきちんと描くことで、通りいっぺんの偉人伝には終わらない深みが生まれている。
 

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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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