『A.K.  ドキュメント黒澤明』


黒澤明 創造の軌跡 黒澤明ザ・マスターワークス補完映像集 [DVD]黒澤明 創造の軌跡 黒澤明ザ・マスターワークス補完映像集 [DVD]
(2003/05/21)
黒澤明

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 震災報道ばかり見ていると気が滅入るので、気分転換に映画でも観ようと思い、ケーブルテレビで録画しておいた『A.K.  ドキュメント黒澤明』と『野獣死すべし』(須川栄三/仲代達矢の1959年版)を観た。

 『A.K.  ドキュメント黒澤明』は、フランスのクリス・マルケルが映画『乱』の撮影に密着して作ったドキュメンタリー。単独ではDVD化されていないようだが、『黒澤明 創造の軌跡』という3枚組セットの中に収録されている。

 「演出中の黒澤」が動画で見られる貴重な作品である。
 やはり、怒るときはすごい迫力。怒鳴るという感じではないが、声に有無を言わさぬ力がある。
 過剰なまでに文学的・詩的なナレーションは、好みが分かれるところだろうが、私は好きだ。

 「蒔絵のような効果」を狙ってススキに金色の塗料を塗る、という場面が面白かった。午前中から夜までかかって、スタッフ総出で黙々とススキにスプレーでペイントしていく。だが、この場面は編集段階でカットされたという。こうした贅沢さというか蕩尽ぶりこそが、黒澤映画の迫力を裏付けているのだろう。

 途中、よりによって関東大震災のすさまじい記録映像が挿入されていて、気分転換どころかいっそう気が滅入ってしまった。黒澤が9歳のときに目の当たりにした関東大震災の惨状が、『乱』や『影武者』などの凄惨な戦場シーン(一面に横たわる遺体や馬)の基となっている、という意味合いでの挿入である。
 
 『野獣死すべし』の感想は、改めて別エントリで。

『WATARIDORI』


WATARIDORI スタンダード・エディション [DVD]WATARIDORI スタンダード・エディション [DVD]
(2005/12/16)
ドキュメンタリー映画

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 ケーブルテレビで録画しておいた『WATARIDORI』 を観た。

 撮影期間3年、制作費20億円を費やし、世界20ヶ国以上を訪れ、100種類もの渡り鳥の旅物語を映画化したドキュメンタリー(2001年フランス/監督:ジャック・ペラン)。
 
 これはすごい! 観ながら、自分が一羽の渡り鳥になったかのような気分になる。まさに「バーズ・アイ・ビュー」。「いったいどうやって撮ったんだろう?」と不思議になる驚異的な映像の連打である。映画館で観ておけばよかった。


 

 世界トップクラスのスタッフが、命懸けで渡り鳥たちと共に地球全土を旅した。CGはいっさい使用せず、多くの危険と戦いながら人類が今だかつて目にしたことのない鳥たちの視点から、空、海洋、そして地球の姿を捉えている驚異と感動の映像。



 「いったいどうやって撮ったんだろう?」という疑問の答えは、この映画のプレス用資料(→こちらにそのまま転載されている)を読むとわかる。ううむ、そこまでやるかという感じ。

 一幅の名画のように美しい場面が目白押し。この映画はもはや「映像の世界遺産」である。

『中国の植物学者の娘たち』

中国の植物学者の娘たち スペシャル・エディション [DVD]中国の植物学者の娘たち スペシャル・エディション [DVD]
(2008/04/25)
リー・シャオラングエン・ニュー・クイン

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 ケーブルテレビで録画しておいた『中国の植物学者の娘たち』を観た。『小さな中国のお針子』などの作品で知られる中国人映画監督ダイ・シージエ(フランス在住)が、フランス・カナダ合作の形で作った映画。

 ■公式サイト→ http://www.astaire.co.jp/shokubutsu/

 中国南部の架空の町。湖に浮かぶ孤島の植物園を舞台に、2人の女性の同性愛を描いた耽美的なラブストーリー。

 厳格すぎる植物学者・チェン教授の娘・アンと、植物園に実習生として送り込まれた孤児院育ちのミン。ともに孤独な環境で育った2人は、互いの孤独が共鳴するように惹かれ合う。
 だが、軍隊から里帰りしてきたアンの兄がミンに一目惚れ。チェン教授も2人を結婚させようとする。知られてはならぬ愛を育んでしまったアンとミンが、その愛をまっとうするために選んだ道とは――。

 ……と、そんなふうな映画。ストレートな性描写はほとんどなく、エロティックではあるがポルノではない。それでも題材ゆえに中国では撮影が許されず(配給も禁止)、ヴェトナムで撮影されたという。

 ストーリーはかなり強引で無理がある。とくに、アンとミンが「すべてを捨てても愛をつらぬきたい」と決意するまでのプロセスがあまりに性急で、まったく説得力がない。「出会ってまだ日も浅いのに、いつの間にそんなに深く愛し合ったのか?」と問いつめたくなる。

 しかし、アンとミンを演ずる2人の女優(リー・シャオランとミレーヌ・ジャンパノワ)がたいへん美しく、彼女たちを見るだけで眼福なので、多少の瑕疵には目をつぶりたい。
 また、ストレートな性描写がないからこそ、婉曲な表現が目覚ましい効果を上げている。2人のヒロインの二の腕やうなじ、脚などをカメラが舐めるように映し出すだけで、品のよいエロスが薫り立つのである。映像も美しい。



 ラストの展開には目がテン。つい四半世紀ほど前(ミンは1976年の大地震で両親を喪ったという設定なので、1980年代が舞台と思われる)の中国で、同性愛が犯罪だったということに驚かされる。てゆーか、いまでもそうなのかな?

 

『パリ、ジュテーム』

パリ、ジュテーム プレミアム・エディションパリ、ジュテーム プレミアム・エディション
(2007/10/24)
ナタリー・ポートマン;イライジャ・ウッド;ジュリエット・ビノシュ;スティーヴ・ブシェミ;ウィレム・デフォ

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 ケーブルテレビで録画しておいた『パリ、ジュテーム』を観た。

 2006年のフランス映画。各国の一流監督(コーエン兄弟、ウォルター・サレス、ガス・ヴァン・サントなど)とスター俳優たちがパリに集い、パリ20区のうち18の区をそれぞれ舞台にした約5分のショート・ムーヴィーを撮る、という趣向のオムニバスだ。

 タイトルが示すとおり、作品の共通テーマは「愛」。パリの街角でくり広げられる、18の出会いと別れの物語だ。
 中には「ボーイ・ミーツ・ボーイ」の話もあったり、異文化交流の形を取った出会いもあったりする。ホラー仕立てのものもあればファンタジー仕立てもあり、5分間長廻しで撮ったものもある。短い枠の中で、それぞれの監督が個性を競い合っている。

 玉石混淆ではあるけれど、総じてよくできた、オシャレで気の利いたオムニバス。さすがにどの監督も、これ見よがしに名所を映すような「観光映画」にはしておらず、作家性の高いショート・ムーヴィー集として愉しめる。

 コーエン兄弟のものは、スティーヴ・ブシェミを主演に据え、むしろ「愛の街、パリ」を痛烈におちょくる内容。さすがの毒気とブラック・ユーモアだ。
 ほかの作品では、シルヴァン・ショメ(アニメの監督として有名で、これは初の実写作品)が撮ったパントマイム・ネタのものと、トム・ティクヴァ監督(『パフューム ある人殺しの物語』の人)のものがよかった。
 あと、『ベッカムに恋して』のグリンダー・チャダが撮った一編では、ヘジャブをかぶって登場するムスリムのヒロインがすこぶるチャーミング。

↓公開時の予告編


『パリ、恋人たちの2日間』

2 Days in Paris2 Days in Paris
(2007/10/09)
Original Soundtrack

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 京橋の映画美学校第一試写室で、『パリ、恋人たちの2日間』を観た。5月公開のフランス=ドイツ合作映画。

 演技派女優ジュリー・デルピーが、監督・脚本・主演・製作・編集・音楽の1人6役をこなした作品。おまけに、ジュリー演じるヒロインの両親役は、彼女の実の両親だ。まさに「ジュリー・デルピーズ・フィルム」である。

 フランス人写真家のマリオン(ジュリー)と、アメリカ人インテリア・デザイナーのジャック(アダム・ゴールドバーグ)は、ニューヨークで暮らすカップル。マンネリぎみの関係をリフレッシュしようとヴェネツィアへヴァカンスに行き、その帰途に2日間だけ、パリにあるマリオンの実家に立ち寄る。その2日間に起こるさまざまな出来事を描いた、ちょっとシニカルなラブコメディー。

 2人がかわすユーモアとウイットに富んだ会話が、映画の中で大きなウエイトを占めている。ブロンドで奔放なマリオンと、神経質でユダヤ系のジャック――そんな2人の関係は、『アニー・ホール』などでのダイアン・キートンとウディ・アレンを彷彿させずにはおかない。じっさい、ジュリー・デルピーも十二分に2人を(映画作りの上ではアレンを、役作りの上ではキートンを)意識している。

 ただし、『アニー・ホール』から30年経った時代の変化は、この映画にもしっかりと反映されている。『アニー・ホール』よりももっと痛烈で猥雑、神経症的で狂騒的……ひっくるめて言えば、よい意味でクレイジーな映画だ。

 「風変わりなパリ観光案内」といった趣もあるけれど、この映画を観て「パリに行きたい」とはとても思えない。それくらい、パリがクレイジーな街として描かれているのだ。 

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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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