ジョー・ママ『ジョー・ママ』『ジャンプ』



 最近はもっぱら、60~70年代あたりの古いアルバムをディグっては聴いている私。 
 今日は、ジョー・ママの『ジョー・ママ』(1970年)、『ジャンプ』(1971年)を聴いた。

 ジョー・ママは、ダニー・コーチマーを中心に結成されたアメリカのロック・グループ。この2枚のアルバムを発表したのみで、あっさり解散してしまった。

 ダニー・コーチマーはジョー・ママ以前に、キャロル・キング、チャールズ・ラーキーと3人で「シティ」というトリオを組んでいたが、この「シティ」も68年にアルバム『夢語り(Now That Everything's Been Said)』を出したのみで解散している。
 コーチマーとラーキーが参加し、キャロル・キングの代わりにアビゲイル・ヘイネスという女性シンガーを加えたジョー・ママは、いわばシティの発展形であった(ただし、ジョー・ママは5人組)。

 私は恥ずかしながらこのバンドを知らなかった。この前聴いたザ・セクションのアルバムがよかったので、「ダニー・コーチマーのほかの作品も聴きたい」と思って、何の気なしに手を伸ばしてみたのだ。

 が、これが大当たり! 2枚ともすごくいいアルバムだった。

 ソウルフルでファンキーでブルージー。ほんのりジャジー、ちょっぴりフォーキー。
 アメリカン・ロックの源流的要素をごった煮したような、どこか懐かしい多彩なサウンド。それでいてジジむささは皆無で、都会的で知的で洗練されている。

 とくに、ファーストの『ジョー・ママ』は非の打ち所のない名盤だ。
 アルバム中いちばんキャッチーで、普通ならオープニングに持ってきそうな曲「Love'll Get You High」を、あえてラストに入れるあたりのヒネリも心憎い。



 セカンドの『ジャンプ』(原題は“J Is For Jump”=「JはジャンプのJ」)は、ファーストよりも渋さと黒っぽさが大幅に増した内容。予備知識なしに聴いたら、白人ばかりのバンドだとはとても思えないだろう。



 ゆえに、キャッチーな内容のファーストよりもとっつきにくい。が、くり返し聴くほどに味わいが増していく深みはなかなかのもので、ファーストとセカンドは甲乙つけがたい。


↑セカンドのオープニング曲「Keep on Truckin'」。


↑ジャズ・ロック的な長いオープニングが後のザ・セクションを思わせる「3 A.M. In L.A.」。ヴォーカルが始まるとブルージーでジャジー。

 

マシュー・スウィート&スザンナ・ホフス『Completely Under the Covers』



 プリンスの訃報には驚いた。デヴィッド・ボウイの訃報に始まった2016年は、モーリス・ホワイトが逝き、キース・エマーソンが逝き……と、まったくなんという年なのであろうか。
 私もプリンスは人並みに好きだったが、下記のような熱烈な追悼文を読んでしまうと、付け加える言葉とてなく、こと改めて追悼エントリを書く気がしない。
 
プリンスがすべてだった 宇野維正による追悼文|Real Sound

プリンスのこと。|「怒るくらいなら泣いてやる」

 遺された大量の未発表曲を小出しにすれば、あと10年くらいは優に「ニュー・アルバム」を出しつづけることができるのだろう(権利関係の処理が大変だろうが)。
 「真の天才は大量生産する」という桑原武夫の言葉のとおり、まさにプリンスこそ天才であった。


 プリンスとも縁深いスザンナ・ホフス(バングルスの「マニック・マンデー」は、プリンスが彼女に惚れ込んで贈った曲)がマシュー・スウィートと作った『Under the Covers』3作のボックスセット『Completely Under the Covers』が、Amazonのプライムミュージックにアップされていた。
 買おうかどうしようか迷って「ほしい物リスト」に入れておいたものなので、さっそく聴き倒す。

 1960年代から80年代までの英米の大ヒット曲・名曲のカバー集である。→曲目などはこちらを参照

 総じて原曲に忠実なアレンジだし、とくに独創性があるわけでもない、ごく趣味的なシリーズだ。が、スザンナ・ホフスのヴォーカルが魅力的なので、すこぶる耳に心地よい。ロック界最高の美熟女スザンナは、50代のいまなお容姿も声もキュート。

 マシュー・スウィートは、私にとってはわりとどうでもいい。まあ、優秀なポップ職人ではあるのだろうし、昔の『ガールフレンド』とかはよく聴いていたけれど。
 なので、マシューがメイン・ヴォーカルになっている曲は聴き飛ばし、スザンナがメイン・ヴォーカルの曲ばかり聴いている。

 とくによいのが、原曲が男性ヴォーカルの曲をスザンナが歌ったカバー。ロッド・スチュワートの「マギー・メイ」とか、ニール・ヤングの「シナモン・ガール」とか、デレク・アンド・ドミノスの「ベルボトム・ブルース」とか。



 イエスの「I've Seen All Good People」のカバーなんて、もう最高である。



リズ・ライト『フリーダム&サレンダー』



 リズ・ライトが昨年9月に出したアルバム『フリーダム&サレンダー』の評判がやたらとよいので(昨年のベストアルバムに選ぶ人が多かった)、遅ればせながら聴いてみた。

 リズ・ライトは、ファースト・アルバム『ソルト』(2003)が素晴らしかった。以来注目していたのだが、セカンド、サードとつづくにつれ、どんどん内容が地味になり、ルーツであるゴスペル色が強くなっていったので、「うーん、これならもう聴かなくてもいいかな」と心が離れてしまった。なので、前作にあたる『フェローシップ』(2010)は現時点では未聴である。

 が、久々に聴いたこのアルバム(通算5作目)はじつによい!
 ゴスペルが土台になっているのは従前通りだが、全体にロック色がやや濃くなって、メリハリのある聴きやすいサウンドに仕上がっている。
 
 今作で最もロック色が強い「ザ・ニュー・ゲーム」や、ファンキーなオープニング曲「フリーダム」などは、問答無用のカッコよさ。じつに「男前」なヴォーカルを聴かせてくれる。



 かと思えば、グレゴリー・ポーターとのデュエット曲「ライト・ホエア・ユー・アー」はホーリーな雰囲気に満ちたバラードで、すでにしてスタンダードのような風格を漂わせている。

 後半にはゴスペル的な宗教性を感じさせる曲も多いが、それがたんに「地味な曲」になっておらず、素晴らしい深みを湛えている。「リヴァー・マン」におけるフリューゲルホーン(ティル・ブレナー)の絶妙な使い方など、名匠ラリー・クラインのプロデュース手腕の冴えも随所に感じられる。



 ラリー・クラインは、ジョニ・ミッチェルの公私にわたるパートナーだったことで知られる人気プロデューサー。ことに、女性アーティストの魅力を引き出す名伯楽として名を馳せている。
 今作においても、若くして世に出ながら伸び悩んでいたリズ・ライトの底力を、見事に引き出してみせた。

■関連エントリ→ リズ・ライト『オーチャード~禁断の果実』

キャプテン&テニール『デジタル・リマスター・ベスト』



 むしょうにキャプテン&テニールの曲が聴きたくなって、『デジタル・リマスター・ベスト』なるベスト盤を入手。

 女性がヴォーカル、男性がキーボードの二人組という点が同じであるため、何かとカーペンターズと比較された、70年代アメリカン・ポップスの人気デュオ(カーペンターズは兄妹だが、こちらは夫婦)。
 だが、いまになって聴き直してみると、カーペンターズよりもずっと黒人音楽、とくにR&Bやゴスペルの影響が顕著であり、全然違う。



 たとえば、上に貼った「ショップ・アラウンド」(ミラクルズのカヴァー)など、ソウルフルな歌いっぷりといい、モータウンぽいコーラスといい、思いっきり黒い。まったく予備知識なしにこの曲を聴いたら、白人デュオの曲だとは思わないだろう。
 アメリカン・ポップスの上澄みをすくったように「真っ白」なカーペンターズ(もちろん、それはそれで素晴らしい)とは、方向性が真逆なのである。

 どちらが上という話ではなく、好みでしかないが、いまの私ならキャプテン&テニールのほうが好きだなァ。

 このベスト盤も、名曲がいっぱい。
 全米№1ヒットの代表曲「愛ある限り(love will keep us together)」は、ニール・セダカの曲を凝ったアレンジでパワーアップした超名曲だし、「雨に想いを(Come In From the Rain)」(メリサ・マンチェスターとキャロル・ベイヤー・セイガーの共作曲)はドラマティックなバラードのお手本のようだ。





 1970年代ポップスの、一つの模範型のようなデュオだったと思う(近年のトニ・テニールは、ジャズ・ヴォーカリストとして活躍しているらしい)。

コールド・ブラッド『スリラー!』ほか



 コールド・ブラッドの『スリラー!』『ファースト・テイスト・オブ・シン』『シシファス』を聴いた。

 少し前にベスト盤を買ってすごく気に入ったので、オリジナル・アルバムにも手を伸ばしてみたしだい。
 コールド・ブラッドは、1970年代にタワー・オブ・パワーと人気を二分した「ベイエリア・ファンク」の雄である。タワー・オブ・パワーと異なるのは、女性ヴォーカリストが看板だという点。
 ジャニス・ジョプリンとチャカ・カーンを足して二で割ったような、パワフルでセクシーなリディア・ペンスのヴォーカルがじつに魅力的だ。

 この3枚も、甲乙付け難い素晴らしさ。
 一般には『スリラー!』が最高傑作と目されているそうだが、私は『ファースト・テイスト・オブ・シン』のほうが気に入った。
 これは、ダニー・ハサウェイがプロデュースした1972年のアルバム。激熱のファンクナンバー、甘いバラード、ゴスペル色の強い曲、洗練されたインスト曲など、多彩な内容で、一曲たりとも捨て曲がない。

 『スリラー!』はヒッチコック映画の一場面のようなジャケのカッコよさが抜きん出ているし、スティーヴィー・ワンダーの「サンシャイン(You Are the Sunshine of My Life)」のゴキゲンなカバーが入っていたりして、何かと派手なアルバム。だから人気があるのも納得だし、よいアルバムではあるのだが……。

 『スリラー!』が今月日本でも廉価盤で再発されたりして、再評価の機運が高まっているのかな。日本でももっと知られてよい名バンドだ。


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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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