上田知華+KARYOBIN『ゴールデン☆BEST』



 上田知華+KARYOBINの『ゴールデン☆BEST』(ワーナーミュージック・ジャパン/3024円)をヘビロ中。

 上田知華+KARYOBINについては、以前『MUSIC SOUP』というベストアルバムを当ブログで取り上げたことがある。
 が、昨年発売されたこの『ゴールデン☆BEST』こそ、まさに決定版というべき素晴らしい内容なので、改めて取り上げる。

 上田知華+KARYOBINのベスト盤はほかにも何種類か出ているのだが、どれも不満の残るものであった。
 KARYOBIN時代と上田知華のソロワークがごちゃ混ぜに入れられていたり、『究極のベスト!』というタイトルのくせに収録時間が40分に満たなくて名曲の漏れが多すぎたり……。

 それに対し、2枚組・133分収録の本ベストは、非の打ち所がない。

 ・上田知華+KARYOBINが残した6枚のアルバムから、まんべんなく選曲されている。
 ・最新リマスタリング音源で、音がよい。
 ・未発表ライヴ音源が、ボーナス・トラックとして2曲収録されている。
 ・オリジナルアルバム未収録のシングル曲(「シーユーアゲイン・初恋」)も収録している。
 ・上田知華のソロワークが混入しておらず、あくまで「上田知華+KARYOBINのベスト」になっている。

 ……といった多くの美点があるのだ。
 2曲収録されているライヴ音源(「メヌエット」と「オープン・ザ・ウインドウ」)も、演奏・歌唱ともに素晴らしい。

 『MUSIC SOUP』を取り上げたとき、

 私が好きだった「AVENUE」という曲(5thアルバム『ミス・ハート』のオープニング・ナンバー)が入っていないのが、ちょっと残念。



 と書いたが、本ベストには「AVENUE」もしっかり収録。
 のみならず、いまなお中古CDが3万円超の高値を呼んでいる『ミス・ハート』からも計7曲が収録されており、その点もうれしい。

 弦楽四重奏をバックにピアノ弾き語りをするという、J-POP史上、他に類を見ないユニークなスタイルを持った上田知華+KARYOBIN。彼女たちが遺した名曲群の素晴らしさを改めて認識させる、極上のベスト盤である。 

広谷順子『その愛に』『BLENDY』



 シンガーソングライター・広谷(ひろたに)順子の『その愛に』と『BLENDY』を聴いた。1979年と翌80年に発表された、彼女のファースト&セカンドアルバムである。

 先日松任谷正隆の『僕の音楽キャリア全部話します』を読んで、ふとこの人のことを思い出した。私は彼女を、松任谷がDJをしていた「サウンドストリート」でかかった「古都めぐり」で知ったからである。

 「古都めぐり」は広谷順子のセカンドシングルで、松任谷正隆がアレンジをしている。初めて聴いたとき、「なんときれいな歌声だろう」と思い、そのメロディーも強く印象に残った。



 「古都めぐり」が入ったファーストアルバム『その愛に』は90年代に一度CD化されたものの、長らく中古市場で高値を呼んでいて、手が出なかった。
 だが、今回ふと名前を検索してみて、昨年再発されていたことを知り、手を伸ばしてみたしだい。



 広谷順子は3枚のソロアルバムを発表しているが、けっきょくブレイクすることはなかった。その後は、セッション・シンガー/作曲家として活動しているらしい。

 アルバムを丸ごと聴くのは今回が初めてだが、いま聴くとさすがに古めかしい。ファーストはニューミュージック寄りで、セカンドはシティポップ/AOR寄りという違いはあるものの、いずれも「歌謡曲のシッポを残したままの、一昔前の日本のポップス」という印象なのだ。
 曲としても、「古都めぐり」を凌駕するものは一つもない。

 だがそれでも、透明感に満ちて伸びやかな広谷順子のヴォーカルには、やはり並外れた魅力がある。ヴォーカルの素晴らしさを味わうだけでも一聴の価値がある、J-POPの隠れた名盤だ。

薬師丸ひろ子『Cinema Songs』



 薬師丸ひろ子のニューアルバム『Cinema Songs』(ビクターエンタテインメント/3240円)を聴いた。

 ちょうど3年前に出た前作『時の扉』の延長線上にあるアルバムだ。『時の扉』でアレンジを担当した吉俣良が、今回も大半の曲をアレンジしている。

 『Cinema Songs』というタイトルどおり、内外の映画主題歌・挿入歌、またはテーマ曲に歌詞をつけた曲を集めたカヴァー・アルバムである。

 洋画の主題歌・挿入曲は、訳詞で歌っているものと、元の英語詞で歌っているものが半々の割合(4曲ずつ)。比べてみれば、訳詞で歌ったもののほうがはるかに出来がよい。
 英語の発音がよくない。そもそも、一つひとつの言葉をはっきり区切って発声する薬師丸ひろ子の歌い方には、英詞の歌は決定的に「合わない」のだと思う。8曲すべて訳詞で歌えばよかったのに……。
 
 日本人シンガーによる洋楽カヴァー集でも、今年出た小坂忠の傑作『Chu Kosaka Covers』や、シングライクトーキングの佐藤竹善の『CORNERSTONES』シリーズのように、日本人が歌っていることを意識させないほど、発音も歌も見事なものもある。
 薬師丸ひろ子は、彼らと同じ土俵で勝負すべきではなかったのだ。

 ……と、ケチをつけてしまったが、吉俣良の上品なアレンジは今回も絶品だし、日本語で歌っている曲はどれも素晴らしい(バーブラ・ストライサンドの「追憶」の日本語詞カヴァーが、とくによい)。心洗われる。

 アルバム全体のクライマックスは、自らの映画デビュー作『野生の証明』(1978年)の主題歌「戦士の休息」をカヴァーしているところ。

 「いかにも角川映画らしい角川映画」であった『野生の証明』は、いま観るとストーリーが荒唐無稽すぎて失笑もので、B級映画、もしくは「底抜け超大作」という以外にない。
 だがそれでも、そこに刻みつけられた13歳の薬師丸ひろ子の輝きは“天使級”であり、我々長年のファンには忘れがたい作品・主題歌なのだ。

 原曲のヴォーカルは町田義人。「男は誰もみな 無口な兵士」という(明らかに主演の高倉健を意識した)「男の歌」を、薬師丸の澄んだハイトーンの声で歌い上げるところは、なかなか感動的である。

 これは私の持論なのだが、元々が男性ヴォーカルである曲を女性シンガーがカヴァーすると、名カヴァーになる率が高い。
 スザンナ・ホフスによるロッド・スチュワートの「マギー・メイ」のカヴァー、鈴木祥子による岡村靖幸の「イケナイコトカイ」のカヴァーなど、その例は枚挙にいとまがない。
 薬師丸の角川時代の盟友・原田知世が、今年、やはりカヴァー・アルバム『恋愛小説2~若葉のころ』を発表したが、70年代J-ポップ名曲集である同作でも、原田真二の「キャンディ」のカヴァーがいちばんよかった。

 本作のラストに収められているのは、「セーラー服と機関銃」のセルフカヴァー。
 ボーナストラック扱いになっているとおり、オマケ的なもので、全体の流れから浮いている。この曲だけアレンジャーが別で、原曲よりややロック色を強めた感じ。

欅坂46「サイレントマジョリティー」



 AKBなんたらとかの一連のアイドルグループに微塵も興味がない私だが、YouTubeでたまたま観た欅坂46の「サイレントマジョリティー」にはすっかりノックアウトされてしまい、くり返し再生している。

 「まさかこの手の曲に感動してしまうなんて……」と自分でも戸惑っているのだが、要するに私はこの曲にロック魂を感じたのだ。サウンドのフォーマットはアイドルポップであっても、ヘタなロックバンドが歌う予定調和の曲より、この曲のほうが100倍もロックだ。


君は君らしくやりたいことをやるだけさ
One of themに成り下がるな
ここにいる人の数だけ道はある
自分の夢の方に歩けばいい
見栄やプライドの鎖に繋がれたような
つまらない大人は置いて行け
さあ未来は君たちのためにある
NO!と言いなよ!
サイレントマジョリティー

誰かの後
ついて行けば
傷つかないけど
その群れが
総意だと
ひとまとめにされる



 ……という歌詞に私は胸打たれたのだが、作詞の秋元康がこの歌詞を書いた経緯は、たぶんロックスピリットとはかけ離れたものだろう。
 「CDの発売後に18歳選挙権も施行されるし、SEALDsとかの若者の政治行動が注目されてるし、タイムリーっすよね!」みたいなマーケティングに基づいて、時流におもねる形でそれっぽい歌詞を(たぶんサラサラっと)書いただけだと思う。

 そうであったとしても、結果として生まれた「サイレントマジョリティー」という曲とPVは、作曲・アレンジ・振り付け・歌唱・PV演出の奇跡のようなケミストリーによって、私のようなロック中年の心をも「ズキュン!」と射抜くロックな曲に仕上がったのだ。

 「政治的な歌」として受け止められることを当然意図したものだろうが、そうした枠を軽々と超えて、「生まれたときから不景気で、先の見えない時代を生きる『持たざる若者たち』」の力強いアンセムにもなっている。

チーナ『Shupoon!!』



 チーナのファースト・ミニアルバム『Shupoon!!』(2009年)を購入。

 3年前にYouTubeで「蛾と蝶とたこ焼きとたこ」を聴いて一発KOされて以来、欲しかったアルバム。長らく入手困難で、中古でも高値がついていたもの。中古の価格が下がったので、ようやくゲットした。
 ジャケットのイラストがド迫力だ。おそらく、中心メンバーの椎名杏子(ヴォーカル&ピアノで大半の曲を作っている)を描いたものだろう。

■関連エントリ→ チーナ「蛾と蝶とたこ焼きとたこ」



 2012年に出たファースト・フルアルバム『GRANVILLE』のほうを以前聴いたので、順番が逆になってしまったが、この『Shupoon!!』も傑作だ。 
 わずか26分/全7曲のアルバムだが、聴き応えは十分。すべての曲にただならぬ独創性がある。デビュー作にもかかわらず、誰の真似でもない鉄壁の個性が確立されているのだ。

 彼らのMySpaceで聴けるのでぜひ聴いてみてほしいのだが、オープニングの「トントンねぇねぇ」からしてスゴイ。
 歌詞は、「トントントントン」「ねぇねぇねぇねぇ」のくり返しのみ。なのに、椎名杏子の変幻自在のヴォーカルだけで聴かせてしまう。また、ピアノとヴァイオリンとコントラバスが核となった編成なのに、サウンドはヘタなロックバンドよりパワフルで躍動感に満ちている。2分足らずの小曲の中に広がる、壮大な音宇宙。

 リード曲「蛾と蝶とたこ焼きとたこ」以外にも、「わりとみにくいアヒルの子」など、いい曲が多い。また、歌詞も面白い。

 チーナは、もっと売れてよいし、もっと評価されてしかるべき素晴らしいバンドだと思う。


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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。53歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。ライター歴30年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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