99.99のアルバム『99.99』と『モア・オブ・99.99』を聴いた。
99.99で「フォーナイン」と読む。
元アイン・ソフのキーボーディスト、服部ませいを核とした80年代日本のフュージョン・バンド。「手数王」の二つ名で知られる名ドラマー・菅沼孝三や、のちに「アーバン・ダンス」(「ポストYMO」と評された、トリオ編成のエレクトロ・ポップ・バンド)を結成した成田忍らが参加していた。
昨年末から、「NEXUS ROCK LEGEND ARCHIVE COLLECTION」と銘打たれた4ヶ月連続・計101作の大量リイシューが行われている。
キングレコードが誇る名門ロック・レーベル「NEXUS」などの名盤を集めたもので、日本のプログレ、ハードロック/メタルの名盤がズラリと並んでいる。
私のお気に入り、ミスター・シリウスやアイン・ソフ、KENSO、美狂乱らの名盤が含まれ、慶賀に堪えないが、このコレクションの中でひときわ異彩を放っていたのが、99.99の2枚。
ほかはプログレかメタル系なのに、このバンドだけフュージョンだったからである。
だが、聴いてみれば、99.99がこのラインナップの中に加えられた理由がわかる。
「リゾート・フュージョン」って感じの軽い曲が多いのだけれど、演奏は終始テクニカルだし、随所にジャズ・ロックやプログレ的色彩が見えるのである。いわば「プログレ・フュージョン」のバンドだったのだ。
ファーストに入っている「ディス・イズ・イット」なんて曲は「ほとんどウェザー・リポート」で、カッコイイったらない。
かと思えば、その次の曲は「カリビアン・ジゴロ」という、タイトルからしてどうかと思う腑抜けたラテン・フュージョンで、甘ったるくてウンザリ。
また、ファースト『99.99』が売れなかったからか、セカンドの『モア・オブ・99.99』ではポップス寄りのヴォーカル・チューンが増え、さらに軟弱になっている。
とくに、「GINZA de アイマショ」というヴォーカル曲は、バブル前夜のチャラけた雰囲気が全編を覆っていて、いま聴くとかなり恥ずかしい。
とはいえ、甘ったるい系のポップな曲も演奏の完成度は高いし、2枚とも、全体としては十分楽しめるフュージョン・アルバムである。
「ホントはハードでテクニカルなプログレ・フュージョンだけやりたいんだよ。でも、売れ線を狙うには軽めのフュージョンじゃないと……」と、レコード会社側からの要請で不本意なアルバムになったのかもしれない。
まあ、それは私が勝手に斟酌して言うことなので、本人たちの思いがどうだったかはわからないが。
ともあれ、埋もれさせるには惜しいバンドであり、今回のリイシューは喜ばしい。