エレクトロマグネッツ『エレクトロマグネッツ2』



 エレクトロマグネッツの『エレクトロマグネッツ2』を聴いた。

 エレクトロマグネッツは、ギタリストのエリック・ジョンソンがソロデビュー以前に在籍していたアメリカのジャズ・ロック・バンド。一般的人気はほとんど得ないまま解散した短命なバンドである。

 地元テキサスでは高い人気を誇っていたらしいのだが……。そもそも、バンド名がテキサスっぽくて(偏見)ダサいと思う。「電磁石ズ」ってw

 1975年に発表した唯一のアルバムは自主制作で、のちにエリック・ジョンソンがグラミー賞を3度も受賞する人気ギタリストになってからリイシューされた。

■関連エントリ→ エレクトロマグネッツ『エレクトロマグネッツ』

 この『エレクトロマグネッツ2』は、ファーストが発表された75年に録音されながら、バンドの消滅によってお蔵入りになっていた幻のセカンド・アルバム。2010年にようやく発売された。

 ずっと中古市場で高値を呼んでいて、私も手が出なかったが、いつの間にか、Amazonでフツーの価格で入手(MP3ダウンロードで)できるようになっていた。

 ファーストアルバム同様、マハヴィシュヌ・オーケストラやリターン・トゥ・フォーエバーを彷彿とさせる正統派ジャズ・ロックである。
 フランク・ザッパはエレクトロマグネッツのことを、「ユーモアのセンスのあるマハヴィシュヌ」と評したという。たしかに、求道的・内省的なマハヴィシュヌに比べれば、独特の軽やかさ、ロック的な躍動感がある。

 隠れた名盤であったファーストアルバムと比べると、やはり長年お蔵入りになっていただけあってか、一段落ちる印象。

 それでも、当時まだ20代初頭だったエリック・ジョンソンのギターは流麗で素晴らしく、彼のファンなら一聴の価値はある。

 なお、ドラムスのビル・マドックスは、2010年に自宅に押し入った強盗に射殺されてしまったという。その意味でも悲劇の名バンドである。

KIYO*SEN『organizer』



 KIYO*SENのニューアルバム『organizer』(エレックレコード/3000円)をゲットし、さっそくヘビロ中。

 「KIYO*SEN」は、現「CASIOPEA 3rd」のキーボーディスト・大髙清美と、女子大生ドラマー川口千里の2人からなるユニット。これは1年10ヶ月ぶりの新作に当たる。



 先行公開されていた「Enamel Doll」が、1stの「K.S.Pro」を彷彿とさせるELP路線だったので、かなり期待して聴いた。私はこの路線のKIYO*SENがいちばん好きだから。
 
 プロデューサーでもあるおなじみの矢堀孝一(大高清美の夫)以外に、2人のゲスト・ギタリスト――Kelly SimonzとHIZAKI――を迎えている。そのため、これまで以上にギターの比重が高いアルバムになった。
 Kelly Simonzが参加した「POTOS」と、HIZAKIのギターが唸りを上げる「Altered Destination」の2曲は、KIYO*SEN史上最高のメタル・チューンに仕上がっている。

 アルバム全体が「プログレ寄りのハイパーテクニカル・フュージョン」である点は、従来と同じ。ただし、本作は過去4作中、最もハードでヘヴィーな色合いのアルバムになった。
 言い換えれば、「これまででいちばん硬派なKIYO*SEN」が堪能できるアルバムだ。

 これまで、KIYO*SENには「最強の女子力ユニット」というよくわからないキャッチフレーズがつけられていた。そして、そのキャッチフレーズに合わせるかのように、アルバムに1~2曲はポップで甘い印象の曲が入っていたものだ。

 だが、本作は最初から最後まで硬派路線で押しまくっている。「女子力ユニット」ならぬ「男前ユニット」である。硬派なKIYO*SENが好きな私は、その路線に快哉を叫んだ。

 従来、KIYO*SENのファンにはハイパーテクニカル・フュージョン~ジャズ・ロックの好きな人が多かっただろう。が、本作に限ってはメタラーにもオススメできる。

■関連エントリ
KIYO*SEN『Trick or Treat』
KIYO*SEN『Chocolate Booster』

Lu7『レスプリ・ドゥ・レグジール・ルヴィジテ』



 Lu7(エルユーセブン)の『レスプリ・ドゥ・レグジール・ルヴィジテ』(ベガ・ミュージックエンタテインメント/3240円)を購入し、ヘビロ中。

 梅垣ルナ(キーボード)と栗原務(ギター)によるインスト・ユニットであるLu7が、2005年に発表したセカンド・アルバム『L'esprit De L'exil』(「放浪者の精神」の意)のリイシュー。新録音とボーナストラックを加えた、リミックス&リマスターアルバムになっている。

 タイトルの最後に付された「ルヴィジテ Revisité 」は、英語でいうと「リヴィジテッド Revisited」(=再訪)だ。

 私は3年ほど前から聴き始めた遅ればせのLu7ファンで、そのときには『L'esprit De L'exil』とファースト『Efflorescence』はすでに入手困難になっていた。
 ゆえに、サード『Bonito』と4th『Azurite Dance』をくり返し聴いては、新作を待っていたのである。

■関連エントリ
Lu7『Bonito』
Lu7『Azurite Dance』

 が、発表から13年を経た今年になって、『L'esprit De L'exil』が突然のリイシュー。私は当然、知ってすぐにゲット。
 元の2005年版を持っていないので、どこがどう変わっているかはわからないのだが、これは確かに傑作だ(ジャケットは2005年版↓のほうがスッキリしていてよい気がするが)。





 私が初めてYou Tubeで聴いたLu7の曲は、このアルバムに収録されている「Canary Creeper」であった。その国籍不明の音楽性、独創的な美しさに度肝を抜かれたものだった。



 初めてCDで聴く「Canary Creeper」は、改めて「神曲」だと思った。
 ほかにも、いい曲がいっぱい。聴いていると不思議な多幸感に包まれる美しいアルバムで、陶然となる。

 Lu7は、しいてジャンル分けすれば「フュージョン」もしくは「ジャズ・ロック」ということになるだろうが、そのファンタジックできらきらしい音楽は、とうてい「フュージョン」などという狭い枠には収まりきらない。

 次は、やはり入手困難になったままのファースト・アルバム『Efflorescence』の「ルヴィジテ」を、ぜひ作ってほしい。

 ところで、「Lu7」という一見意味ありげなユニット名、梅垣ルナのファーストネーム「ルナ」のもじりなんだね。いまごろ気付いた(笑)。

ダダ『ダダ』



 イギリスのジャズ・ロック・グループ「ダダ」が遺した唯一のアルバム『ダダ』(1972年)をゲットし、ヘビロ中。

  「ヴィネガー・ジョー」で故ロバート・パーマーとツイン・ヴォーカルを張ったエルキー・ブルックスがいたバンドだと聞き、手を伸ばしてみた。
 「エルキー・ブルックスが在籍した」というより、この「ダダ」というバンド自体がヴィネガー・ジョーの前身にあたるのだな。

 ロバート・パーマーがスターダムにのし上がったころ、彼が以前在籍していたバンドとしてヴィネガー・ジョーの名を知った人が多いと思う。私もその1人で、後追いで聴いてみたらとてもよいバンドで、すっかり気に入ってしまった。



 ヴィネガー・ジョーは、米国スワンプ・ロックの影響を受けた渋いR&Bバンドであった。
 前身であるこの「ダダ」にもスワンプ色/R&B色は少しあるが、オルガンがかなりの比重を占めていたりして、ヴィネガー・ジョーよりもジャズ色が強い。さらに、プログレ色も随所にある。

 野性的な泥臭さと知的な洗練味という、本来相容れないはずの2つの要素が混在している、なんとも不思議な音。

 エルキー・ブルックスのヴォーカルは、このバンドのころからすでに絶品である。
 ジャニス・ジョプリン的なハスキーボイスのド迫力と、アニー・ハズラム的な伸びやかな美声の魅力を併せ持っている。「その2つこそ相容れない要素ではないか」と思う向きもあろうが、このアルバムを聴いてみれば私の言っていることがわかると思う。


↑エルキーのヴォーカルが素晴らしい「シー・ウォークス・アウェイ」

 もっとも、ダダの場合、もう1人ポール・コーダという男性シンガーがいて、2人が交互にヴォーカルを取るのだが(ポール・コーダのヴォーカルもなかなかよい)。


↑ストーンズの初期ナンバー「ラスト・タイム」の素晴らしいカヴァー

 ところで、「ダダ」という名のバンドはほかにも複数ある。
 そのうちの一つに80年代日本のプログレ・バンドがいて、私はこちらのダダも昔大好きだった。



 Amazonのカスタマーレビューを見ると、日本のダダのファースト・アルバム(これまたタイトルも『ダダ』で、まぎらわしいったらない)のレビューと本作のレビューがごっちゃになっていて、とってもカオス。

アイン・ソフ『妖精の森』



 アイン・ソフの『妖精の森』(キングレコード/1404円)をゲット。

 アイン・ソフは、いまも活動をつづける日本のプログレ/ジャズ・ロック・グループ。この『妖精の森』は、1980年に発表された彼らのファースト・アルバムだ。
 過去にも何度かリイシューされては、そのつどすぐに品切れ状態になり、中古盤が高値を呼んでいた。

 このたび、何度目かのリイシューがなされ、わりと廉価だったので買ってみたしだい。

 私は彼らの1986年のセカンド・アルバム『帽子と野原』を愛聴してきたが、このファーストはYouTubeで断片的に聴いたことがあるのみだった。

■関連エントリ→ アイン・ソフ『帽子と野原』

 順序が逆になってしまったが、やっとファーストを通して聴くことができた。

 日本のプログレにはオール・インストのバンド自体が少ないし、このアイン・ソフのように英国カンタベリー系ジャズ・ロック路線のバンドとなると、さらに少ない。
 ジャズ・ロック好き、カンタベリー系好きの私としては、アイン・ソフの音は好みど真ん中。セカンドもよかったが、このファーストはさらに素晴らしい。

 私は、一部のJプログレ・バンドのナルシスティックな耽美趣味が苦手だ。
 本作も、ジャケットやタイトルの印象から、耽美的でナルシスティックなプログレを想像する向きもあるかもしれない。

 が、実際に聴いてみれば、耽美的というよりも知的で優雅。ナルシスティックというよりも、淡いユーモアを湛えた流麗なサウンド。そして、リズム・セクションがタイトかつ硬派でカッコいい。

 複雑な曲構成と、隅々まで入念に作り込まれた音。ゆえに、くり返し聴くほどに細部の面白さが見えてきて、ヘビロしても少しも聴き飽きない。噂に違わぬ名盤だ。


↑アルバム中、最もテクニカルな疾走チューン「クロスファイア」。
 

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Profile 

前原政之 
イラスト/ジョージマ・ヒトシ

前原政之(まえはら・まさゆき)
1964年3月16日、栃木県生まれ。55歳。
1年のみの編プロ勤務(ライターとして)を経て、87年、23歳でフリーに。フリーライター歴32年。
東京・立川市在住。妻、娘、息子の4人家族。

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●「mm(ミリメートル)」は、私のイニシャル「MM」のもじりです。

●私の大好きなギタリスト・渡辺香津美氏は、ご自身のイニシャル「KW」をもじった「KW(キロワット)」を、公式サイトのタイトルにしておられます(同名のアルバムもあり)。それにあやかったというわけです。

●あと、「1日に1ミリメートルずつでもいいから、前進しよう」という思いもこめられています(こじつけっぽいなあ)。

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